38)予定
「ラインハルト侯、今年はいつ頃、北へ旅立たれる」
エドワルドの言葉で話題が変わり、全員が安堵した。
「例年ならば、そろそろなのですが。ここを空ける間の留守居が、今年は西方の担当です。どうしたものかと」
「あぁ、あの件の後だから」
全員が頷いた。
「帰ったばかりの南や、副団長不在の東に、順を違えて依頼するわけにもまいりませんし」
「一つ一つはある程度分かったけれど。結局、根本的な目的が見えてこない今だからね。ルーイは、王都竜騎士団の敷地に、知らない間に誰かに入られるのが嫌だ。そうだよね」
「えぇ、勝手に何か仕掛けられては迷惑です」
「西は、御前試合のときのように、貴族の屋敷預かりにしたらどうかな」
「王宮を手薄にはできません」
「だったら、こちらに人を多く残したら。居残りが多いから、場所が提供出来ないと言えば良い。北は落ち着いているはずだよ。私のところにくる報告の範囲内だけどね。なんなら、西は騎士団の預かりでもいい。互いの訓練を参考にしろとかいえば、それらしく聞こえる。西もあの件のあとだし、君に表立って文句は言わないだろう」
「西の誰が来られるかで、検討しましょう。ライマー、西から誰が派遣されてくるか決まったら、少し君の意見も聞きたい。君の今後に関しても、西の団長か副団長と話をする予定だ。先日の連絡では、西は君の希望通りにと言ってくれている」
「ありがとうございます」
ライマーは礼を言った。
「あとは、君の家族が同意してくれるかも大切なことだ。食後、しばらくここを使ってくれて構わない。アーデルハイド殿、申し訳ありませんが、ここは兵舎で客間がありません。お寛ぎいただくのは難しい場所になっています」
ルートヴィッヒの言葉に、アーデルハイドが微笑んだ。
「いいえ、お気遣いなく、本当にありがとうございます」




