襲撃は続く
国王の謝罪はもちろん受け入れた。断るなんてとんでもない。と言うか、普通に考えて国王が庶民、それも流れてきた冒険者に謝罪するなんてあり得ない。さっさとこの場を去りたい一心で「わかりました」と受け入れる以外に無い。
だが、そのあとが問題だ。とりあえず今日は一旦お開きとして城を辞したのだが、
「済まないが行動を制限させてくれ」
「わかりました」
冒険者ギルドとしてはリョータ達に非が無いのは重々承知。だが、この状況下では最重要人物であり、目を離すことが出来ないため、やむを得ず犯罪者に科すような要求をせざるを得なかった。
王都の冒険者ギルドには宿泊用の施設はない。だが、あくまでも建前であって、職員が寝泊まり出来るような所は用意されているので、リョータ達の宿はそこに移された。
幸いなことに、街の中を出歩くぶんにはマリカが同行すれば良しとなったが、街の外に出るのも魔の森へ行くのも禁止。待っているだけという退屈な日々にさらに退屈が上乗せされた。
「国としては明日くらいには決断をすると思うがね」
「出来れば今日中に決めて欲しいんですけど」
「俺もそう思う」
相当痛むのか、胃のあたりを押さえながらレグザは執務室へ戻っていった。
「さてと……」
「お出かけの際は一言お願いしますね」
「はい……」
マリカさんになぜか釘を刺された。
別に黙って出歩くつもりは無いのだが。
城で緊張しすぎたせいか、妙に腹が減ったので、早めの夕食にすることにして、ギルド三階の部屋を出ると階下へ下りる。受付でマリカさんに「メシ食いに出掛けようと思うんですが」と言ったら、「では同行します」とそのまま付いてきた。護衛、というよりは連絡用なのか?
どうせ付いてくるならとマリカさんお薦めの店を教えてもらい、そこで夕食にした。支払いは冒険者ギルドが持ちますから平気ですと、やたら高いメニューを頼んでいるあたり、実に強かな人だ。
値段が気になってあまり色々頼めず、少し物足りないのだが、お薦めなだけあって美味しかった。で、ついでとばかりに、食べている間中、ここまでの間にどんな旅をしてきたかとか根掘り葉掘り聞かれた。隠すことじゃないが、話しづらいことも色々あるなと思いながら答えていたが、遠慮無しでガンガンくる。ちょっとこの人、苦手かも。美人だけど。
店に入る前はまだ明るかったのだが、外に出るとすっかり日が落ちて暗くなっていた。王都と言っても街灯があるわけでは無いから、店の明かりが届かないところは薄暗いので、出来るだけ避けてギルドまでの道を歩く。
「いやあ、役得です。明日は別のお店に行きましょうね」
「コレが経費で落ちるとか……いいんですか?」
「いいんですよ、このくらい」
いいらしい。ならもう二品くらい頼めばよかったとエリスとうなずき合う。
「私としても、Bランクになったリョータさんに、Cランクになったエリスさんのことはよく知っておきたいですし」
「え……」
イヤな予感がして、ちょっと距離を取ってしまう。
「勘違いしないで下さいね。高ランクの冒険者さんのことは色々と知っておきたいんですよ。他の街にも『こういう人なんです』という情報を回したいですし。それに悪い話じゃないですよ?それこそ『こういう依頼がありますがどうですか?』なんて話がスムーズになりますから」
「はあ」
まあ、そういうことにしておきますか……ん?
エリスが不意に足を止めた。ほぼ同時にマリカさんも。そして、その視線の先、ちょうど店が途切れ、薄暗くなっている道の真ん中に、何かが立っている。
「二人「いえ、三人です」
マリカさんの言葉をエリスが否定する。俺としてはエリスの方を採用。マリカさんも「確かに三人ですね」と肯定したが、この人何者?
つーか、街中でも襲ってくるのか?一応武装はしているが、街中ではちょっと抵抗あるんだけどな……
「何者……って聞くまでも無いですね。一応確認したいので姿が見えるところまで来てもらえますか?」
マリカさんの度胸がすごいんですがと感心している間に、ザッザッと土を踏む足音がして三人の影が見えてきたが、明かりの下までは出てこない。
「ストムってのはしつこいんですねぇ……」
マリカさんの問いかけに三人は答えない。
さて、どうやって無力化しようかと思ったら、マリカさんの姿が消えていて、ほぼ同時に三人の影が崩れ落ちた。
「え?」
「リョータ、手持ちが少し足りないんだが、ロープとか持ち歩いてるか?」
「え?あ、ああ……あります。少しですけど」
口調が全然違うのに少し驚きながら、腰に下げていた袋から渡す。マリカは慣れた感じで三人の手足を縛ってひとまとめにして、ズルズルと引きずり出した。
「とりあえずギルドに戻るぞ」
「は、はい……」
ニコニコしながら歩いているんだけど、一体何をどうやったんだろうか?
「そうそう。きちんと名乗っておこう。私はギルドの受付なんかではなく、この街に滞在中のSランク冒険者、マリカだ。現在二人の護衛という依頼を受けている。よろしくな」
とんでもない人だった。
ギルドに戻ると、本来の受付に話を通して、襲撃者を地下にある牢へ放り込む。こいつらの処遇についてはすぐに城に連絡を入れ、明日の朝早くに身柄が移される事になった。
「全く……一体何人送り込んでいるんだ」
レグザのぼやきに全員が頷く。
「実力は大したことなかったが、どこにでもいるというのはキツいな、気の休まる暇が無い」
「マリカでも、か」
「おいおい、私を何だと思っているんだ?」
「人外の「何だと?」
「いや、何でも無い」
それにしても現役のSランク冒険者か。どこぞの変態とは全く違うな。実力は間違いなく人外レベルだが、その他は実に普通。常識人だ……と思う……思いたい。
話の区切りの関係でちょっと短めです




