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4話:旅立ちの日④
「もう一杯……もう一杯だけ……」
父さんはいつも通り酒を母さんに媚びていた。酒というものはそんなに人を迷わせてしまうものなのか?
俺の晴れ舞台の旅立ちの日にもかかわらず変わらない所が逆に安心するところではあるが、流石に一言クソ親父へ言っておかなければ母さんが可哀想だ。
ドン!
俺はテーブルの上を手で思いっきり叩いた。
「父さん……いい加減にしろよ。今日旅立ちの日なんだぞ! 俺が出かけてもずっとそうやって飲み続ける気かよ! いい加減働けよ!」
親父は俺の行動に一瞬びっくりしていた。
呑んだくれでも父さんは父さんだ。
きっとこんな事をして絶対に怒ると思っていた。
「……父さん?」
「……そうか、今日だったんだな」
「え?」
だが親父は酔いが覚めたように急に冷静口調になると、ボサボサの前髪を右手でかきあげた。