第十四章 昌子、亮太のいじめに失敗する
昌子が他の女子社員達と亮太をいじめる相談をしながら歩いていた。
「陽子さんはきもいとかきたないと噂を広めていると男性社員に、“陽子さんのどこがきもいのだ!どこがきたないのだ!”とこつかれたわ。」
「陽子さんは、男にブリッコして色目を使っているから男は陽子さんの味方よ。」
「そうね。男は全員陽子さんに骨抜きにされてしまったわね。」
「それだったら、全員で無視しよう。」
「それはあまり効果ないわ。陽子さんは、もともと私達女子社員とはあまり話をしないでしょう?どちらかといえば男性社員とよく話をしているわよ。」
「そうね。陽子さんは男性社員の肩や腕など体に気軽に触れているわ。先日なんか、自分の胸を男性に押しつけるようにしていたわ。恥かしくないのかしら。」などと、話に夢中になり、うっかりと不良らしき人とぶつかっしまった。
**********
不良達は、「おい、こら!どこ見て歩いているんや!」と絡まれた。
女子社員達は、「ごめんなさい、話に夢中になっていたので。」と必死に謝った。
不良達は、「ごめんで済むか!今晩一晩、俺達と付き合ってくれたら勘弁してやってもいいぜ。」とニヤニヤしていた。
そこへ、同僚の男性社員が偶然通りかかったので助けを求めた。
「おい、やる気か?」と胸倉を掴まれて怯えていた。
そこへ、亮太の弟子の翔子が偶然通りかかった。
翔子は、オリンピックを前に不良達と争って怪我したくありませんでしたが、不良に絡まれている女性を見捨てたと、変な噂が流れても困るので止めに入った。
翔子は、「ちょっと、やめなさいよ。」と声かけした。
不良達は、翔子がサングラスをしていたのでオリンピック選手だとは気付かずに、女一人だったので油断して一人が、「なんだと、このガキ!」と翔子に殴りかかった。
翔子が柔道技で投げると他の不良達も、「やる気か!」と同時に翔子に襲いかかった。
同時に襲われると、さすがの翔子も苦戦していた。
**********
そこへ亮太が通りかかり、「何、じゃれあっているの?」と笑った。
昌子は、「不良を逆なでしないで!ブリッコはひっこんでいて!」と不良達を怒らせて状況が悪くなったと焦っていた。
不良達は、「じゃれあっているだと!」と亮太に向かってきた。
亮太は、「闘犬って知っていますか?吠えた犬が負けなのよ。人間も同じで、大声で怒鳴っているあなた方は既に負けているわよ。けがする前にしっぽ巻いて帰りなさいね。」と笑った。
不良達は、「しっぽ巻くだと!頭きた!貴様ぶっ殺してやる!」とナイフを取り出して亮太に襲いかかったが、亮太は全員倒した。
残るはリーダー格の不良一人だけでした。
翔子は、「コーチ、ありがとうございました。」と矢張り亮太には敵わないと御礼した。
亮太は、「こんなのに苦戦しているようだと、金メダルは夢物語ね。」ともっと修業するように促した。
リーダー格の不良は、亮太と翔子に挟まれて、「コーチだ?金メダルだ?貴様、何者だ!」と亮太の強さに驚いている様子でした。
**********
そこへ泉が来て、「やっちゃったわね。この娘、柔道三段、空手四段よ。オリンピック選手にも選ばれたけれども辞退したから、松木翔子のコーチをしているのよ。この娘が手加減してくれてよかったわね。でなかったら、あなたがた全員骨折しているわよ。どうするの?この娘が本気だせば、骨の二~三本は折れるわよ。」と睨んだ。
翔子がサングラスを外すと不良達は、「お前は柔道オリンピック選手の松木じゃないか。お前がその謎のコーチか!」とリーダー格の不良は仲間を連れて慌てて逃げ帰った。
女子社員の大川麻里は、「えっ?芹沢さん、オリンピック選手だったの?何故辞退したの?もったいないわね。」と亮太に感心していたので昌子は不満そうでした。
翔子が、「泉さんは知っているようですが、私も何故陽子さんがオリンピックを辞退したのか知らないわ。おかげで私がオリンピック選手に選出されたのよ。だって、私は陽子さんには全く敵わないから。ですから、私からお願いしてコーチを引きうけてもらったのよ。」と説明した。
