第二十三章 亮太人命救助で表彰される
その後、亮太は、休みの日には泉とあかりと良美と啓子の五人で、テーマパークに行ったり、食事したりして楽しんでいた。
勿論、亮太の代金は良美が支払っていた。
その様子を見て啓子が、「何故陽子さんの代金を、良美さんが支払っているの?」と不思議そうでした。
啓子は、亮太が昔男だったと知らないと聞いていた良美は、「陽子さんは、私の命の恩人なの。外見ではわかりませんが、私の不注意で陽子さんに大変な迷惑をかけてしまったのよ。普通なら数千万か数億倍賞しなければいけないような事なのよ。私はお金で解決するのは気が進まないから、一生かけて、私が陽子さんに償う事にしたのよ。」と説明した。
夏休みは休みを合わせて、五人で軽井沢に避暑に出かける事にした。
泊まりなので荷物が多く、亮太と泉の車に分乗する事にした。
亮太は荷物をカバンに詰めるのは面倒なので、ダンボール箱数個に入れて、ダンボール箱に、着替えなどと書いて、車のトランクに入れた。
泉は、「亮太はスピード狂だから、私が先頭で、私の車を追いこさないでね。」と亮太にも安全運転させようとしていた。
あかりは、啓子がトイレに行っていたので、「それは男性だった頃の事でしょう?女性になってから少しは落ち着いたでしょう。」と大丈夫だと信じている様子でした。
泉は、「そんな事ないわよ。通勤の時だって結構スピード出しているわよ。」と女性になってもスピード狂だと説明した。
亮太は、「俺が事故る時はバイクだと思っていたが、まさか可愛子ちゃんを助けるために事故るとはな。女子大時代にバイクの免許も取ったし、またバイクで走るか。」とバイク好きだと自負していた。
あかりが、「そういえば、教習所に通っていたわよね。」と当時の事を思い出していた。
泉は、「ちょっと待ってよ。私をよくバイクに乗せてくれたわよね。バイクの事故に私を巻き込むつもりだったの?」と不愉快そうでした。
亮太は、「泉を乗せている時は安全運転・・」と泉を宥めようとしていた。
泉は、「は~?安全運転?あれのどこが安全運転なのよ。私、何度もバイクから振り落とされそうになったわよ。」と憤慨していた。
あかりが、「二人とも落ち着いて。陽子さん、みんなあなたを援助しているのよ。少しは我慢したほうがいいと思うわよ。今、泉さんに手を引かれると生理の処理など色々と困るでしょう。」と二人の間に入った。
亮太は、「わかったよ。」と泉やあかりには頭があがらない様子でした。
良美が、「亮太さんをいじめないで。泉さんが手を引くのだったら、生理の処理など女性の部分は、私が全面的に援助するわ。亮太さん、何があっても私は亮太さんの味方ですから。」と亮太の腕にすがりついた。
良美のそんな様子をみて皆黙った。
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旅行当日、二時間をメドに、サービスエリアで運転を交代して、夕方、中軽井沢のペンションに到着した。
軽井沢では、鬼押し出しなどの観光名所やテーマパークなどで楽しみ、各種体験にも挑戦して無事に旅行も終わった。
ある日、あかりが、「今度は古都京都に行こうよ。」と提案した。
亮太が、「かたぶつのあかりらしい発想だな。京都のどこが面白いんだ。寺ばかりじゃないか。歴史の勉強でもするのか?」と反対した。
泉が、「歴史のロマンよ。本当に亮太は鈍感ね。」とあかりに賛成した。
勿論、良美は亮太に賛成したので、啓子が来てから確認すると、啓子もあかりに賛成して、多数決で次回の連休に泊まりで京都旅行する事にした。
京都には新幹線で移動する意見もあったが、京都での足がなく荷物もある為に、車二台に分乗して移動する事にした。
その夜、亮太は、「何で女は、寺などに興味があるのだ?」と不愉快そうでした。
泉が、「女って、亮太も今は女なのよ。どうせ亮太は一銭もいらないんだから良いじゃないの。」と亮太はまだ女性になりきっていないと感じていた。
亮太は、「なんだ?泉、焼いているのか?」と笑っていた。
泉は、「そんなんじゃないわよ。風呂に入ってくる。」と逃げた。
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京都では亮太が、「やはり寺ばかりじゃないか。」と不満そうでした。
亮太は、「京都は道路が碁盤の目のようになっていてわかりやすい。バイクを借りてきて、走ろうぜ。」と大型バイクを借りてきた。
バイクと車で観光していると、女性の悲鳴が聞こえた。
駆け付けると、二人組の男性に女子高生が誘拐されようとしていた。
女子高生が、「お父さん、助けて!」と近くにいた父親に助けを求めた。
父親は、「愛美!」と駆け寄ったが間に合わずに誘拐された。
亮太が発進準備をしていた為に、泉が、「お父さん、亮太のバイクに乗って!」と父親をバイクの後部座席に乗せて追跡した。
父親はバイクの後部座席で、左腕を亮太の胴体に回して、右手で携帯を操作して、一緒に来ていた警察官である母親の広美に、「愛美がたった今誘拐された。今バイクの後部座席に乗せてもらって追跡している。場所は、俺の携帯をGPS機能で検索して、近くにいるパトカーに連絡して!」と現状説明した。
泉が通話内容から母親に気付いて、「お母さんですか?今、亮太がバイクの後部座席に御主人を乗せて娘さんを誘拐した車を追跡しています。私の車に乗って!」と亮太の現在位置を、携帯のGPS機能で検索して、セドリックで追跡した。
