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  作者: ひじきとコロッケ
ルガラン
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護衛の依頼(人を見かけで判断するのは、多分いいこと)

 ポーレットが見覚えのある薬草が料理に混じっていると気づいた。

 薬草だから大丈夫?そんなことはない。薬草も使い方次第だ。わかりやすい例としてはお通じをよくする薬草を大量に摂取したら、しばらくトイレの住人になること間違いなし。見つけたのはそれに似たような物で、毒ではないが……というもの。

 そして、確認してみたところ、宿屋で用意してもらった弁当もダメ。自分たちで持っていた保存食――ちょっと高めの奴なので弁当に見えなくもない――で済ませたところに、これだ。

 どう考えてもこの先に団体様がお待ちかねだ。

 後れをとることは無いと思うが、油断大敵だし、後始末の面倒さを考えると、のこのこついて行くメリットなんて皆無である。

 ちなみにそれよりもずっと前、バイベルと会ったときに既に気づいていたこともあるが、それはそれとして、この後どうするか、だ。


「ではそういうことで」

「ああっ!ちょっ!ちょっと待って!」

「はい?」

「ふ、普通に街道を行きます。バイベルもいいよな?」

「う……ん……」

「では、行きましょうか」


 ライロの顔には焦りの表情以外見えないのだが、大丈夫だろうか?俺たちが心配することではないか。




 しばらく歩いたところでバイベルが足を止めた。


「どうしました?」

「ん……ちょっと……おしっこ」

「はいはい、どうぞ」


 街道脇の草むらに入っていくのを見送る。エリスの探知によると、動物は見当たらない。いざ、となったときに蛇に噛まれるなんて心配は無用だ。

 なお、動物(・・)はいないが、動物じゃないのはいるようで、エリスの耳がピコピコ動いている。思わず触りたくなるがグッと我慢。エリスだって、聞きたくもない水音()聞いているのだから。


「どうだ?」

「当たりです。この先で待ち伏せに変更、と伝えてます」


 馬鹿なのか?

 馬鹿なんだろうな。


「ふう、おまたせ」

「では行きましょう」


 そうして歩くこと三十分、エリスがうんざりした表情で足を止めたのに合わせ全体が足を止める。地形的にカーブが連続していて先の見通しがやや悪い上に、道幅がやや狭くなっている、襲撃にはもってこいの場所。


「リョータ、どうする?」

「うーん」


 あちらが待ち構えていることなどエリスはとっくに気づいて合図を送っていたが、「ここはお誘いに乗った方が面倒が少ないよね」と、誘い出されてみた。まあ、エリスのため息からすると、待ち伏せの仕方は相当にお粗末なようで、三人揃ってこう考えた。


「盗賊団としては駆け出し。初心者の集まりだな」

「人数はざっと二十人……規模はなかなかですね」

「リョータ、どうします?」

「スルーしてやろうか」

「それは……面白そうですね」

「だろ?」


 とはいえ、三人だけならスルーできるんだが、お荷物二人を連れているからそうも行かないのが辛いところだな。


「それなりに統制はとれているみたいですね」

「そうなの?」

「等間隔で周りをきれいに囲んでます。ちょっと息が荒い人が多いのがまたなんとも」


 多分、最初に待ち伏せていたところに向かわないことになったので、仕方なくバイベルが用を足しながら見張りに連絡。慌ててこちらに移動してきたのだろう。

 エリスによると山道を二、三キロは移動してきているらしいので、息が上がっているのも当然だろう。

 さて、どういう対応をしようかと思案しているうちに、彼らの襲撃ポイント(・・・・・・)に到着したらしく、茂みをかき分けてむさ苦しい男たちが姿を現した。


「ハァッ、ハァッ……お前ら……ここを……通りたかっハァッ……たら!金目のっハァッもの」

「ちょっと待った」

「な、なんだ?」

「息整うまで待とうか?」

「ふざけるなっ!」


 ふざけてなんかないんだよな。ただ、むさ苦しさ全開のオッサンたちがハァハァと荒い息をしながら取り囲んでいる状況って、絵面が悪いんだよ。犯罪者っぽくて。まあ、犯罪者なんだけどな。


「もういい!頭にきた!お前ら全員ぶっ殺す!」

「お頭、ぶっ殺しちゃマズいんじゃ」

「うるせえ!俺たち、舐められてんだぞ!」

「お、おう」

「そう……だな」

「お頭、奴隷として売り飛ばすんじゃ?」

「そうだった」


 コイツらなんなの?


