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第十二話 不吉な予告

 ミス・コケティッシュがむっつりしている。


 このごろどうも、怒りっぽくなった。デャーモンへの紹介を頼んだときもそうだった。理由を言わず、ただ怒るのだ。


 それは別にいい。ぼくは全面的に、彼女のおかげでメシが食えている。文句など言えた義理じゃない。


 でも、今回ばかりはやめてほしかった。


 女神の目の前で怒るのは。


「木村亜子。十七歳。高校二年生。アイドル志望。ダカラ?」


 不機嫌さ全開の視線を、突き刺してくる。


「依頼人なら、わたし、連れてくる。純亜は、連れてこなくてイイ」


「まあまあ」


 堅苦しいこと言わずに、そこをなんとか、と頼む。


 するとミス・コケティッシュは、


「この女はあきらめナ。とても純亜の手には負えないヨ」


 実に失礼なことを言った。


「なにを言うんだ。ぼくはこの子に、指一本触れる気はない!」


 本気で腹が立った。ぼくのピュアな想いが、どうしてミス・コケティッシュには視えないのか。


「彼女はアイドルの卵だ。それと付き合おうだなんて、そんなよこしまな、卵を割っちゃうような邪悪なことをするわけがない。ただ、彼女が将来どうなるかを、ちょこっと教えてあげてほしいって頼んでるだけだ」


 亜子ちゃんがアイドル志望だということは、ついさっき、彼女がミス・コケティッシュにした自己紹介の中で知った。でも、ぼくの目にはすでに、国民的スターになった亜子ちゃんの姿が見えていた。


「アイドル? あんなモン、地球人をパーにしようと企んだ、宇宙人の発明品サ」


「またそんな、おかしなことを」


「嘘と思うカ?」


「さっきから失礼だよ。アイドルを目指すピュアな想いを、侮辱してる」


「ナンダト!」


 ミス・コケティッシュが腕を突き出した。ぼくはSFXのように宙を飛び、背中から床に落ちた。


「純亜」


 呼吸ができず、きれいな星とUFOが頭のまわりをクルクルとまわる中で、ミス・コケティッシュの声を聞いた。


「わたし、純亜気に入ったカラ、能力使う。このイケ好かない小娘のために、貴重な能力を使う気はサラサラないネ」


「おいとまさせていただきますわ!」


 木村亜子ちゃんが帰っていく。ぼくの女神が。亜子ちゃん。亜子サマ。アコ。


 A、K、O、アコ! A、K、O、アコ!

 超絶かわいい、アコちゃん!


 羞ずかしながら告白すると、ぼくはこのとき、オウオウと声をあげて泣いた。


「コレでも飲め」


 ミス・コケティッシュがアメリカン・コーヒーをテーブルに置いた。ぼくはそれを手で払った。


「拭くのは自分でやれヨ」


「ひどいじゃないか、さっきの態度は」


「純亜を守るためサ」


「嫉妬だろ。自分より若くて美人だから」


「悪いこと言わないカラ、あれだけはやめな。ハーフだから」


「ハーフ? アメリカ人との?」


「アメ……うん、ソウヨ」


「どうしてハーフを差別するんだ。かわいそうじゃないか」


「しょせんは無理なのサ」


「無理じゃない!」


「あれと関わったらとんでもない目に遭うヨ。今まで経験したことのないような、とんでもなくヒドイ目にね」


「嘘だ! 嫉妬だ!」


「忠告したからね。モウ知らないよ」


「ぼくを研究したいんだろ。だったらひどい目に遭うところを、じっくり研究したらいいじゃないか!」


 ぼくは床にこぼれたコーヒーを拭いて、自分の部屋に行った。そしてベッドに仰向けになると、木村亜子ちゃんに、今日のことをどう謝ろうかと考えつづけた。


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