母親は車の中から携帯で、「緒方一課長、高木です。たった今、娘が誘拐されました。現在追跡中です。応援お願いします。」と現在位置とともに、上司に報告した。
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やがて車で追跡中の母親のもとへ、「誘拐犯を取り押さえ、娘さんを無事救出した。犯人は、魅力的な女子高生がいたのでレイプしようとしたらしい。顔を見られている為に、その後殺害しようとしていたらしい。」と連絡があった。
現場に到着した母親は、警察官として亮太を表彰したいと申し出た。
氏名を聞かれた亮太は、秋山陽子と名乗った為に、母親は、「えっ!?陽子?女性ですか?確かに女性の声ですね。」と父親を睨んだ。
亮太がヘルメットを外すと、可愛い女性でした。
母親が、「こんなかわいい女性に抱きついていたの?」と憤慨していた。
父親は、「一緒にいた女性が亮太と呼んでいたので、てっきり男性だと思っていました。」と戸惑っていた。
母親は、「ええ、確かに私も亮太と聞いたわ。なぜなの?」と亮太と呼んだ泉に確認した。
泉が、私が亮太と呼んだので、問題になったと責任を感じて、「陽子ちゃんは、男っぽいところがあるので、あだ名で亮太と呼んでいました。」とその場を収めようとした。
母親は、「しかし、抱きつけば男性か女性かわかるわよね。女性だと気付いても、そのまま抱きついていたの?」と不満そうでした。
父親は、「ライダーが男性か女性かより、愛美の方が大事だ。そんな事を言っているから、京都府警の鬼軍曹だと呼ばれるんだ。」と不愉快そうでした。
泉が、「陽子ちゃんの運転は荒っぽくて、しっかりと抱きつかないと振り落とされるからよね。私も何度も振り落とされそうになったわよ。」と母親に落ちつくように説得した。
誘拐から救出された愛美が、「そのおかげで、私が無事救出されたので大目にみてあげて。」と口添えして、なんとか母親も落ちついた。
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翌日亮太は表彰された。その後、亮太は助けた少女愛美と雑談していると、京都には、お寺以外にも色々あると話をしていた。
表彰後亮太は、「先ほど愛美さんから聞いたが、京都には四国四十八箇所めぐりのミニチュア版があるらしい。二時間もあれば充分まわれるらしい。迷わなければ一時間もかからないそうだ。場所は、仁和寺にスタート地点があるらしい。仁和寺で聞けばわかるそうだ。午後からそこに行こう。」と五人で行った。
その後、亮太は、「泉、十円玉持っているか?」と聞いた。
泉は、「持っているけど何?」と亮太が何をしようとしているか理解できませんでした。
亮太は、「十円玉の裏に、お寺が描かれているだろう。京都市の近くの宇治市に、その寺があるらしい。」と愛美から聞いた事を、伝えた。
泉は、「亮太、これ裏じゃなく表よ。でも一度本物を見てみたいわね。」と興味がありそうでした。
皆も一度見てみたいと思っていて、全員で宇治市の平等院に行った。
始めてみる十円玉に描かれている寺の本物を見て感激していた。
翌日、ホテルで朝食をとり京都を離れた。
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家に帰って、秋山官房長官に人命救助で表彰された事を報告すると、「その話はマスコミから聞きました。私も鼻が高いよ。よくやった。」と喜んでいた。
母親は、「誘拐犯を追跡したと聞いたわよ。今回は事無きを得ましたが、今後危険な事はしないでね。」と亮太の事を心配していた。
秋山官房長官は、「何もしなければ、私の娘が被害者を見殺しにしたと噂が流れて、私の政治生命は終わるだろう。」と妻の発言に不愉快そうでした。
そんな中、秋山官房長官に電話があり、しばらく席を外した。
その後戻ってきて、「政治家にはパーティーなど色々と付き合いがあり、そのパーティーで、人命救助で表彰された娘さんを紹介してほしいと依頼されました。陽子さん、迷惑でなかったら次回のパーティーに私と一緒に出席して頂けませんか?」と依頼された。
亮太は、「そんなパーティーに出席した事もないしドレスも持ってない。チンチクリンな格好で出席するとお父様に迷惑をかけてしまうわ。」とやんわりと断った。
秋山官房長官は、「ドレスはすみれのドレスがあります。体はすみれの体だから、サイズは問題ないと思います。その他のすみれの服も、サイズは合うと思いますので、よかったら使って下さい。」とパーティーに出席するように依頼した。
政男と治子は、「ほら、陽子さんの服を取り上げなくて良かったでしょう。」と内緒話をしていた。
結局亮太は、パーティーに出席する事になり、当日有給休暇を取得して、パーティー前に幸枝と美容院に行き、髪をセットしてパーティーに出席した。
亮太はどんな女性がもてるのか知っていた為に、若い政治家数人に言い寄られた。
秋山官房長官も、是非息子の嫁にと数人から依頼された。
帰宅後秋山官房長官から話を聞いた亮太は、「私は男性と結婚する気になれません。事実上、泉と結婚しているようなものです。友達としてならお会いしてもいいですよ。」と返答した。
泉が、「結婚する気もないのに、男心をくすぐるような事をしたんじゃないの?亮太は男心を知りつくしているから。」と呆れていた。
亮太は、「別にそんな気はなかったが、お父様に恥をかかせないように精一杯頑張った結果、そうなってしまったのよ。」と今後どうするか困っていた。
次回投稿予定日は、5月13日を予定しています。