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9)西方竜騎士団の竜騎士達

 転落事故の竜騎士を救えたのが幸いだった。助かるには高すぎ、即死するには低すぎる高さだった。もし、万が一転落した場合、苦しめないために各団長が手を下すのが、竜騎士団の慣例だ。


 部下に引導を渡さずに済んだ西方竜騎士団団長ヨアヒムと、衝突した二人は、救護室の外で待っていた。


 少し前に、王都竜騎士団の竜丁が治療室に入っていった。西方竜騎士団の三人を前に、貴族のようなカーテシーで挨拶していった。一瞬、殺気のようなものを感じるほど、冷たい目をしていた。


 乗り手を落とした竜を、竜丁は声をかけるだけで落ち着かせ、手綱も無しに、王都竜騎士団の竜舎に連れて行った。王都竜騎士団の竜丁が、竜騎士達、竜達からの厚い信頼を得ていることは、よく知られていた。竜を簡単に手懐ける様子を間近で見せられ、驚くしか無かった。


 部屋から出てきたルートヴィッヒに、ヨアヒムと部下二人は謝罪した。

「この度は、部下が大変なご迷惑をおかけしました。また、部下の救命にご尽力をいただきありがとうございます」 

「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした」

「申し訳ありませんでした」

転落した方の竜騎士は、ほぼ無傷だった。転落した衝撃と、助けたルートヴィッヒを負傷させてしまったことで、取り乱し、しばらく呆然とし、そのあと泣いていただけだ。


「ご丁寧にありがとうございます。救助が間に合ってよかった。事故が大事にならずに済んだのですから、どうかお気遣いなく」

謝罪を受け入れるルートヴィッヒの言葉に、ヨアヒムは少し肩の荷が軽くなったように感じた。


「いや、大事だろう。王都竜騎士団団長に怪我させたんだぞ」

「カール副団長殿、話を大きくしないでいただきたい」

「何をおっしゃる。貴殿は国王陛下の剣と盾。その貴殿に怪我をさせたなど」

「故意ではないのだから」

ルートヴィッヒは、カールとアルノルトを止めようとしたが伏兵は思わぬところにいた。


「怪我をした、いいえ、させられたあなたが、何をおっしゃいますか。彼らは自分達が何をしたか知るべきです。聞けば、御前試合の警護という責務であられたと。それが自ら事故を起こすなど、無責任、無自覚極まりない」

薬師が容赦なく、若い二人を叱責した。


「薬師殿、さすがにそれは」

「全くその通りだ」

「代弁していただいて、感謝する」

ルートヴィッヒ以外の二人が、薬師に苦言を呈したルートヴィッヒの言葉を遮った。


「団長様、この後のご予定は」

完全に西方竜騎士団の三人の存在を無視したアリエルの声が冷たく響いた。


「祝賀会だ」

「ご準備に普段よりお時間がかかると思われますけれども」

アリエルは冷静に急ぐように告げた。


「私の竜丁は執事もこなしてくれるようだね。西方竜騎士団の方々、どうか、お気遣いないように。あなた方もそろそろご準備されてはいかがでしょうか」

ルートヴィッヒの言葉は、三人に去るようにと告げているのと同じだ。


「では、お言葉に甘えて、我々も。ぜひ、祝賀会でお会いしましょう」

西方竜騎士団の三人は去っていった。


「傷の手当に毎日お伺いします」

「世話をかける」

「何をおっしゃいますか」


 薬師は、竜騎士三人と竜丁一人を見送った。

「彼女が一番、冷静で、怖かったですね」

薬師は誰もいないことを確認して呟いた。


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