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「武田の反撃」 真田幸隆の賭け

 「武田の反撃」 真田幸隆の賭け


 「この書状を御館様の元に!道中、小笠原勢·西方衆と相見(あいまみ)える事あらば逃げ仰せ!捕まる事あらば火を放ち自害致せ!非情を任す事、誠、済まぬ!今は武田を勝す時!我が真田の為にも頼む!御館様は信濃と甲斐の国境“大井森”に着陣していよう!武田の陣へ赴き、御館様に御取次願わねば山本勘助という男を頼れ!“命知らずの軍師(おとこ)”と申せば伝わるであろう!もう一つが勘助宛の書状じゃ!其方(そなた)にこれを託す!」


 武田の知将·真田幸隆は信頼おける一人の家臣に二枚の書状を託した。


 『 山本勘助 殿 』   『 武田晴信 様 』


 「幸隆(わし)は為すべき事がある故行けぬ。これに、滋野一族海野家より引き継いだ真田家の家紋“六連銭”を(したた)めた。六連銭は真田家の御守、見栄え悪いがこの六連銭(おまもり)を懐に秘め御館様の元へ参れ!頼む!」


 書状と共に簡素な布切れに認めた“六連銭”を渡す幸隆。


 「六連銭授かるは真田家に仕える者として何よりの誉れ!(あるじ)の頼みに応えるが家臣(わたし)の務め!承知仕(しょうちつかまつ)った。命に代え、武田晴信様の元に書状を届けまする!」


 幸隆に応える家臣、そして武田晴信の元へ急ぐ。

 

 「塩尻峠に陣営を構えておったか!」


 額の汗を拭い、呟く幸隆。


 真田幸隆と相木市兵衛等、小笠原長時の居所を掴む。


 小笠原勢の陣営を警戒しながら偵察した幸隆、七月十五日、晴信が甲府を立ち進軍速度を遅め大井森に着陣した頃であった。


 翌 七月十六日


 「真田殿!誠を申すか!」


 驚く相木市兵衛。


 「誠じゃ!百姓の身形に扮し、酒を土産に小笠原勢に近づく!狙いは油断!違えても暴れてはならん!小笠原勢を酒で酔わせ骨抜き致すのが狙い!」


 真田幸隆、百姓に扮し酒を土産に小笠原勢の陣へ紛れる策を持ち出す。


 「市兵衛(わし)に酒の手配と百姓の身形を任したはその為か!百姓に化け皆で祝杯の酒かと思うたぞ!」


 真田幸隆、小笠原勢の居所を探すと共に、酒と百姓の身形の調達を相木市兵衛等に任せていた。


 「相木殿、騙して済まん!この暑さじゃ、喉を潤す酒を(なび)かせば寄ってこようぞ!小笠原家臣·仁科盛能という武将(おとこ)が離反の意を示しておる!武田に靡かせこの武将(おとこ)を戦線より離脱(はな)し、小笠原勢の兵力を削ぐ事も狙い!幸隆(わし)危険(いのちがけ)な賭け(策)じゃ!」


 賭けと言い放ち、自身の策を述べる幸隆。


 「然れど、小笠原に素性見抜かれては一大事。我が武田勢も危うくなるぞ。危険な賭けよ。真田殿、貴殿とは同じ信濃先方衆。御館様の命もあり貴殿には従う。······勘助が命知らずの軍師(おとこ)なら、御主は命を省みぬ知将(おとこ)じゃ。御主は知将か愚将か、市兵衛(わし)にはわからん。」


 幸隆の策に危険を唱える相木市兵衛。


 「相木殿の申す通り素性見抜かれては元も無い。小笠原勢の油断誘う為、男共ばかりでは花が無い。女手もあった方がよいであろう。真田忍(わがしのび)、“菖蒲(あやめ)”じゃ。菖蒲は真田の忍、然れど男勝りな見上げた性分、“生きる知恵”を持っておる。幸隆(わし)が見込んだ良き娘じゃ!のう菖蒲!相木殿に顔を見せてやれ!」


 幸隆に同行していた家臣の一人が、前に出た。


 見事な男装、それを解き素性を見せれば歳はわからぬが小柄で瞳の綺麗な若い娘。


 「相木様、御初に御目にかかります。真田様の忍、菖蒲(あやめ)に御座います。村上に追われ命無くし逃げ惑う所、私は真田様に命を拾われた。真田様は命の恩人、生きる(村上を倒す)為、私が望み忍に育て頂いたのです。この御恩忘れず。真田様の元に仕えるが、私の生き甲斐で御座います。」


