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アイスティーは零れて  作者: 良夜 未黒
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1 倫理とノートの切れ端

8月が始まったばかりだったと思う。はっきりとは覚えていない。

 朝5時、これは覚えている。

 YOASOBIさんの曲を聴いていたら物語を書きたくなって始めました。

 夏休みの課題的な感覚(もう学生ではありませんが)で、自分なりの提出期限(投稿日)を決めて書き上げました。

 いつもはハイファンタジーに投稿しているのですが、文芸で投稿します。

 読みやすさを考えて書いたつもりですので、軽い気持ちで読んで下さい。


あ~、YOASOBIさんの曲を朝の5時に聞いて書いたので、毎朝5時にアップします。


あと、縦書きスタイルで読んで頂くとうれしいかな。

「ねえ、そこの紳士君。」


 後ろの席に座っている凛子が背中を突いて【ノートの切れ端】を渡して来た。

 開いて見るとそこには、

『【僕】と一緒に暮らさない♡』

と可愛い字で、当然断らないだろうと言うやや上からの目線を感じる訳の分からない言葉が並べられていた。

 当然俺は無視している。当たり前だ、今は授業中でしかも【倫理の時間】にいきなりおかしな事を言い出す奴の事などに構っていられない。それに【紳士】に【君】付けはおかしいだろう。その時点で完全に上から目線なのだ。しかもまだ高校2年生である。


 7月に入ったばかりだというのに既に蝉がうるさく鳴き出し、クーラーの効いている筈の教室は高校生の熱気も相まって少し蒸している。

 暑さでやられたのか、それとも暑いのを紛らわすためにこんなイタズラを仕掛けて来たのかは分からないが、何事も無かったかのように無視し続けていると、再び背中を突き、

「ねえ、そこの紳士君。」

と言って次の切れ端を渡して来た。開くと、

『16:48上り電車の3両目ネ♡』

と同じ様に上からの指示が書いてあった。俺の予定など聞きもしないで自分の要求を突きつけている。

 まあ、確かに、何の部活もしていない俺にはいつもつるんで帰る友達も無く、毎日適当な時間に学校を後にしているが、あからさまに『貴方には何の予定もないんでしょ』と言われると癪に障る。そこで、渡して来た切れ端に、

『今日は予定が有る』

と書いて、後ろの机に投げる。

「くっ。」

っという笑いをこらえる息遣いが聞こえた気がした。そして再び、

「ねえ、そこの紳士君。」

と背中を突かれて切れ端を渡される。そこには、

『君の予定に合わせます。都合いい時間を書いて♡♡』

とあり、俺は両手を上げて降伏した。渡された切れ端に、

『16:48の電車』

の後ろに【血管の怒りマーク】を付けて後ろに投げた。

「くくっ。」

 さっきよりもあからさまに聞こえる笑いをこらえる息遣い。少しムッとした気持ちが教室の熱気をより不快に感じさせた。


 何のとりえも無い俺は普通に真面目だ。学校生活で問題を起こす事も無ければ、身嗜みも高校生を逸脱した事は無い。

 なのに今は倫理の授業中にもかかわらず、【ノートの切れ端】で授業に関係の無いやり取りを行い、その内容は高校生を逸脱したものだ。そんな感じで授業の内容など何も頭に入らないままに授業は終わった。だがきっと真面目に受けていてもこの教室の蒸し暑さが授業の内容など遮断して、欲望の赴くままに身体が涼しさを求めて集中などは出来なかったに違いない。


「凛子~。」

 遠くの席に集まった数人の女子が手を振って俺の席の後ろに座っている女子を呼んだ。

 【凛子】と言うのは本名ではない。本名は【小鳥谷こずや 凛】。

 今時珍しく、ストレートの黒髪で、それを束ねてポニーテールにする事も無く、右側に清楚な髪留めをしているだけで、どこか古風な大和撫子をイメージさせるので、名前に【子】を付けて呼ばれている。

「凛子、帰りに駅ビルに新しく出来たフレッシュジュースのお店に行こうよ。」

「ゴメン、今日【私】予定が有るの。本当にゴメン。また今度ね。」

「しょうがないなー、うん、今度ね。」

 そう、凛子は俺と話すときにだけ自分を【僕】と呼ぶ。他のクラスメイトと話すときには普通の女の子の様に【私】だ。

 そんな凛子が友達と離れて自分の席に戻って来た。

「じゃあ、紳士君、僕は電車で君に会えることを楽しみにしているよ。」

と少しだけ身体を寄せて、2人にしか聞き取れない位の小声で言うと席に戻って、次の選択科目の為に教室を出て行った。

これは完全にフィクションです。

授業中は前の人の背中を突いたり、ノートを千切ってのメモのやり取りは止めましょう。

仕事中もそうですよ。


真面目が一番。

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