「……そういうことだ!一生惨めに暮らす羽目になるから覚悟しておけ!」

「そうだそうだ!」


 さて、どうやらあちらはやる気満々のようだ。


「へへっ、じゃ、そういうことで」


 後ろをチラリと見るとバイベルとライロがそっと距離を取っていた。


「お人好しな冒険者様にはいつもいつも世話になりっぱなしですな」

「全くだ」


 ここまで案内してきた役目は終了、ということらしい。


「へへっ、騙される方が悪いって事で」

「悪く思うなよ」


 そう言って二人が距離をとっていき、周りは距離を詰めてくる。


「二人とももう少し近くに」

「はい」


 周りの男どもの距離がピタリと一致、つまり、バイベルとライロが囲んでる者たちとすれ違う瞬間、


「スタンガン、ちょっと強め」




「うぐぐ……」

「うへぁ……ぐぁ」


 むさ苦しい男たちがうめいている絵面はひどいのひと言。

 その醸し出すむさ苦しさは、十日以上何も食べていない肉食獣なら興味を示すかなという感じ、というのはエリスの言。さすが肉食系獣人はよくわかってらっしゃる。

 そして、そんなのには近づきたくないが、何しろこんなところに転がしておくと交通の邪魔になる。馬車を引く馬も、こんなのを踏み潰しながら歩きたくはないだろう。

 よりにもよって道幅が狭くなっているあたりというのもまた、迷惑度合いを増している。そう、こんな迷惑な物体で街道を塞いだりするのはマズいので、さっさとどかさなければならないのだ。




「こっち、縛り終えました」

「そっちも頼む」

「うへぇ……」


 ポーレットがイヤそうな返事をするが、縛り終えたのをずるずる引きずる方はもっとイヤなんだよ。どこを掴んでも汚いし。

 見ろ、エリスなんて汚物を見るような(・・・)目じゃなくて、汚物を見る目でチラ見したあとはそっちを見ないようにして雑に引きずってるぞ。それも大きめの尖った石のあるあたりを通るように調整しながら。


「ががががっ!い、痛えよ」

「うるせ」

「なんだ「黙れ、スタンガン」


 ステータスだのスキルだのがある世界だったら雷耐性が生えてきそうなくらいに電撃を食らわしながら街道脇の茂みの向こう側に積み上げるのにたっぷり二時間ほどかかってしまった。




「お、重てえよ」

「どかしてくれ」

「ぬぐぐぐ……」


 前世で、何かで読んだが、殺人というのはとても面倒な犯罪だという。殺したあとの死体をどうにかしないとすぐに捕まってしまうから隠さなければならないが、生きている人間なら歩いてくれるが死んだ人間は歩いてくれないので運ぶのがとても大変だ、と。

 だが、敢えて言おう。生きている人間も運ぶのは大変だと。

 うるさいし、汚いし、臭いし。ああ、後ろ二つはこういう盗賊限定の事情か。


「一つ、答えてくれないか?」

「気が向いたら」

「いつから気付いてた?」

「……結構前、バイベルと温泉で会ったときから」

「「「は?」」」


 むさ苦しいオッサンどもがハモるのって、あまり見たくない光景だよな。


「な……なんで……」

「だって……うん、言う必要はないな」

「お、おい!せめて何か教えてくれ!」

「教える意味、あるか?」

「く……つ、次に活かす」


 次があるとでも言いたげだけど、あるのか?ないよな?

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