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13 衝撃の後



私のせいで神殿に穴だったり傷をつけてしまったので、ここでの話はまた今度という事になった。私達は神殿を後にして来た道を戻った。一回通った道なので来た時よりも早く戻る事ができた。

滝の裏からひょっこり顔を出すと、空がオレンジ色に染まりつつあるのを見て、あっという間に感じたけれど長い時間いたんだなと感じた。


「あっ!カティアさん待たせてるんだった!」


教会の方で待っていると言っていたカティアさんを思い出し、隣にいるレオン様を見上げると「彼女なら大丈夫ですよ。」と微笑んだ。

そうは言っても、長い時間待たせてしまっているわけだから急がないと!と走り出そうとしたらレオン様に止められた。


「まだ大丈夫ですから、少しお話ししながら行きましょう?」


レオン様のお話しを聞くという誘惑に、私はその場で足踏みしながら考える。


(カティアさんを待たせてるけど、レオン様の話も聞きたい気もするし、でもカティアさんが・・・。)


迷いに迷った末「早歩きよりも少し遅めで早く行きましょうか!」と、矛盾してる答えを出した。レオン様は面白そうに「分かりました。」と笑い、私達は早歩きよりも少し遅めで早く行く事になった。


「ヒロナ様、そこの茶畑では何が取れるか知っていますか?」


レオン様が指を差す方を見ると茶畑があった。来た時に作業していた神官達はいなくなっていた。


「私も来る時に気になってたんですけど、これってもしかしてリオークの葉ですか?」

「正解です。実はこの国でリオークの茶葉が採れるのはこの場所だけなんですよ。」

「そうなんですか!?じゃあリオークって貴重なお茶なんですね!」


リオークの茶畑は、私が見る限りそこまで大きな畑には見えない。一般に流通させるにはこの規模だと少なすぎる。希少さを売りにしてるならこのくらいでも問題ないのかもしれないけど。


「この村では割と飲まれているのですが、王都や他の所にはなかなか行き届かないので高級品として取り扱われてるんですよ。」

「やっぱり採れる量が少ないからですか?」

「いえ・・・あぁまあ、そういう理由もありますが、一番の問題はこの村を囲っている森なんです。魔の森と呼ばれていて、名前の通り森には多くの魔物が住みついていて、普通の人ではそう簡単には森を抜ける事は出来ません。」


ここへ来る道中、森があるのは気がついていてけれど、魔物が住む森とは知らなかったので気にも留めていなかった。そういえば、私が倒れていた近くも森だったけど、召喚された場所が少しずれてたら、魔物だらけのその森の中で、今も彷徨い歩いていたかもしれないと思うとゾッとした。


「森を抜けるには、それなりの装備と人員が必要ですしお金もかかってきますから、頻繁に向こうとこちらを行き来するの事は金銭面的にも色々と難しいのです。まぁ、これはリオークに限った話ではないんですけどね。」


魔物は年々強くなっているみたいだし、更にその影響からか魔の森自体も年々拡がりつつあるらしい。

今はまだ人が行き来できる状況だが、今後さらに森が深くなっていけばそういった事も出来なくなってくるだろうし、最悪の場合、人の住む場所も飲み込んで、最終的にはこの国自体を呑み込んでしまう事も考えられる。

そうなる前に食い止める方法として、聖女が呼ばれたはずなのだけれど、本物は何考えてるか分からないし、(仮)聖女の私は今現在無能だ。聖女様が覚醒してくれれば良いんだけど、それを頼りにするんじゃなくて、私も私で有能とまではいかなくても、使える人間に早くなりたいと思った。


「次の魔力診断っていつやるんですか?」

「次ですか?そうですね、次は多分もう少し先になりますかねぇ。」


レオン様は顎に手を当てながら首を少し横に傾け曖昧に返事をした。


「先と言うと?」

「今のヒロナ様は魔力だけならラミエル国でも5本の指に入る程の方ですが、魔法に関しては赤ん坊並みなんですよね。」

「赤ん坊って」


この世界と、初めましてこんにちは。をしたのがつい昨日の事だから、産まれたての赤ん坊と同じなのは間違いない。でも魔力はあるのに、それを使うだけの力がないのはもどかしくはある。


