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アイスティーは零れて  作者: 良夜 未黒
9/17

9 秘密の花園

「ねえ、凛子どうして休んでいるの?」


 1時間目の授業が終わると早速四天王が俺を囲み、リーダーであるカズが聞いて来た。

「知らないよ。」

「どうして? 連絡し合っているんでしょ。」

「俺、凛子の連絡先知らないから。」

「嘘!」

「本当だよ。」

「嘘!」

「だから本当だって。」

「じゃあスマホ見せてよ。」

「えっ? 俺のスマホ見るの?」

「本当に凛子の連絡先知らないのか確認させてよ。いいでしょ。」

 くそッ、これが目的か。と思いながらも4人の女子に囲まれ、凛子との交際を疑われ続けていたので仕方なくスマートフォンに登録してある連絡先を見せた。

「へっ? あんたこれしか連絡先ないの?」

「だから、凛子の連絡先は無いだろ。それに登録が少なくて悪かったな。」

「だって、たった2人の女性の名前に一ノ瀬って苗字しかないじゃん。貴方の周りの女性って身内だけ?」

「いいだろ、誰とも付き合っていないんだから。」

「可哀そうだから私の連絡先登録してあげようか。」

「結構です。後になってまた変な詮索されて、俺がカズと付き合ってるって噂になっても困るし。」

「あははははは。」

 四天王は俺にスマホを戻すと、「しょうがない、私が連絡して聞いてみるよ。」等とカズが話しながら自分の席へと戻って行った。俺の席から離れる時のスズが何処か微笑んだように感じた。


 凛子は一体どうしたんだろう。


 早く帰りたい。こんな時に限って間の悪い男連中は俺に話し掛けてきて帰らせないでいた。何とか帰宅の時を得ると、俺は急いで凛子の家へと向かう。


 マンションに入り顔見知りになったコンシェルジュの人に軽く会釈をして凛子の家が在る12階へと上る。以前から預かっている凛子の家のカードキーをし、暗証番号を押すと玄関の鍵が開いた。俺はホッとする。ここが開かなくなった時、凛子は日本から居なくなると思っている。彼女は来年の2月と言ってはいたが突然居なくなるかも知れないという不安があった。

 家に入ると薄暗くなったリビングに凛子は居なかった。彼女の部屋の前で呼び掛けた。

「凛子っ! 凛子っ!」

 返事が無い。しばらく待ってから、今度はドアをノックしながら彼女を呼ぶ。

コンッコンッ「凛子っ!」コンッコンッ!「凛子っ!」

 ドアに耳を寄せて中の音を聞き取ろうとしたが何も聞こえてこない。ドアには鍵なども付いておらず入ろうと思えば何時だって入る事が出来る。しかし、この中は凛子にとってただ一カ所だけの彼女の、彼女だけの空間だ。俺が週に3日自宅に帰って自由な空間を味わっているのと同じ様に、ここから先は彼女だけの自由な空間なのである。勝手に踏み込むことなど出来ないし許されないと思っている。

 俺はドアの横の壁に背中を押し当て座って待つ事にした。知らない内に膝を抱え込んで、その上に頭を乗せ、俯いている。先日、凛子がソファーの上でやっていた体勢だ。何か不安な事が有ると人は膝を抱えるのかな、いや、何かにしがみ付きたいけれど何もないから自分を抱きしめるのだろう。その時に丁度膝がいいのかも知れない。それに不安な時は小さくなりたいのかもしれない、等と暗くなっていくリビングのソファーを時折見ながら思っていた。

