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「二度の敗北」 其の弐

 「二度の敗北」 其の弐


 天文十九年 九月末


 村上義清・高梨政頼の連合軍が戸石城に駆けつけた事を受け、武田晴信は撤退を決意、戸石城より急ぎ兵を引き上げる決断を下す。


 しかし、撤退の決断に至るまでに時間をかけすぎた。


 「武田御大将晴信が首、義清(われ)頂戴致す!!」


 北信濃の雄・村上義清、反旗を翻した寺尾氏等を攻めた後に反転、怒濤の勢いで戸石城の後詰めに参上する。


 迫る村上義清は鬼神の様、それを見て甦る恐怖が武田晴信に再び敗北(こうたい)の二文字を植えつけた。


 戦意を失いつつある晴信を守り、武田勢を退ける為、殿(しんがり)の役目を果たすべく軍師・山本勘助は鬼神の元へ立ち向かう。


 「勘助ぇーーーーー!!」


 晴信の叫びは、戦場(いくさば)の轟音に混じりかき消される。


 それでも勘助の耳に、晴信の叫びは届いていた。


 「御館様!!御逃げ下され!!」


 晴信の脳裏に、板垣・甘利の武田両雄を失った傷みが襲う。


 山本勘助は少ない手勢を従え、村上義清と対峙した。


 勘助の計らいで僅かに前線を離脱した晴信、依然油断できぬ状況に変わないが、ここで横田備中守が戸石城攻めの失態を晴らすべく郡内衆の渡辺出雲守と武田御跡衆(殿軍)を引き連れ反転、晴信と武田軍を完全撤退させるべく、死すに惜しき山本勘助への助太刀、村上義清率いる鬼神の軍勢に立ち向かう。


 既に命散る、覚悟を決めて。


 晴信に別れを告げた。






 「北信濃の猛将を御相手致せる事、この上無い!!武士(もののふ)の誉れ為り!!」


 武田御跡衆の突撃、九死に一生を得て首に手をあて己がまだ生きている事を確かめた勘助、横田備中守の渾身の叫びに我を取り戻す。


 「横田殿!!」

 

 勘助の呼び掛けに


 「山本殿!!御主は御館様に···武田家に無くてはならぬ軍師(おとこ)!!戸石城を···村上を必ずや果たして下され!!何卒、御頼み致す···ここは某の命を以て生きられよ山本勘助殿!!」


 応え、「今生の別れ!!山本殿を御館様の元へ御送り致せ!!」


 横田高松は勘助に最期を告げた。


 涙で溢れる片眼は前もろくに見えぬ状態、己の無力を嘆きボロボロの体を押し出し、横田隊の騎兵に連れられ勘助は村上義清の元より急ぎ退く。


 暫くして戦場の轟音に負けじと木霊する一人の武将(おとこ)の怒号。


 やがて、その怒号は勘助の耳にも届いた。


 「横田備中守高松が首、討ち取ったーーー!!!」


 戸石城の戦いにおいて、武田足軽大将・横田備中守高松(よこたびっちゅうかみたかとし)、討死。


 


 



 


 



 


 


 







 



 


 




 


 


 



 

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