全員泉に注目したその視線を感じて、「まあまあ、細かい事はどうでもいいじゃないの。帰ろう、陽子ちゃん。」と亮太がオリンピックを辞退した話題になりそうだったので亮太の腕を引っ張った。
麻里は、「陽子さん、熊川先輩と同じ方向なの?」と亮太の事に関心を持った様子でした。
泉は、「私達、ルームシェアーしているのよ。陽子ちゃんは同居人兼私の用心棒よ。」と亮太と帰った。
**********
翌日から、課内での亮太の人気があがり、昌子が亮太を虐める相談をしても、「相手はオリンピック選手より強いのよ。松木翔子選手が全く敵わないと言っていたでしょう?私達には敵わないわよ。」と誰も乗ってきませんでした。
昌子は、「普段はただのブリッコじゃないの!」と騙されないように説得していた。
麻里は、「それはそうかもしれないけれども、不良達数人を簡単に撃退できるのよ。」と亮太をいじめる社員はいませんでした。
麻里達女子社員は、「昌子さんにつくより、陽子さんと仲良くしたほうがよさそうね。」と亮太と仲良くしだしたので、亮太をよく思っていない昌子は一人浮いていた。
今までは、亮太が一人浮いていたが、今は昌子が一人浮いている様子でした。
麻里達女子社員は亮太の周りに集まり、「陽子さん、あれだけ強いのに昔からブリッコなの?」と亮太の事を知りたそうでした。
亮太は、「私、ブリッコじゃないわよ。泉が皆怖がるからブリッコしろと五月蠅いんだ。それで、あんなチャラチャラした服を、泉に無理矢理着せられたのよ。」とそれ以降、亮太はブリッコしなくなった。
**********
女子社員達は、「今度、松木選手を紹介して。」とオリンピック選手に興味がある様子でした。
亮太は、「翔子は練習で忙しいから無理だと思うわよ。でも、私と練習している様子を見たいのだったら翔子と相談するわ。」と数人から依頼されたので断り切れずに妥協点を提案した。
翌日亮太は女子社員達に、翔子が練習している様子の見学が許可された事を説明した。
会社が休みの日時を伝え人数確認すると、女子社員だけではなく男子社員や課長、部長、他部署の社員まで希望して大人数になった。
練習見学当日、社員達は亮太が、「相手の目配りや微妙な手足の動きをよく見て今から何をしようとしているのかわかるようになりなさい!何しているの!ヨロヨロしているじゃないの!もっと脇を閉めて、しっかりしなさい!」と指導している様子を見ていた。
社員達は、「噂には聞いていたが、松木選手は、陽子さんに全く敵わないな。先ほどから、数回一本負けしている。陽子さんがオリンピックに出場すれば金メダル確実なのに何故出場しないのだろう。」と噂していた。
麻里は、「何か理由があるらしいわ。熊川先輩は知っているらしいわよ。私が陽子さんに聞いても、“オリンピックに興味がないだけよ。”と誤魔化されたわ。あなた、熊川先輩と同じ部署でしょう?熊川先輩に聞いてみてよ。」と亮太がオリンピクを辞退した理由に興味がある様子でした。
その社員は泉に確認して麻里のところへ戻ってきた。
麻里が、「どうでしたか?」と期待して確認した。
「個人情報になるので私からは喋れないわ。陽子さんに直接聞きなさいよ。と教えて貰えなかったわ。」とションボリしていた。
麻里は、「その言い方は、オリンピックに興味がないだけではなく何か理由があり、その理由を知っていそうね。」と呟いた。
**********
翌日亮太は、「陽子ちゃん、ブリッコなのに柔道が強いですね。そういえば最近ブリッコしてないですね。」と男子社員達の人気が益々あがり、昌子はますます不愉快になっている様子でした。
ブリッコしなくても男性社員の目がある為に女性らしくしてストレスが溜まっていた。
家に帰ると、泉の前では足を放り出すなど男を出していた。
「今までは女子大だったから良かったが、男の目があれば疲れるよ。」と家に帰るとホッとしている様子でした。
泉は、「それじゃ、化粧品会社など、女子社員が多そうな会社に転職する?」と亮太の本音を聞き出そうとした。
亮太は、「いや、女性の事を相談できる、泉がいるこの会社にいるよ。」と泉の近くにいたい様子でした。
泉は、「これが新しいミッションよ。頑張ってね。」と笑った。
次回投稿予定日は、4月8日を予定しています。