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それでも私は間違えていない  作者: 華月彩音
7/8

聖女の思い。

王太子さんの前にこの子の視点を。

邪魔だった。

とにかく邪魔だった。

誰が?あの女が。


転移前は、本当に散々だった。

ダブル不倫の末に大喧嘩を繰り返し、子である私を捨てて家を出ていった両親。

親にすら愛されず、両親の仲を見て育ったせいでどこかひねくれてしまった子供を持て余し、邪魔そうに扱っていた親戚たち。

折角必死で生きて高校生になり、彼氏が出来たのは良いものの彼すらもずっと親友だと思っていた相手に寝盗られた。

もともと友人も少なく人付き合いも苦手だったが故にいつも1人で、若干虐められていた。


だから、どこかの漫画で読んだような異世界転移に遭遇した時、これは今までの苦労を労うための御褒美だと思った。

神様からのご褒美。だから、私は聖女の力を持って愛される美しい見た目で転移したのだ。

なのに。


なのに。


そこにはもう聖女がいた。


薄く透きとおるような肌に美しいかんばせ。

腰まで伸びる金の髪は荘厳な光をたえている。

そのくせ、心優しく、民への労りも忘れない。

努力を怠らないまさに国母にふさわしい女性が。


邪魔だった。


許せなかった。


もともと私が持つはずだったものを全て手にしたその女が。

消えてしまえと思った。


聖女の力の中に魅了が含まれている事に気がついたのは、偶然だった。

聖女と呼ばれる女を支持する騎士に対して、あんな女なんか嫌いになって私を好きになればいいのになんて思ったら、その騎士の態度ががらりと変わった。

私に媚びを売るようになり、好きだ愛していると愛を告げる。

彼が正気ではなく、魅了にかけられている事に気がついたのは、彼の瞳がどこか虚ろだったからだ。

それでも、良かった。

例え偽りだったとしても、愛を得るのは心地がよかった。


幸い聖女としての力は無尽蔵で、とても強かった。

学園中の生徒にかけて、王宮の警備をくぐり抜け国王に魅了をかけたあと、国中にばらまいてもまだ余裕があった。


あの女に魅了をかけなかったのはわざとだ。

彼女を愛し、彼女が愛した人達に裏切られた時の顔が見たかったから。

絶望に満ち、生気をなくした顔を見たかったからだ。


だが、それは叶わなかった。


あの女は最後まで矜恃を喪わず、胸を張り続けた。

何があっても光を失わないその瞳が憎かった。

大嫌いだった。


だから、無実の罪を着せた。

それを裁く人間もその裁きを見る人間も、彼女の冤罪に気がつけないだろうが。


直にあの憎い女は死ぬ。

あいつが愛し、守ろうとした人間に殺される。


いい気味だ。


そしたら私は真の聖女になれる。

そしたら私は、


こんどこそちゃんと愛されるのだ。


お読みいただきありがとうございます。


2021.6/12 ちょっと修正を入れました。

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