災害の夜に
百物語二十一話になります
一一二九の怪談百物語↓
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その日、日本は大きな災害に見舞われた。
もうかなり昔のことだ。当時の私は会社員で、ロサンゼルスに出張中だった。
仕事中に上司から連絡があってね。私の家族が暮らす街も大変なことになっていたそうだ。私は急いで帰国すると、すぐに自分の家へ向かった。
妻や子どもたちのことが気になった私は、無我夢中で家へ帰宅した。いや、正確に言えば「家があった場所」に帰ってきた。
崩壊した家の前で途方に暮れていると、近所に住んでいた老夫婦と偶然再会することができた。
「行き場のない人は、体育館に避難している。すぐに行ってみなさい」
私は家の近くにあった中学校へ向かうことにした。そこの体育館が、避難所として使われているらしい。体育館を見つけた私は、受付の人へ妻たちが避難しているか聞いてみることにした。すると…
「あぁ!○○さんの旦那さんですね!」
妻たちは体育館にはいなかった。しかし、受付の人が妻の知り合いで、隣町の避難所に無事避難していることを教えてくれた。ほっとした私は、思わずその場に座り込んでしまった。
「今日はもう遅いので、避難所へ行くのは明日にした方がいいですよ。宿泊できる体育館がまだ残っているので、そちらで休んでください」
私は受付の人に感謝すると、毛布を1枚もらった。この中学校には、大きな体育館と小さな体育館が存在する。私は大きな体育館へ向かうと、体育館の扉を静かに開いた。
「まったく…これからどうすればいいんだ…」
「ママ…ママ…」
「いつまでここにいればいいんだよ」
時間は夜の12時過ぎ。体育館の照明は消されており、中は真っ暗になっていた。
「今日も大変だったなぁ」
「お父さん、明日来てくれるかなぁ」
「おにぎり食べたいよ」
中の様子は暗くてわからないが、体育館のあちこちから声が聞こえてくる。
「すみません、失礼します…」
私は空いたスペースを見つけると、周りの人を起こさないよう、静かに寝転がった。
「寒いなぁ」
「家に帰りたいよ」
「寂しい」
体育館の中は、避難している人々の悲痛な声で埋め尽くされていた。
(可哀想に…みんな大変なんだなぁ…)
私は疲れていたこともあって、すぐに眠りについた。
翌朝…
「あぁ、もう朝かぁ」
私はブルーシートの上で目を覚ました。硬い床で眠っていたので、身体が少し痛い。私は起き上がると、明るくなった体育館の中をゆっくりと見渡した。
「………えっ?」
体育館の中は、たくさんの「棺」で埋め尽くされていた。
慌てて体育館の外へ出ると、扉の近くに張り紙が落ちていることに気がついた。その張り紙には、大きな文字で「遺体安置所」と書かれていた。
どうやら私、とんでもないところで眠ってしまったみたいです…