「ですから、診断はとりあえず置いておいて、魔力のコントロールをするところから始めましょう。」

「そうですよね、コントロールできないとまた建物壊しちゃいますし。」


あの時はいい感じに出来ていると思っていたけど、実際は蛇口を全開にして手を離した時の暴れホースだった。結構引きずるタイプなのでさっきの光景を思い出して肩を落とす。


「そう落ち込まないで下さい。あの位でしたら簡単に修復できますし、次の時にまでに神殿自体の強度も高めておきますから。」

「次の時って、次も神殿を使うんですか?」

「はい、あそこが1番安全な場所ですし、聖域内なので魔力を使う時に体にかかる負担も軽くなりますから。」


「なので、そこら辺で練習とかはしないで下さいね?」と笑顔で釘を刺されたが、初めてであの状態を見ちゃったら、気軽にちょっと練習しよう!とは思えない。乾いた笑いをすると、もうすぐそこに朝通ってきた廊下の入り口が見えた。


(カティアさん心配してるかな。)


そう思うとさっきよりも足取りが早くなる。

カティアさんの所に向かう途中でふと気になる事があった。私は廊下に差し掛かる手前で立ち止まって後ろにいるレオン様の方を振り返る。


「あの、私の事ってカティアさんに言ってもいいんですか?」

「そうですね、出来る限りあなたの事はその時が来るまで隠し通したいのですが、彼女は信頼できる方ですし、彼女も口には出しませんがそれを望んでいる事でしょう。」


聞いてみたはいいけれど、モヤッとするものが心に残った。


「そうですか。ありがとうございます。」


と、少し間を置いてから言うと、クルリと振り返り止まっていた足を動かした。

廊下に響く2人分の足音を聞きながら、私は悩み始めた。

話す事で巻き込む事になるわけだけど、カティアさんは本当にそれを望んでるのかなと疑問に思った。初めに「覚悟が必要になってくきますよ。」とレオン様が言った時にカティアさんは迷っている様だった。関われば自分だけでなくて、レヴィ君にも危害が及ぶかもしれないから深くは関わりたくないと思っているかもしれない。

そんな考えが頭の中でいっぱいになって来たので、頭をブルブルと振って溜まった考えを振り飛ばした。


(レオン様もああ言ってくれたけど、知りたいか知りたくないかはカティアさん本人にちゃんと聞こう。)


頭の中の考えがほぼ無くなったので気持ち足取りが軽くなった。スタスタとリズム良く歩き、あっという間にカティアさんが待っているであろう教会の扉の前についた。

何の躊躇いもなく、勢いのまま扉を開けたら、近くに座っていたカティアさんがビクッと飛び跳ねる瞬間を見た。


「すっすみません!無心で扉開けちゃったから勢いが結構ついちゃって!」

「あー、ふふふ。いいのいいの、ちょっとビックリしたけど。ふふっ」


驚きすぎてツボに入ったのか、カティアさんは口元を押さえながら上品に笑う。後ろでも笑いを堪えるような声が聞こえて振り向けば、レオン様も口元を押さえ横を向き肩を震わせながら笑っている。

2人とも堪えようとしているが所々で堪えきれてなくて吹き出していた。


(2人ともツボが浅いのね。)


笑う2人に挟まれていると、自分が笑われている様な気分になった。私がそんなこと思っているなんて知らない2人は、この後も笑いが止まらず、1人が笑い終わったかと思えばもう1人は思い出し笑いし始めるので話をしようにも出来なかった。

そこまでツボに入るものかとも思ったけど、2人の笑いで辺に緊張しないでいられたので良かった。

でも、この様子だと、私がカティアさんと普通に会話ができる様になるまでもう少し時間がかかりそうだ。




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