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  作者: ひじきとコロッケ
ルトナーク
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魔剣に関する一般的な見解

「私も詳しくはないのだが、犯罪奴隷紋だけでも二十以上の種類があるらしい。そして、借金奴隷紋も金額や返済方法などで細かく分類されているという。ポーレットの場合はごく普通の紋のようだが、返済方法が、一定期間金を貸した相手の護衛をする、なんてのもある」

「へえ」

「結構大変らしいぞ?食事に毒が入っていないか毒味をさせられたりするらしいからな」

「意外に命がけだった!」

「うう……私、普通で良かったです」

「とまあ、奴隷紋も多種多様と言うわけだ。あまり知っていても役に立たない情報だがな」


 どうでもいい話だったなと付け加えてから話を続ける。


「ヴィエールがどこにあるかという詳しい地図は残念ながら手元に無い。後で手紙を書いてやるから大陸の東に入った頃にどこかのギルドで都合を付けてもらえ」

「わかりました」


 遠距離の移動をする者がほとんどいないこの世界では、はるか遠くの地図にはほとんど価値がないのだから、手元にないのも仕方ない。色々手配してもらえるだけでも充分だろう。


「ちなみにヴィエールの街の正確な位置がわからないと言ったのは理由があってな」

「聞いた方がいい情報ですか?」

「そうだな」


 そういうことならと少し姿勢を正す。


「大陸にある()は一部の……ストムのような例外はあるとしても、だいたいの街が魔の森の玄関口になる。ヴィエールも例外では無く、魔の森に通じているのだが」

「だが?」

「すぐ近くにダンジョンが無い」

「へえ」

「そして、魔の森に入っても近くにダンジョンが無いと街の規模は小さく、冒険者ギルドも非常に小さい。近隣の街の支部から交替で人が来る、出張所みたいな感じでな」

「はあ……」


 リョータの頭の中に、実家の近くにあった、こぢんまりとした交番が思い浮かぶ。巡査が風邪を引いて寝込んだときはなぜか奥さんが事務所にいて、何かあったら応対していたように覚えているが、よく考えたら法的に色々問題があるよな、と。

 誰も気にしない、田舎らしい大らかさ故に許されていたんだろうけど。


「あと、ヴィエールというのは最近ついた名だ」

「最近?」

「と言っても十年ほど前だな。詳細は知らないが、色々あって街の名前が変わった」

「良くあることなんですか?」

「小さな街や村では良くあるな。領主が変わったとか、そんな程度でコロコロ変わる」


 理解した。すっごくよく理解出来た。


「名前が変わる前はレームという名だったそうだ。何でも街の開拓に尽力したラウマ(・・・)という人物にあやかってつけたとか」


 正解来たかも知れん。


「それと……これを見せていいかどうか、国の上層部でも悩んだらしいのだが……渡しておく」


 スッと紙の束が目の前に置かれた。


「リョータたちなら大丈夫だと信用しているという、私が示せる精一杯だ」

「これは……?」


 パラ、とめくってみたが……


「種族奴隷紋を刻むときに使う……インクの製造方法」

「え?!」

「言っておくが……悪用厳禁。それと、他に漏らすなよ?」

「わかりました」

「もしも破ったときには、冒険者ギルドが全力で、大陸全土に指名手配をかける」

「肝に銘じておきます」


 ローワンとしてもかなりのリスクだろうが、それでもこうして開示してくれたと言うことは……その信用に報いなければな。

 工房の奥に金庫室でも作って保管するか。


「今のところは以上だが……まだ尋問が終わっていない者が多いという。全員が終わるまではまだ街にいて欲しい。何か新しい情報が出るかも知れんからな。少々出かける程度なら構わないが」

「わかりました」


 ギルドマスターの部屋を辞して、宿へ移動する。今の話の件や、これからについての話し合いが必要だ。




「何から話したらいいかわからなくなりつつあるんだが、一つずつ話をしようと思う」

「はあ……何でしょうか」


 一人部屋に三人は狭いので二人部屋に集まったのだが、そもそも寝るだけの部屋なので狭い。


「ポーレット、薄々気付いてると思うけど……お前をポーターとしてではなくて、旅の仲間として迎え入れたい」

「奴隷の私に拒否権があるとでも?」

「そういう意味じゃないんだが」

「ではどういう意味ですか?」

「今から話すことは他言無用。少しでも漏れたらどうなるか……と言う内容だ」

「はあ……何でしょうか?」

「えーと……何から話すか……そうだな、簡単なところから。ポーレットに渡した剣だけど」

「あ、はい」

「アレな……俺が作ったって言ったら、お前、信じる?」

「はい?」

「俺が作った」

「……っぷ……っはははははっ!」

「え?」

「はははははっ!……っひひひ……はははっ……何言ってるんですか。冗談も程々にしてくださいっ」

「何って」

「魔剣ですよ?石すらスパスパ切り裂く魔剣。それを!幾ら何でも『作った』って」

「証拠ならあるぞ」

「どんな証拠が?」

「今ここには材料がないから作れないが……俺の剣もエリスの剣も基本は同じ。で、これが予備の剣」

「へっ?」

「さすがにこの剣でもドラゴンの骨は断ち切れなくて折れたり欠けたりするからな。いざというときのために予備を持ち歩いてる。折れたりしたあとは新しく作ったりもするぞ」

「マジですか?」

「本当ですよ?」


 ジト目でこちらを見てきたがエリスが「何を言ってるんですか?」と、キョトンとした表情を返す。ポーレットは返す言葉もない。


「あとは……そうだな、これ」


 ちょっとアレだが、リョータがブーツを脱いで渡す。


「イヤ、さすがにこれを履くのは」

「よく見てくれ」

「え?」

「俺がサンドワームの皮で作った」

「またまた……サンドワームの皮で……って、本当だ!」

「私のブーツも同じ、サンドワームの皮ですよ」

「うえええええっ?!」


 表情が色々おかしくなってきたな。理解が追いついていないんだろう。


「さてと、そろそろいい時間だし、晩飯にしよう」

「はーい」

「え?あ?あー、はい、そうですね。うん」

「それと、明日は朝メシのあと、出掛けるから」

「魔の森ですね。わかりました」

「違うぞ」

「ではどちらに?」

「工房」

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