 幸隆と市兵衛を前に、姿勢下げ片膝地につけ挨拶する菖蒲。




 ーーー 天文十年(1541年)五月 海野平合戦の折、村上義清·諏訪頼重の小県郡侵攻、これに対抗すべく滋野一族·海野棟綱(うんのむねつな)に従い戦った真田幸隆。


 しかし、村上義清の猛攻に滋野一族は敗退した。


 戦禍に呑まれた小県郡、村上勢の侵攻に犠牲となった家族、命さながら追われる身、一人となった菖蒲は鬼神の様で迫りくる村上義清を恐れず憎む。


 一人、村上義清に立ち向かう。と、


 「そこの娘!何をしておる!逃げよ!相手、鬼神(むらかみ)為り!勝てぬ!逃げるのだ!」


 傷負いながら真田幸隆、目の前で村上義清に立ち向かう菖蒲を見て、走り近づき力ずくで抑えつけた。


 「ぐぅ!!!何をするか、放せ!!!あの武将(おとこ)に皆を殺された!!!私はあの武将(おとこ)と刺し違える!!!」


 幸隆に抑えつけられるも、大いに暴れる菖蒲。


 「為らぬ!!!娘、(こら)えよ!!!今の御主は怒りに身を任すのみ!!!怒りでは鬼神(むらかみ)に勝てぬ!!!無駄死に致すのみ!!!」


 幸隆、必死の説得試みる。


 「黙れ!!!み··み····な、皆を··殺された!!!命など··いら···ん!!!あの武将(おとこ)を討つ!!!放せ!!!」


 説得聞き入れず激しく暴れる菖蒲、幸隆は力の限り抑えた。


 「為らぬ!!!! 娘、堪えよ!!!! 幸隆(わし)も破れ、多くを失った!!!! 然れど、今は堪えるのだ!!!! 御主の仇、幸隆(わし)が必ずや討つ!!!! 村上義清は(いず)れこの真田幸隆が破る!!! 幸隆(わし)に仕え、時を待て!!!! 己に負けず強く生きよ!!!! 御主の強き瞳、悲願を成す瞳に違い無い!!!! 娘、済まぬ!!!!」


 幸隆、片手で素早く刀抜き暴れる菖蒲の首筋を峰打ち、気絶させる。


 「さ··、さな··だ···ゆ、き··た···か·····。」


 意識失う菖蒲、娘を抱え小県より村上勢の猛攻避け妻子家臣と共に決死の脱出を計る真田幸隆。


 追われる生活ながら、真田家の手厚い看病に目を覚ます菖蒲。


 菖蒲という名、幸隆が命名した。


 合戦頃の五月に咲いた花、“あやめ”別名を“しょうぶ”。


 二つの意味を込めて、名は無いと申す娘に“菖蒲”と名付ける。


 当初、心開かぬ菖蒲であったが失い故郷を追われながらも好機を待ち望み、耐え忍び懸命に生きる真田家の生き方に心を開く。


 やがて、真田家と共に生きる事を誓う菖蒲。


 恩に報いる為、忍の生き方を望み、小県郡(さなだのさと)の奪還及び村上義清を破る時を夢見て真田家と共に歩んでいた。 ーーー




 「真田殿の忍、菖蒲殿か!村上義清に立ち向かうとは、その意気見事!然れど男と思うておったわ!ハハ!小笠原勢相手に心強い見方じゃ!瞳が美しい!危険であるがわかった!真田殿の策に従うわ!」


 相木市兵衛、真田幸隆の策に同調。


 百姓の身形に扮した幸隆等、峠道を進み小笠原勢と出会す時を待つ。

 

 そして、


 「怪しき奴等!!御主等、何者か!?」


 

 「武田の反撃」 小笠原長時の油断 に続きます。


 



 


 

 

 


 


 



 


 

 


 


 


 




 


 



 


 


 

 

 


 


 



 


 

 小説にアクセス頂いてありがとうございます。中々話が進まない、或いはズレていたり、上手くまとまっていない、おかしな所あったりと申し訳ありません。戦国大河好きな私が書く素人小説ですが、懸命に書いて参りますのでこれからも読んで頂けると幸いです。

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