29)ライマーと王都竜騎士団の竜騎士達1
「あの、そういえば、食事の最初の時、何が問題になっていたのでしょうか」
ライマーは最初に気になっていたことを思い出した。
「お前、話を戻すなよ」
ライマーの言葉に、リヒャルトが溜息を吐いた。
「ライマー、お前、本当に絶対に、ここに配属されるか。絶対に西には戻らないな。東と南にもいかないな。他でも絶対にしゃべらないな。陛下には忠誠を誓ったよな。団長にも忠誠を誓うか。それなら教えてやるが、その覚悟はあるか」
リヒャルトの目は真剣だった。何のためか、今一つ分からなかったが、彼らにとって大切な団長に関することだということくらいは予測がついた。
「はい。誓います。ラインハルト侯は命の恩人です」
「どう思う」
リヒャルトがハインリッヒを見た。
「いいだろう」
ライマーの言葉を二人の副団長は信じてくれたらしい。
「怪我なのに、無理して動いた団長相手に、竜丁が相当叱っていたのは見たよな。聞こえなくてもわかったはずだ。あぁいうときは、いつもなら夕食は絶対に団長の嫌いな豆だ。まぁ、団長も竜丁の作る豆料理は、嫌いな豆なのに美味しいとか、妙なこと言って食べるけどな。それなのに、今日は違った。どっちかっていうと、団長が好きな料理だ。まぁ、ちょっとだけ豆が入っていたけど、あんなの入っているうちに入らない。普段なら豆だけの料理を出してくる。竜丁がそれだけ団長を甘やかすってことは、相当に団長の怪我の程度が悪いはずだ」
リヒャルトの言葉に、竜騎士達が頷いた。ライマーは俯いてしまった。
「あ、お前のせいじゃないから気にするな。事故だからな」
事故は事故でも計画された事故だ。彼らはそれを知らない。申し訳なくて、いたたまれなかった。
「ライマー、俺達全員、お前の手綱を見た。詳細は知らない。だけど、お前がここの預かりになった初日に、竜丁にあの手綱を見せられた。詳細不明だが、仕組まれた事故だから、お前のことは、気を付けてやれと言われた」
同室になってくれているリヒャルトは優しい目でライマーを見ていた。
「ついでだが、竜が怖がって君を乗せない理由だが、人間が故意に衝突事故を招こうとしたからではないのか。私はあの日、地上で君達の不自然な動きを見ていた。今の君の竜の態度を見ていると、そう思えてならない」
ハインリッヒは静かに言った。
「団長に正直に言ったなら、今、ここで俺たちに言わなくていい。一日に二回話すのは辛いだろ。それに、おそらく、お前が知っている以上のことがある。お前の事故は単なる一個の事故とは思えないしな」
リヒャルトの言葉に、全員が頷いていた。
「事故を仕組まれたってことは、君は狙われている。一人になっちゃだめだ」
「そう、事故に見せかけて竜騎士の命狙うなんて、まともじゃない。誰かと一緒にいるんだ」
「僕らが一緒にいるのは、双子で一緒のほうが落ち着くのもあるけど、僕らはここで一番若くて経験不足だからね」
「弱いから、せめて二人一緒なら、ちょっとはましかというのも考えてるんだ」
よく似た双子は交互に言った。




