25)ライマーからルートヴィッヒへの告白1
「申し訳ありませんでした」
執務室の椅子にゆったりと座るルートヴィッヒにライマーは謝罪した。
「転落は君のせいではないだろう。何があったか聞きたいところだが。その前にこれを見せたかった」
執務机の上に、見慣れた自分の手綱が置いてあった。
「これが切れて、君は落ちたはずだ。この切り口、おかしいと思わないか」
ルートヴィッヒが指した部位で、手綱は鋭利に斜めに切れていた。
「これは」
「もう一方を見るとよくわかる」
ルートヴィッヒが指した手綱には、刃物で斜めに、皮の厚さの半分を超える切り傷があった。
「この深さの傷なら、ある程度以上の力で引けば切れる。切れた側もそうだったのだろう。ということは、この傷を入れた人物は、君がある程度以上の力でこの手綱を引くことを予測していた。あの事故は仕組まれたものだ」
ライマーの手が震えだし、止まらなくなった。
「何があったか、誰に言われたか、教えてもらえるだろうか」
次姉シャルロッテは、王妃は、自分を墜落死させるつもりだったのだろうか。ライマーは恐ろしくなった。
「震えているようだが。日を改めようか」
「いえ」
ライマーはルートヴィッヒを見た。ルートヴィッヒは、苦し気な呼吸で呻きながらも、ライマーを地上まで安全に降ろしてくれた。あの時の荒い呼吸も、血に染まった担架も、ライマーを助けてくれたルートヴィッヒのものなのだ。
「ラインハルト候は、私の命の恩人です。ですので、私の知っていることを全部お話します」
ライマーの告白を聞き終えたルートヴィッヒは口元に手を当て、しばらく何か考えていた。
「どう思われますか」
その言葉に、隣の部屋からルートヴィッヒによく似た人物が現れ、ライマーは驚いた。




