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11)新入りの竜丁

 アリエルが、先輩竜丁の親方ゲオルグから、新入り、と呼ばれるようになって、一ヶ月になろうとしていた。他からは竜丁と呼ばれている。竜丁としての仕事も覚えた。竜が手伝ってくれるから、アリエルは相当楽をさせてもらっているということも分かった。


 一番の原因は、トールが「自分の竜丁」と、他の竜に宣言したことだろう。トールは、もともと大きな群れの長だったそうだ。捕まった仲間を助けて、自分が捕まってしまった。そんな経歴のためか、他の竜達から、尊敬されていた。体格も、他の竜よりも一回り大きい。そのトール様の竜丁に、ご迷惑をかけてはいけないということで、すべての竜が協力的だった。

 

 一ヶ月半もたたないうちに、ゲオルグは引退を宣言した。引退といっても、竜丁の仕事をアリエルに譲り渡しただけだ。薪割も含め、仕事はたくさんある。


「親父が大工だったからな。大工仕事は得意だよ」

そういって、アリエルのために踏み台を作ってくれた。兵舎の彼方此方を修理していた。今度、ルートヴィッヒが鶏を飼うことを許可してくれたら、鶏小屋を作ってくれる約束にもなっている。ただ、竜がいると、動物が寄り付かないから飼えるかどうかわからないといわれた。竜がいて一番いいことは、ネズミが出ないことだとゲオルグに言われた。ゲオルグは大怪我をして、竜騎士を引退したと教えてくれた。


 トールは、人間に飼われたくなかったから、王都に連れてこられても、人を乗せることを拒否した。トール曰く、大暴れしたらしい。そんな中、彼の檻に、刺客に追われた子供が逃げ込んできた。同じ人間に、命を狙われる人間の子供を可哀そうに思い、匿ってやったと、トールは語った。その子供が成長したのが、今彼に乗っているあの団長の竜騎士、ルートヴィッヒだ。


ー人間の仲間がいなかったからな。あの“独りぼっち”も、昔は小さくて、かわいらしかったー


 トールは、ルートヴィッヒを“独りぼっち”と呼んだ。ハインリッヒのことを“頑固者”と呼ぶのには、笑ってしまった。アリエルは“竜丁”と呼ばれている。


ー小さかった“独りぼっち”が、騎士団長だ。人間の仲間がいないのはかわらん。仕方ないから、“独りぼっち”の寿命分くらいはつきあってやるつもりだー


 王都竜騎士団は、竜騎士たちの精鋭だ。現在、団長一人に副団長二人、団員十二人の合計十五人に絞られている。増やしても二十人程度までというのが伝統らしい。その騎士団の部下たちは、トールの基準では人間の仲間にならないらしい。


 竜の寿命は人よりもずっと長いという。竜の群れの長は、面倒見がいいらしく、自分に乗る“独りぼっち”を気にしていた。

ーお前は、あの“独りぼっち”の仲間にいいと思うー

アリエルは、実際に、彼の竜の竜丁だから、仲間ともいえないことはない。だが、トールのいう仲間の基準を満たしていないらしかった。


ー“独りぼっち”は“親父殿”の、子供みたいなものだ。“独りぼっち”は義理堅いー


 ハーゲスは、彼らが“親父殿”と呼ぶゲオルグが竜騎士をしていたときの騎竜だった。彼が引退した今、特定の竜騎士がいない。ハーゲスは、何かあればアリエルを乗せてくれると約束してくれた。


ー“親父殿”の子供代わりの“独りぼっち”の“竜丁”だからな。特別だー

竜達はみなアリエルに優しかった。


 竜舎の掃除は早朝だ。竜騎士達が訓練のために竜舎に来る前に、掃除を済ませて、彼らが飛び立ちやすいようにする必要があった。竜達が尾で寝藁を入り口近くに集めてくれているので、それを集めて廃棄するだけなので楽だった。本来、一つ一つの区画に入って寝藁をかきだしてくる必要があるらしい。


 その日、いつも通り、順番に集めて、トールの前にきたときアリエルは驚いた。

ーまだ、寝ているから後にしてくれー


 丸まったトールに包まれるようにして、ルートヴィッヒがいた。剣を抱え、目を閉じ、ゆっくり呼吸していて、確かにトールの言う通り眠っているようだった。


ー昨夜は新月だったろう。新月の晩は、たいていここにくる。部屋では眠れないらしいー

アリエルは黙ったまま頷くと、隣に移動した。



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