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山ン本怪談百物語

災害の夜に

作者: 山ン本

百物語二十一話になります


一一二九の怪談百物語↓


https://ncode.syosetu.com/s8993f/


感想やご意見もお待ちしております!


 その日、日本は大きな災害に見舞われた。


 もうかなり昔のことだ。当時の私は会社員で、ロサンゼルスに出張中だった。


 仕事中に上司から連絡があってね。私の家族が暮らす街も大変なことになっていたそうだ。私は急いで帰国すると、すぐに自分の家へ向かった。


 妻や子どもたちのことが気になった私は、無我夢中で家へ帰宅した。いや、正確に言えば「家があった場所」に帰ってきた。


 崩壊した家の前で途方に暮れていると、近所に住んでいた老夫婦と偶然再会することができた。


 「行き場のない人は、体育館に避難している。すぐに行ってみなさい」


 私は家の近くにあった中学校へ向かうことにした。そこの体育館が、避難所として使われているらしい。体育館を見つけた私は、受付の人へ妻たちが避難しているか聞いてみることにした。すると…


 「あぁ!○○さんの旦那さんですね!」


 妻たちは体育館にはいなかった。しかし、受付の人が妻の知り合いで、隣町の避難所に無事避難していることを教えてくれた。ほっとした私は、思わずその場に座り込んでしまった。


 「今日はもう遅いので、避難所へ行くのは明日にした方がいいですよ。宿泊できる体育館がまだ残っているので、そちらで休んでください」


 私は受付の人に感謝すると、毛布を1枚もらった。この中学校には、大きな体育館と小さな体育館が存在する。私は大きな体育館へ向かうと、体育館の扉を静かに開いた。


 「まったく…これからどうすればいいんだ…」


 「ママ…ママ…」


 「いつまでここにいればいいんだよ」


 時間は夜の12時過ぎ。体育館の照明は消されており、中は真っ暗になっていた。



 「今日も大変だったなぁ」


 「お父さん、明日来てくれるかなぁ」


 「おにぎり食べたいよ」



 中の様子は暗くてわからないが、体育館のあちこちから声が聞こえてくる。


 「すみません、失礼します…」


 私は空いたスペースを見つけると、周りの人を起こさないよう、静かに寝転がった。



 「寒いなぁ」


 「家に帰りたいよ」


 「寂しい」



 体育館の中は、避難している人々の悲痛な声で埋め尽くされていた。


 (可哀想に…みんな大変なんだなぁ…)


 私は疲れていたこともあって、すぐに眠りについた。






 翌朝…


 「あぁ、もう朝かぁ」


 私はブルーシートの上で目を覚ました。硬い床で眠っていたので、身体が少し痛い。私は起き上がると、明るくなった体育館の中をゆっくりと見渡した。


 「………えっ?」


 体育館の中は、たくさんの「棺」で埋め尽くされていた。


 慌てて体育館の外へ出ると、扉の近くに張り紙が落ちていることに気がついた。その張り紙には、大きな文字で「遺体安置所」と書かれていた。


 どうやら私、とんでもないところで眠ってしまったみたいです…

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― 新着の感想 ―
[良い点] という事は、夜中に主人公が聞いた声というのは… 起きた時に周りが棺桶だらけだったら、一気に眠気が吹っ飛ぶ事でしょうね。 また、仮に主人公がそのまま眠り続けていた場合、運が悪ければ死体と勘違…
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