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作家と放火魔  作者: 明日香狂香
居酒屋
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フード男

 フード男は、グラスの中でゆらゆらと揺れるオレンジの炎をじっと見つめていた。時々、薄笑いした口元がフードから覗く。

 もしやこいつが、犯人か?そう思ったが、確証はない。ライターを持ってるだけなら文雄もやつも一緒だ。


 10分ほどして店に電気が戻った。どこかで落雷でもあったのだろうか?消防車やパトカーのサイレンが聞こえる。


 翌朝、停電の原因が火事の影響で送電を止めていたということが解った。昨夜の男は、あれから帰っていったが、犯人か違うのか文雄はどうにも気になった。


 女将に聞くと、フード男は決まって火事のあった晩に現れると言う。

「いつもろうそくの火を眺めているんです。食事はしませんね。水を飲んでから、しばらくして決まって焼酎を一杯だけ。とくに銘柄はこだわってなさそうですよ。でも、変なんですよね。」

「何が?」

 女将の言葉に思わす聞き返した。

「焼酎には手をつけずに帰られるんです。」

 いったいどういうつもりなんだろう。しかし、もし放火犯だったらうかつな質問は危険だ。逆襲とまではいかなくてもせっかくの犯人が雲隠れしてしまうかもしれない。


「やあ、またお会いしましたね。」

 文雄は、ろうそくを眺めている男に近寄って言った。

「今日は仕事で、ちょっとお話いいですか?」

 文雄は雑誌でライターの特集があってその執筆の手伝いをしているというふれこみで男に近づいた。甘い独特な香りがする。どこかでかいだことはあるのだが、思い出せない。

「大村式。どなたか他にも持ってらっしゃる方をご存じないかと思いまして。」


 いきなり、相手のことに触れるのは警戒される。まずは他人のことから話題にしていくのが定石だ。

「さあ。」

 男がぶっきら棒に答える。

「今でも、売ってますかね?そこならお客さんがくるかもしれないので。」

「近くのホームセンタで最近見かけた。」

 文雄がライターを買ったところだ。

「ありがとう。規則で謝礼は出せませんが、お礼に何かおごります。」

「それなら、焼酎を一杯。」


 おとこは、コップにそそがれた透明な液体をろうそくの手前へ置いて、不規則にうつる炎をフード越しに眺めながら時折肩を小刻みにゆすりながら薄笑いを浮かべていた。


 物書きのカンとでもいうやつか、かなり屈折はしているがやばい奴ではないように見えた。タバコを吸うわけでもない。ヤニ臭ささも感じられない。なのに強力なライターを持っている。あの匂いの正体を考える。

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