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第三十三話 村松和樹

 待った。一時間。二時間。三時間。


 夕方になった。五時。電話の着信音。出る。


「小宮か」


 心臓も凍るような、冷たい声。


「おまえ、この電話を録音してるか?」


 まず第一に、謝ろうと思っていた。しかしいきなり質問されて頭が真っ白になり、すみませんの一言が出なかった。


「……録音は、してません」


「どうだかな。おれたちのことは、勝間田から聞いたのか?」


「……はい」


「で、どうした? 警察か弁護士に言ったか」


「いえ、誰にも言ってません」


「嘘つけ!」


 恫喝に、背すじまで痺れる。


「おれと交渉したいとは、どういう意味だ」


「あの、純の命と引き換えに、ぼくを差し出そうと」


「はあ?」


 憎々しげに唇を歪めた顔が、見えるようだった。


「なあ、小宮。おまえとは一度話したかったんだ。あとでそっちへ行くから待ってろ。ドライブでもしようぜ」


 電話が切れた。


 深夜一時まで待ったとき、チャイムが鳴った。


 ドアの外に立っていたのは、多美さんだった。


 もう二度と会えないのかな、と思っていたので、胸が詰まった。


「ごめん」


 出てきたのはそれだった。


「純のことばっかり考えて、多美さんをほったらかしちゃって。ちっとも幸せにしなかった。ぼくはこんなに幸せにしてもらったのに。ほんとにごめん」


「ばかな人」


 多美さんはそう言うと、くるっと背を向けた。


 多美さんのあとから階段を降りる。駐車場にシルバーのフィアット500。後部座席のチャイルドシートで、純が寝ているのが見えた。


「あ、純。生きてるの?」


「寝てるだけよ」


 運転席に、男の横顔がちらっと見えた。


 この人が、村松和樹――


 気がつくと、アスファルトに膝をついていた。


「ごめんなさい!」


 土下座した。


 すると運転席のドアが開き、痛いほど腕を引っ張られた。


「目立つことすんじゃねえ。早く車に乗れ!」


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