 突然凛子の部屋の中からスマホの音がした。

 急いで立ち上がり、音が消えてから再びノックしながら彼女を呼んだ。

コンッコンッ「凛子っ!」コンッコンッ!「凛子っ! 凛子っ! 大丈夫? 居るの?」

 しかし、中からは何の音も聞こえてこない。仕方なく、もう一度座ろうとした時、凛子の部屋のドアノブが動き、ドアが開いた。

 少しだけ開いたドアは暫くそのままで止まり、やがてゆっくりと開くと中から火照った凛子がドアと壁に何とか掴まって立ちながら顔を覗かせた。

「凛子大丈夫か。」

「ごめん…。」

 その一言だけ言うと崩れ落ちる様になり、俺は彼女の体を受け止めた。計らなくても判る程に体は熱を帯び、浅く小さい息を感じている。

「直ぐにコンシェルジュの人に言ってお医者さんを呼ぶから。」

 抱きかかえて彼女のベッドに運ぼうとした時、

「おねがい・・入ら・・ないで。」

と熱で朦朧もうろうとし、瞼を閉じたままでも彼女はかすれ気味の声を絞り、押し出して言った。海で見た彼女の細い体を抱きかかえ、やはり軽いんだなと思いながら、今の状態がとても心配になり少し怒ったように答えてしまった。

「何言ってんだ、こんなに熱が有るじゃないか。」

 そして、

「入るよ。」

と一声掛けて凛子の部屋に入り、彼女をベッドに横たえた。いつもは凛子が俺の耳元でそっと話すときに感じる仄かな香りが一歩踏み入れたこの部屋には充満しており、俺を優しく包む。コンシェルジュの人への連絡、頭を冷やすもの、それに喉の渇きを潤すもの、そんな風に次から次へと自分のやらなくてはいけない事を考えながら急いで凛子の部屋を出ようとした時、俺は目の前に広がる光景に体と今まで考えていた意識の全てを止められた。


 目の前に花園が広がっている。


 ドアの横の白い壁が左右で別れる様に天井から床まで続く一本の線で区切られ、その上側には線から左に【やりたい事】、右には【やった事】と黒くて太いマジックで直接壁に書かれていた。

 その下の壁面には【花を模った付箋】がところ狭しと貼られている。桃色、黄色、水色、緑色、オレンジ色、薄い紫色等が入り混じり、重なり合い、まるで花畑を見ている様な気分になる。しかし、それには凛子の文字で彼女の希望が書き込まれていた。

『一緒にお買い物』『一緒にお料理』『一緒にお食事』『ブランコ競争』『手を繋ぐ』

『雨の中を走る』『一緒に海に行く』『怖い映画を見る』『朝、一緒に紅茶を飲む』など、今まで俺達が辿って来た事が【やった事】の側に貼ってあった。それを超える数の花が【やりたい事】の壁一面を覆いつくしている。

『山に登る』『雪で遊ぶ』『一緒にこたつでみかんを食べる』『一緒に初詣に出掛ける』

 どれもこれからやって来るであろう未来の予言が書かれていた。しかし、俺が目にしたのはそれらよりももっと多い、

       『【 】ともう一度、ブランコで競争する』

  『【 】ともう一度、鯛のカルパッチョを食べる』

             『【 】ともう一度、海に行く』

『【 】ともう一度、かき氷を食べさせ合う。』

               『【 】ともう一度、お祭りに行く』

  『【 】ともう一度、イヤホンで同じ曲を聞く』

          『【 】ともう一度、水着を買いに行く』

『【 】ともう一度、金魚すくいをする』

『【 】と金魚を飼う』

 そして一番大きな紙に書かれた事。


『【 】とどこか遠くへ逃げる。』


 その全てに俺の名前が書き込まれ、その全てが既にやった事の繰り返しばかりであった。それを見た時、俺の全てが止められた。きっと心臓も止まっていたに違いない。だがそこには凛子の心の全てが在った。普通は誰にも見る事の出来ない【心】。そんな凛子の心がそこに在り俺はそれを目にし、文字として認識し、読み取ることが出来てしまっている。

 どの位俺は心臓を止めていたのか分からない。後ろから聞こえた凛子の「んん~」と唸る声に現在へと呼び戻される。


 何とか俺は体と頭と心臓を動かし、さっき迄考えていた事を行動に移す事が出来た。



 凛子は彼女の母親のベッドで目を覚ました。


 俺だけじゃなく誰にも部屋を見られるのは嫌だと思い、抱きかかえてここに移しておいた。お医者さんの話しでは単なる熱なので、解熱剤を注射したからもう大丈夫との事で、俺は凛子の眠っているベッドに背を持たれて座り、彼女が目を覚ましたら何て言葉を掛けようか、何と言おうか、何と言って部屋に入った事を謝ろうか等、そんな事ばかりを思っていた。

