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6話:旅立ちの日⑥
(やっぱりいつものダメ親父か……)
いつもの光景を見てホッと安心する自分も色々やばい……
「ディーン、そろそろ馬車に遅れてしまうわ!」
「あっそう言えばそうだった! じゃ! いってくるね!」
「気をつけてね!」
俺は母さんに挨拶を済ませると、父さんが出ていった扉を同じようにして開ける。
ガチャ
冒険日和!
曇り無きいい天気だ!
風もいい感じに吹いている!
土と草の匂いが風に乗って俺の鼻腔を……
クンクン、クンクン
鼻腔を……
クンクン、クンクン
「うぉおええてえ臭い!!!」
扉を出た隣の庭で俺の親父がキラキラを口から吐き出していた。
その匂いが俺の鼻腔を刺激した。最悪だ。
親父が俺に気づくと親指をグッジョブポーズにして涙目になりながら……
「ハハっ! ディーン、気をつけて行ってくるんだぜ! ……うっ! オロロロロロロロロロロロロロロ」
……吐きながらキメ顔されても困るんだが。
「……酒はもう……呑まないぜ! うっ!」キラーン!
「い……行ってきまーす……」
冒険の始まりの匂いは親父のキラキラの匂いでした。