表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/250

21-2)アリエルとトールとヴィントとヴィント

「団長様は元気よ」

―そうか─

―それは良かった─

アリエルの第一声に、竜達がそれぞれ安堵の声で答えた。

「だから、あなたが心配しなくて良いのよ」

アリエルは、ライマーのヴィントの頭をそっと撫でてやった。


 ライマーのヴィントは小さく頷くが、元気が無いままだ。背に乗せていたライマーを転落させてしまい、結果ルートヴィッヒに怪我をさせてしまったことに、責任を感じているのだろう。

―お前のせいではない。人間同士の(いさか)いだ─

―そもそも“独りぼっち”には、人間の敵が多い─

―お前やお前の竜騎士に、どうこうできるものではない。お前もお前の竜騎士も、巻き込まれた側だ─

竜達も、ライマーの鞍や手綱が細工されていたことを知っている。

トール達、王都竜騎士団の竜達の慰めは、ライマーのヴィントには届いていないようだ。


―“独りぼっち”の手当てをしているのは、“小さな皺々”ではないな。あれは何者だ─

トールの言葉に、アリエルは首を傾げた。

「薬師さんよ。団長様が怪我をした最初の時から、手当してくださっているわ。すぐに無理をする団長様と、団長様に無理をさせる陛下を叱ってくださったから、ちょっと安心したわ」


―お前を助けた“小さな皺々”ではないのか─

トールの言葉の意味をようやく理解したアリエルは、顔を顰めた。

「あのときの薬師さんとは別の人よ。私を助けてくれた人に、小さな皺々という名前は失礼だわ。トール」

―何故。あの小さな人間は、長く生きている。小さくて力が無いのに、皺々になるほど長く生きるのは、よほど優れた知恵がある人間だ。違うか─

「そうね。それはそうだけれど」

―竜騎士のような戦う力でなく、知恵の力で生きる人間の中でも、優れた者だから、皺々になるまで生きている。そうだろう─

「そうね。トール、あなたが彼を皺々と呼ぶのは、長く生きるほど、優れた人間だからということ」

―そうだ。力がなくても優れているから周囲に大切にされ、皺々になるまで長く生きている。皺々は、優れている証拠だ─

「それなら“小さな皺々”と呼ぶのはわかるわ」

人と竜は色々と違っている。アリエルは竜の言葉はわかるが、意味を正確にわかっているわけではない。気長に説明してくれるトールが居てくれてよかったと思う。


―“独りぼっち”の手当てをしているのは、“小さな皺々”が教えた人間か─

「そう。お弟子さんよ。今日も団長様と陛下をきちんと叱って下さったわ」

アリエルの言葉に、竜達が笑う。

―“独りぼっち”と“寂しがり”は、相変わらずのようだな─

アリエルは、トールが口にした、聞き慣れない人の呼び名に首を傾げた。

「寂しがり? 」

―“寂しがり”と“甘えん坊”はここで楽しそうにしている。住処が楽しいならば、何故“甘えん坊”はほとんど毎日ここに来る─

「そうね」

甘えん坊はエドワルドだが、寂しがりはベルンハルトなのだろう。竜達の呼び名に、アリエルもどこかで納得した。

―“独りぼっち”も“寂しがり”も“甘えん坊”も、人間の(しがらみ)とやらで、不自由なことだ─

「そうね」


―人間の(しがらみ)? ―

王都に来たばかりのライマーのヴィントが首を傾げた。

「そう。多分、あなたの竜騎士ライマー様も、きっとその柵に巻き込まれたのよ。だから、あなたやライマー様のせいではないわ」

―本当? ―

「えぇ。ライマー様も誰かに命を狙われていたのよ。誰かが、団長様とライマー様を殺そうとしたの。誰も命を落とさずに済んで良かったわ」

―どうして、命を狙われるの─

「まだわからないわ。あなた、団長様と陛下が、お母様の違う御兄弟だってことは知っているかしら」

―教えてもらった─

「私も、全部知っているわけではないけれど」

アリエルは、ライマーのヴィントに、説明を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