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34)王都竜騎士団の日常1

 目の前に立つ少年は、記憶よりも背が伸びていた。

「ライマー叔父上、この度は、大変だったそうだな。息災で何よりだ」

「エドワルド殿下」

かしこまってすました顔をしていた少年は年相応の顔になった。

「驚かれたろう」

「なぜ、ここへ」


「ここで勉強した方が、面白いからな。やっとラインハルト侯から、こちらへ来て良いと言われた。ちょっと見舞いにいってくる」

護衛騎士達に伴われ、エドワルドは階段を駆け上がっていった。


 驚くのはライマーだけで、竜騎士達は平然としていた。ここでは当たり前の光景らしい。毎日やって来るようになったエドワルドを、竜騎士達は出迎え、護衛騎士達と挨拶を交わしていた。


 エドワルドはアリエルと一緒に兵舎の一室で教師の講義をうけていた。厨房に並んで立っている日もあった。訓練中に差し入れだと言って軽食を持って来ることもあった。アリエルについて歩くエドワルドは、かつて、優しい長姉のアーデルハイドについて歩いた兄エーリヒとライマーのようだった。

「なんか、いいですね」

「あぁ、なんか、いいよな。見てると幸せになるな」

竜騎士達も竜達も、二人を優しく見守っていた。


 事故から半月もしないうちに、午前中の訓練にルートヴィッヒは姿を現すようになった。二人いる副団長に交代で訓練をまかせ、時に指示した。剣の稽古では、ゆっくりと、動作を確認するように何度も繰り返していた。副団長達以外に、彼が稽古相手に選ぶのは、ヨハンと、護衛騎士のフリッツだった。 


「いいよな。お前ら昔、団長に稽古つけてもらったんだろ」

「いいだろ」

ペーターとペテロが得意気に答えた。

「僕ら、どうしても竜騎士になりたいって、押しかけてさ。でも、剣の稽古したことないっていったら、教えてくれたんだ」

竜騎士達は、ライマーをそれとなく気遣ってくれた。


「最初に会った時から、何を考えてるか、全くわからない奴だったが。私も、あの時は彼がとうとう頭がおかしくなったかと思った。剣を握ったこともない人間を相手に僅か三か月だ。何を教えるつもりかと思った。体格が良いから、叩き込めば間に合うと思ったと、後から聞いた」

ハインリッヒは双子を感慨深げに見ていた。


「はい。竜騎士になって、すっごく迷惑かけていたことを思い知りました」

「竜騎士見習いの訓練始まるまでの間の三か月で、見習いになれるくらいにはしてもらったんだ」

「僕らも頑張ったけど、見習い期間中も、空き時間全部つかって訓練してくれたんだ」

「だから、僕らは二人とも、団長にどこまでも、ついていくって決めたんだ」

「そしたらさ、団長なんて言ったと思う」

双子はくすくすと笑った。


「恩義を感じてくれるのはありがたいが、その感謝は竜騎士としての働きとして、国王陛下に捧げてくれ」

「団長大好きなのに、団長つれないんだよねー」

ルートヴィッヒが慕われる理由が、なんとなくわかった。


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