表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/101

「義清の覚悟」 其の参

 「義清の覚悟」 其の参


 「村上殿の申したき事、あい、わかった。然れど、斯様に上手く事が進むのか?」


 「上手くいかねばそこまで。戦に敗れたと為れば、義清(わし)は全てを失うであろう。相手は武田!義清(わし)は全霊を以て挑むのみ!何卒、御頼み申す!」


 「他ならぬ村上殿の頼み、政頼(わし)は応え候。今の村上殿、噂に聞く鬼神の顔をしておられる!武田を前に北信濃の猛将が再び立ち上がるのだな!」


 「············。」


 越後よりの帰り道、義清は和睦を結んだ高梨政頼の元を訪れるべく、信濃国·高井群·中野·高梨氏の館に足を運んだ。


 そこで両者は、家臣誰一人も通さぬ密会の如く話を交わす。


 長尾景虎の命を受け、既に出陣の用意を整えていた高梨政頼。


 物々しく殺気立つ屋敷内、皆が険しい表情の中、短い対談を済ませた義清は高梨家へ嫁いだ娘に顔を出し募る会話を程々に終えると高梨氏の館を後にした。


 そして自身の城、葛尾城に向け進路をとるがその足取りは何時もに無くゆっくりとした速度で進む。


 再び、義清が葛尾城に戻ったのは天文十九年の八月も終わりに近づこう時であった。


 城に戻った義清一向、留守を任された清野信秀が出迎える。


 「良き土産話じゃ!越後での拝謁、長尾景虎殿に仕える許しをもろうた!此れよりは、越後が村上家(われら)に味方して下さる!武田との戦、大いに致すが良いとの事じゃ!」


 上機嫌で話す義清であったが、それを聞いて清野信秀は緊迫した表情を崩さない。


 「村上義清様(おやかたさま)、おめでとう御座います。然れど、遅き御帰りに·····。恐れながら、武田は筑摩を攻め既に松本平を制圧致したとの事!次に狙うは小県に他なりませぬ!」


 武田の動きを報せる清野信秀、


 「武田との戦、防衛となる城·····。」


 そこで言葉を詰まらせた。


 「砥石城。砥石城を落とせば、北信濃への道が開ける。武田が攻め落とすは必然じゃ!」


 最後に語尾を強め、義清が言い放つ。


 だがこの時、何時もなら怒りを露にして、「武田を迎え討つ!」と下知を飛ばす義清が冷静に、「急ぎ出陣の支度を致せ!」とだけ述べた事に家臣逹が驚きを隠せぬ様子であった。


 義清の留守の間、念を押し機転を利かせて清野信秀が皆に出陣の支度を済ませていたが、義清はさらに万全の準備を済ませるようにと告げる。


 間もなく砥石城救援の為、義清が動きだすと皆が思う、それでも義清は動かずにいた。


 この頃、砥石城では武田の偵察が頻繁になり、いつ攻め寄せるのかと緊迫した状況が続く。


 武田、村上が中々動かずにいる最中、思わぬ報せが義清の元に届けられた。


 「申し上げます!火急の報せ!御味方、高梨政頼殿の挙兵!然れど、反旗を掲げた御様子!我等の城を攻めているとの事に御座います!」


 「何と·····誠か!!!!!」


 その場にいる者逹が驚き声を揃えて叫ぶ中、


 「高梨勢を迎え討つ!出陣じゃ!!」


 報せを受けて立ち上がる義清、出陣の下知を飛ばした。


 

 



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