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プロローグ

 薄暗いオタク部屋に煌々(こうこう)と光るスマホ、黒色のパーカーフードを深くかぶる青年の目には黒いクマができている。



 ああ、俺はバカだ。バカだと自覚している。


 元々の俺はこんなではなかった。学力は平均以上、部活もこなし、学校生活では特に弊害も無く楽しい青春をおくっていた。しかし、

 クラスでゲームが流行りだした。俺も(いち)高校生として流行には乗っておきたいと思いゲームを始めた。最初は暇潰し程度にやっていたのがだんだんとヒートアップしてプレイ時間が増えてゆき、寝る時間までもゲームに割き始めたところ最終的に昼夜逆転。

 あっという間に立派なニートに仕上がった。

 気づいた時には既にスマホ中毒で今も沼から抜け出せずにいる。高校2年生から約1年もニート生活を送った結果、家族にも見放された。

 それでもなお、辞められないのだ。

 そんなバカで、どうしようもない俺のニート人生の血と涙の結晶が今達せられようとしている。


 アナログ時計の秒針がカチカチと24時へと向かって進む。


「5、4、3、2、1、やった………」


 俺は世界1位の人気を誇るスマホゲーム『WLF』のオンライン大会で優勝した。

 報酬は大量のレアアイテムと次のアップデートで来る新マップの先行プレイ。ランキング報酬は大会終了と同時に届くのでさっそくやる事にした。


 『クエストスタート』をタップしてデータダウンロードが始まると同時に視界がぼやけた。暗い部屋で長時間画面を見ていると目がショボショボする事もある。


 目を擦ったり、目を瞑ったりしながらリフレッシュの為に立ち上がり背伸びをして体を伸ばす。


九鬼(くき)勝也(かつや)さん、一位おめでとうございます。あなたには異世界に行く権利があります」


「…………………」

 

 目を開くとそこは清らかな風が駆け抜ける暖かい陽だまりの芝の露が煌めく平原。透き通った声で突然告げられた。

 いきなりの事で何が起きたのか分からない今さっきまで自分の部屋にいたはずだ。

 声が聞こえた方向を見ると少女がおしとやかに立っていた。


 この世の人間とは思えないほど美貌の少女。

 ━━いや、背中に天使の羽があるから人間ではなく色々な意味で本当に天使なのかもしれない。


 年齢は見た感じ俺より少し年下だろう。手を後ろで組み、平原の風に靡く(なびく)さらさらな髪、このまま成長したら俺のタイプかもしれない。


 動揺した心が少し落ち着き、目の前の美少女に尋ねた。


「異世界召喚ですか…?」


 俺の問いかけにゆっくりと(うなず)


「はい。そのような感じです」


 そして彼女は淡々と異世界について話始めたが、長いので要約しよう。


 目の前にいる美少女は俺たちの世界と異世界の平和と均衡を監視している天使。

 異世界にはやはり魔王が居て多くの人々が脅威にされされた。あまりにも殺戮が続くので天使は神様から魔王を倒すように命じられれた。

 そこで異世界人を勇者として召喚したところあっさり魔王を倒してしまったらしい。

 あまりにも平和過ぎて人口が増えすぎた為、凶悪な知能を持ったモンスターを召喚したところパワーバランスが崩れて今異世界は大変な事になっている。


と言うところだ。


 彼女が引き起こした元凶なのだから自ら負い目を得てモンスターを倒すべきなのだが、そうもいかないらしい。

 天使は間接的にしか世界に干渉をもたらしてはならないのだ。


 そんな訳で俺が行くのだが、俺を選んだ理由は「ゲームが上手いから。」という単純な理由で、どうやら異世界はゲームの世界観に近い世界らしい。

 

「言語とか初期装備ってどうなるんですか?」


「言語は異世界召喚の際に自動で脳に刻まれます。初期装備はあなたのご主人様からご用意していただけるはずです」


「ん、どういう事です?」


「異世界召喚なので勝也さんは今の身なりのまま直接異世界に行ってもらいます。しかしそれでは身分証やお金、住む場所に困りますよね?そこで私が開発したのが『ガチャマシーンを使った異世界召喚』です!」


 おしとやかな姿とは裏腹に今は少し自慢気に張りきっている。その姿がなんとも微笑ましい。


「異世界にはガチャが存在します。異世界召喚をしたら勝也さんはガチャマシーンから排出されます。ゲームで例えるならばキャラクターです。さらにガチャから排出されると同時にステータス付きの身分証が自動で発行されるので困る必要はありません」


 ごくり、なんともゲーマー心を(くすぐ)る世界観だ。ますますワクワクしてきた。

 

「そして召喚後、異世界に降り立った勝也さんの目の前に居るのはガチャで勝也さんを引き当てたご主人。いわゆるプレイヤーが立っています。その方が異世界でのあなたの家族です。お金、住む場所など全て管理、手助けしてくれるでしょう」


 なるほど、異世界にあるガチャで俺を引き当ててくれた人の家族になるのか。

 ん?でもよく考えたら…………


「ちょっと待て、それってそのご主人?に縛られた生活ってことじゃないか」


「あー……………優しい人が多いですよ。その時はその時で」


 何だこいつ、第一印象良すぎたから今はなんとも言えない心境だ。なんと言うか俺に任せておいて大雑把(おおざっぱ)すぎる。


「結局は引き運か……」


 ご主人が美少女だといいのだが現実そう上手くはいかないだろう。


 なんと言っても俺には女運とガチャ運が全くと言っていいほど無い!


 ニート生活になる前の話、学校行事で2人1組になって何かする事が多かった。

 ペア決めはくじ引きなのだが、毎回決まって"お顔立ちが大変よろしくない女子"とペアになるのであった。


 ゲームのガチャだって自分の手でガチャると爆死しかしないので愛猫の手を物理的に借りて引いていた。


 どうにもならない問題は置いておいて………


「特殊能力とかって貰えないんですか?」


 能力を貰えるのは異世界召喚の定番もの。そして俺を待つのは異世界ハッピーライフ。

 そもそも俺は任された立場だ、特殊能力の一個か二個、恩恵があっても良いのではないか。


「ありません」


 爽快にスパンと言い切られた。


 …………………ん、、、

「無いってどういう事だ?お前が俺を強制的召喚させて何もメリット無しってか?!」

━━否、異世界召喚してもらえるだけで十分のメリットだが天使には悪いが抗議して能力貰っちゃおう作戦だ。


「あ゛の゛ですねぇ。学校休んでまでゲームして社会的に死んだあなたみたいな人に異世界でやり直す権利をあげているのです。それだけで十分だとは思いませんか?私も色々と考えてやっているのです。それにあなたは元の世界より異世界の方が活躍できると見込んでの事です」


「すみません………」


 何も言い返せない。そうだったこの子は天使、世界の監視をしているとか言ってた。俺のだらしない日常もお見通しだろう。


「もういいです。さっさと行って下さい。まだあと2人送らないといけないので!」


 余地もなく巨大な魔方陣が現れ、俺の周りに光の柱が造成され暖かい光に包まれた……………!






 



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