「ありがと。」

 凛子の静かで小さな声が聞こえた。

 俺は考えが纏まらないままに立ち上がり凛子を見ながら語りかける。

「単なる熱だって。直ぐに下がるから大丈夫だってさ。」

 凛子からの返事は無い。瞼を閉じたまま横になっている凛子が次の言葉を絞り出したのは暫く経ってからだった。

「見ちゃった?」

「あぁ。」

 すると凛子は布団から腕を出し、両目を覆う様に自分の顔に腕を横たえた。

「気味悪いでしょ、私。」

「・・・。」

「変な女でしょ。」

「・・・。」

「最初はね、考えて書いたカードさえ全て移せばいいと、それで終わりにしようと思っていたの。でもね、貴方と一緒に思い出を作っていると楽しくて、とても楽しくて、次から次へとやりたい事が増えて行くの、どんどん増えて行くのよ。昨日だってそう。楽しかった事を思い返していると、もう一度、どうしてももう一度やりたくなっちゃうの。貴方と一緒にもう一度楽しい事をしたくなっちゃうの。ダメって心では思っていても、気が付くとカードに書いているの。・・・気持ち悪いでしょ。」

「・・・。」

「もう一度なんて絶対に無理だから止めなきゃ、もうこれ以上書いちゃダメって思っても、貴方との楽しかった事を思い返して、気が付くと書いちゃっているの。やりたい事が増えるばかりで全然減らないのよ。もう、私どうしていいのか分からない。ねえ、私はどうすればいいの? どうすればこれ以上やりたい事を増やさないでいられるの? 貴方をスズに譲って離れればいいと思ったけど出来なかったの。ねぇ、どうすれば貴方から離れられるの? どうすれば君を嫌いになれるの? 分からないの。どうすればいいか全く分からないの。どうすれば自分を消す事が出来るのか、何もかもが分からなくなっちゃったの。うぅぅ・・・。」

 凛子はその途中から言葉を早くし、感情が昂って行くのがわかった。でも俺は何も答えられずにいた。

「・・・。」

「ごめんね。僕が君を誘ったために。こんな終わりのない事に付き合わせちゃって。でも、どうしようも無いの。どうしていいか分からないの。うぅぅ・・・。」

「・・・。」

「いいよ。嫌いになって、ここから出て行っていいよ。今まで、ありがとう。本当にごめんなさい。 んんんぅぅぅ~~~~。ぅんんううぅぅぅーーー。」

「・・・。」

 返す言葉の無い俺はただ立ち尽くしている。泣き声を出さない様に耐えている凛子の身体は小刻みに震え、時折しゃっくりにも似た震えをベッドに伝えていた。

「温かい物を入れて来るね。」

 その場から逃げる様に離れた。謝る事も出来ずに。

 堪えていた凛子は俺が部屋から出る前に声を出して泣いた。

「うええええ~~ん。あああああ~~~。うあああああああ~~ん。」



 楽しい思い出しかないキッチンに立って、片手鍋でミルクを温めている。


 ロイヤルミルクティーを作っているのだ。まだ部屋からは凛子の泣き声が聞こえている。

 時間を掛け茶葉を蒸らし、温まったミルクに入れて紅茶を煮だす。この場所だけにゆっくりと流れる時間のおかげで俺は頭と気持ちの整理が出来た。初めから思い返している。凛子の告白から現在までを、その元となった自分の気持ちをだ。俺は凛子の思い出作りを手伝う為にここに居る。その為だけにここに居る。そして、凛子に楽しい思い出を沢山持ってもらう為にここに居る。

 最初から決まっていた。

 俺はここから離れない。凛子の傍に居続ける。凛子が日本にいるまでは、凛子が楽しい思い出を『もう持ちきれない』と言うまではここに居る事を俺は決めていた。そう、それは最初に決めていた事なんだと、ロイヤルミルクティーを作る時間が思い起こしてくれた。紅茶のふくよかな香りが記憶を呼び戻してくれた。

