狗と傀儡、道化の話
「――たまらなく殺したい貌だ。
髪が。服装が。目が。口が。頬が。
靴が。爪が。首飾りが。笑顔が。
憎いしうざいしきったねぇ。
道化に媚びて着飾ったその愛想笑いは醜いな。
誰に向かって笑ってるんだ?
あぁ、反吐が出る。
声に出して泣いてみろ。
俺が厭ならそういえよ。
道化が好きならそういえよ。
どちらでもないなら、お前に心はもうねぇな。
孤毒に侵された空っぽの傀儡。
愛に飢えた、意図の切れた操り人形だな。
今日こそ話をつけさせてもらうぞ。
――八時にいつもの場所で待ってる」
「――私が嫌いなの。
私が悪い自覚はあるんだよ。
でも満たされたい私も居るんだよ。
離れていて欲しくない。
孤独が怖い。
でも貴方は気づかない。
だから道化に溺れたの。
まともじゃない。
だまされている。
偽りの愛だと言うことも。
分かってる。
それでも私は笑ってた。
だって嫌われたくないもの。
赤い下着を着て、口紅で彩って。
ネイルで噛んだ爪を隠す。
甘い香水、高いヒール。
ダイヤの首飾りを身に着けた。
――八時半に家を出た」
「もう会わないって言ってたよね。
でも、もう戻れないね。
いいよ、おいで。
気づいてるよ。
孤独が怖いんだよね。
君は何も悪くないさ。
人は空虚なものだ、仕方ない。
君が満たされないなら、僕が満たしてあげるよ。
大丈夫、優しくするからさ。
だからほら笑って。
……笑いなよ。
笑えって言ってるだろ、おい?
……そう。
君にはその笑顔がよく似合うからさ。
――じゃあ九時にホテルで待ってるよw」