31)ライマーから竜騎士達への告白1
本来、夕食は全員揃って食べるのがここの習慣だと言い、ハインリッヒは、今日も階段を登っていくアリエルを見送っていた。
「全員で食べるのですか」
ライマーの言葉に、ハインリッヒが振り返った。
「食堂はそのためにあるものだ。違うか」
王都竜騎士団では、食堂の中央に机を並べ、長方形にして全員で席に着いた。団長と副団長だけは席が決まっているが、あとは適当と教えられた。他に、アリエルは厨房に一番近い席に座るから、そこも駄目だと教えられた程度だ。今日もその席は空いていた。
「西方は違うのか」
「はい。西方は身分で席が決まっていましたから」
「面倒だな」
「つまらんな」
男爵家の次男ハインリッヒに、辺境伯の父親に勘当されたヨハンも賛同した。
「西方に平民出身はいるんですか」
「います。同じ竜騎士といっても貴族出身の者に、小間使いのようにされています」
「うわ、なんか可哀そう、それ」
「同じ竜騎士でそのような、あるまじき行為だ」
「ここが違うのかな、他と」
「いやぁ、南方は一緒みたいだよ。馴染んでるだろ。誰が来ても。毎年」
「東は」
「俺がいたころは、ここと同じだった」
「あの蝙蝠副団長がいるところだから、身分とか気にしてないだろ」
「あぁ、あの人、今どうしてるんだろうな」
西方竜騎士団を離れて、あそこが異様な場所だったということに、ライマーはようやく気付くことができた。西方の団長と副団長に何度も注意されていた。団長達が正しかったのだ。だが、子爵出身の団長と、平民出身の副団長の言葉に、侯爵家や伯爵家の出身の竜騎士達は耳を貸さなかった。
昨夜、寝る前にリヒャルトに何があったか話をしたいと言ったら、明日の夕食の後に提案するといいと教えてくれた。話す気になったかといって、頭を撫でられ、弟と間違えたと謝罪された。故郷の兄、エーリヒを思い出して、懐かしかったというと、ちゃんと兄にも説明するようにと言われた。いくつになっても弟は弟だと、リヒャルトは笑った。
「あの、お食事のあと時間をいただいてよろしいでしょうか。御前試合のときのことを、僕が知っていることをお話ししたいです」
食事も半ばを過ぎたころにライマーはいった。
「言ってくれるなら、聞きたい」
ペーターの言葉に、竜騎士達が全員頷いた。