 10分程の時間経過に凛子も落ち着いたのか泣き声は聞こえなくなっている。


コンッコンッ「入るよ。」

 ドアをノックして彼女の心に準備時間を与える。

「温かい物入れて来た。何も食べていないからちょっと甘いロイヤルミルクティーにしたよ。」

 ベッドに横たわる凛子は俺がここを出て行った時と同じ姿勢のままで居た。

 トレーを一旦置き、凛子に近づいて彼女に添いながら上半身を起こし、膝の上にティーカップの乗ったトレーを置く。

「ありがと。」

 俯いたまま凛子はお礼を言い、両手でカップを持ってロイヤルミルクティーを口にする。

「温かくて、美味しい。」

「ありがと。」

 今度は俺が礼を言う。凛子はうつむいたままだ。俺はベッドに寄りかかる様に、凛子に背を向けて床に座りロイヤルミルクティーを飲む。

「俺は小学生の時から宿題の未提出は無いんだ。」

「・・・。」

 凛子は黙って聞いている。どんな表情なのかは分からない。もしかしたら、こんな時に何の話をするのかと呆れているのかもしれない。

「そう、君の言う所の真面目な紳士君は、今まで宿題は全部やって提出も遅れたことが無い。」

「・・・。」

「あれを見た時にはびっくりしたよ。俺の人生で初めて終わらない宿題を出されたのかって、なんて課題が多いのかってね。でも俺は真面目で、頑張り屋で、クールな紳士なんだ。ささっと片付けて見事に宿題を提出してやるさ。安心しろ。俺は凛子の傍に居る。」

「んプッ、自分で言うんだクールって。」

 俺は凛子に振り向いた。泣きはらした目と、1日中寝ていて乱れ切った髪でも笑顔を俺に向けている。

「ありがと。」

 凛子はもう一度俺に言った。

「楽しかったならいいじゃん。思い出してもう一度やりたいならそれでいいじゃん。どんどんカードに書いて壁に貼れよ。俺が一緒にそれをクリアしていくから。増える花のカードは俺の勲章だ。俺が凛子を楽しませたっていう事だからね。勲章が増えるのは良い。どんどん書いて俺に課題を突き付けろよ。一緒にそれを楽しい思い出に変えて行こう。」

「ありが・と・・・。」

 そう言うと凛子は俯き、また泣き出しそうになっている。

「頼む泣かないでくれ、凛子が泣くと陽菜が怒るんだ。この頃家に戻ると必ず陽菜が凛子の様子を聞いて来るんだよ。泣かせていないでしょうね、笑わせているんでしょうねってね。まるで凛子の崇拝者みたいに俺の心を追及してくる。あいつ高校に入ったらきっとカズ達のグループに入って5人で俺を攻めて来るかも。」

「ふふふふ、じゃあ泣くの止める。」

「ありがと。俺、食事の材料を買って来るよ。凛子はシャワーでも浴びてスッキリするといい。」

「うん。」


 いつもは二人で並ぶキッチンに俺だけが立ち、玉子焼きを作っている。料理はこの位で、後は袋から出すか温めるだけである。凛子は何も食べていないせいか部屋でじっとしていた、熱は下がっているが身体がだるいのだろう。

 テーブルに夕飯を並べて凛子の部屋のドアをノックした。

 シャワーを浴びて綺麗に流れた髪は艶を持ち、血色の良くなった顔には笑顔が戻っている。

「凄いね、お粥パーティー?」

「パーティーって程じゃない。ただ並べただけだよ。」

 土鍋にレトルトの白がゆを入れ温めたものを横に置き、テーブルの中央に小鉢を8つ2列にて並べている。小鉢の中にはお粥に乗せて食べる付け合わせの漬物などで、しば漬け、つぼ漬け、刻み高菜、果肉の柔らかい梅干しの他にお茶漬けの元となる塩昆布などを並べた。他には俺の作った玉子焼きとシュウマイにカットスイカだ。

 土鍋からお茶椀にお粥を取り分け凛子に渡すと、迷い箸をした後につぼ漬けを乗せて、レンゲで頬張る。

「う~~ん、美味しい。塩加減が合うね。何も食べて無いからお粥が優しい。」

「汗かいているから、塩分を摂らないとね。俺は梅を入れてほぐしてから、塩昆布と合わせて。」

「それ美味しそう、次は僕もやってみようかな。」

「お粥のお代わりは沢山有るから慌てなくていいよ。」

「この玉子焼き、紳士君が作ったの?」

「ああ、温泉卵にしようかなって思ったけれど、みんな真っ白になっちゃうから黄色の玉子焼き。」

「嬉しい。僕は玉子焼きが好きなんだ。」

「良かった。で、次の課題は何にするの?」

「僕の書いたカード、じっくりと見たでしょ。どれがいい?」

「わるい、凛子の熱を下げるのに必死であまり見ていないんだ。」

「嘘っ!」

「ほんと、ほんと。」

「噓っ!」

 凛子が可愛い目で俺を睨む様な仕草をしてから言う。

「あ~~、どうしようかなー、いっぱいあって悩んじゃうなー。」

「じゃあ今度の週末は山にでも行こうか。」

「あーー、やっぱり見てるじゃん。じっくりと読んでいるじゃない。」

「たまたま目に付いて覚えていただけだよ。」

「嘘つきっ! 決めました、今度の週末はかき氷を食べに行く事にしました。紳士君のおごりでね。」

「えっ、どうして?」

「僕の部屋に入ったバツ。」

「凛子が熱出していたからしょうがなかったじゃない。」

「それでもダメです。女の子の部屋に勝手に入るなんて。罰として一気にかき氷を食べるのよ。」

「え~~~、また俺にキーーンとなる地獄を味合わせたいの?」

「僕のお願いなの。その後で食べ合いっこね。いい?」

「分かったよ。」

 良かった。いつもの凛子に戻った。食事も楽しい。


 いつもの早朝に起き、紅茶を飲みながら凛子の朝食を準備し、メモを残して家に帰る。ノートを千切ってメモにし、冷蔵庫に朝食の一部が入っている事と、もしもの時に昼食となる冷凍食品を買って有る事を書いた。それと、

  『もしも休むなら、カズに必ず連絡しろ。

   でないと、俺が四天王に囲まれて可哀そうだろ。』

のコメントを追加しておいた。


 その日も凛子は学校を休んだ。


 授業が始まる前にカズがにこにこしながら俺の机に来て、

「今日も凛子休むってよ。熱は下がったけれど身体がだるいんだって。」

と自慢気に言う。「あ、そ。」と軽く返事を返すとニヤっとして席に戻って行った。


 学校から凛子の家に急いで行くと、リビングで鼻歌を歌いながら凛子は紅茶を飲んでいた。

「大丈夫なの?」

 驚きながら聞く俺に向かって笑顔で、

「ふふーー、今日はズル休み。」

と言って楽しそうにしている。俺は安心して凛子を誘った。

「一緒に買い物に行く?」

「うん。」

 約束通り、俺達は手を繋いで買い物に出かける。

「何していたの?」

「今日はー、楽しかった事をもう一度振り返っていたの。」

「ふ~ん、それで?」

「それがねー、それがねーー。」

「何? 何かな予感がするな。」

「んふふっ。もう大変なのよ。やりたい事が次から次へと思い浮かんできちゃって、花のカードが足りなくなりそうになっちゃって。」

「お前なー。」

「え~~~、紳士君がどんどん書けって言ったんじゃない。ダメなのー。」

 俺を上目遣いで見つめる悪魔。

「ああーーもうぅぅぅ良いって言った。確かに言いました!」

「やったーーー!」


 花のカードに書き込んだ事を次から次へと凛子は楽しそうに話す。

 ただし、【雨の中を走る】はカードに書いてはいけない事にした。

ノーコメント。女子高生の部屋になど入った事が有りません。

想像しても、浮かんでくるのはアニメかドラマの中の事だけ。本当にそんなに奇麗なの?


あーすみません。女性の方に失礼ですね。


ちなみに、私の机の上はちょっと散らかっています。

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