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メイド ナーシャの日常  作者: うぃん
第一章 黒い髪のメイド
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メイドと黒猫(1)

 今日は、私の大切な彼氏を紹介します。


 彼の顔は、まるで彫刻のように整っていて、鼻筋はすっと通り、瞳は夜空の星を閉じ込めたように艶やかで、見る者の心を奪うほどに美しく、スリムな身体はしなやかで、歩くたびに毛並みが光を受けて柔らかく揺れ、そして全身を包む漆黒の毛並みは、まるで闇そのものを纏っているかのようで、そこにちょこんと揺れるかわいらしい尻尾が、彼の気品と愛らしさを絶妙に引き立てています。


 名前はクロ。そう、黒猫のクロです。


 そんなクロの姿に、私は毎日癒されています。彼が部屋の隅で丸くなって眠る姿を見ているだけで、心がふわりと軽くなるんです。まるで、世界のすべてが優しく包み込んでくれるような気がします。


 でも、黒いからクロって名づけたわけじゃないんですよ?


 ちゃんといくつか名前を候補に挙げて、彼が自分で返事をしてくれた名前を選んだんです。あのときの「にゃあ」という小さな声が、今でも耳に残っています。


 クロとの出会いは、まるで運命のいたずらのようでした。


 このお屋敷で働き始めてしばらく経った、冬の寒さが少しだけ和らぎ始めた頃。いつものように、私は日の出の少し前に目を覚ましました。窓の外には薄い霧が立ち込め、空はまだ夜の名残を残していた静かな朝。


 そのとき、ふと気配を感じてベッドの横を見たら、そこに見知らぬ黒猫がちょこんと座っていたのです。彼は怯えたように身を縮め、瞳には涙のような光が浮かび、細い身体は小刻みに震えていました。


 その姿があまりにもけなげで、私は思わず彼を抱きしめてしまいました。温もりはかすかで、でも確かにそこに命が宿っていると感じました。


 でも、私はこの屋敷のメイド。ペットを飼うなど、許されるはずがないと思っていました。


 「おうちにお帰り」


 そう言って扉を開けて外に逃がそうとしたのですが、彼は私の足元から離れようとしませんでした。まるで、ここが自分の居場所だと信じているかのように。


 仕方なく、私は彼に部屋で待っていてもらうようお願いして、仕事に向かいました。


 昼休みになり、きっとお腹が空いているだろうと、食事を少し取り分けて部屋に戻ったのですが、彼はまったく食べようとしませんでした。その姿に、私は胸が締め付けられるような不安を覚えました。


 このままでは衰弱してしまうかもしれない。そう思った私は、意を決してメイド長のマリアさんに相談しました。


 マリアさんは話を静かに聞いてくださり、「時間のあるときにお館様にお話しておくから、まずは離れにいる獣魔使いに見せに行きなさい」と言ってくださいました。


 獣魔使いとは、魔物を調教し警備にあたる専門家で、動物の生態にも詳しい方です。


 その方はクロを見るなり、驚いたように目を見開き、「これは魔物の一種だよ」と説明してくれました。


 魔物は、通常の生物とは異なり、マナを食事として生命を維持します。植物が光や水を、動物が他の生物を糧とするように、魔物はマナを取り入れて生きているのです。


 そして魔物の体内には、マナの結晶である魔石が存在します。この魔石は魔術の研究にも使われるほど貴重で、構造は非常に緻密で複雑。未だにその全容は解明されていないといいます。


 大型の魔獣は、魔石を維持するために大地から得られるマナだけでは足りず、他の生物からマナを奪うこともあるそうですが、クロのような小型の魔物なら、大地から得られるマナだけで十分に生きていけるとのことでした。


 その後、マリアさんから「そのまま飼ってもよい」とのお言葉をいただき、私はクロと一緒に大喜びしました。


 あとで知ったのですが、この屋敷には獣魔使いが常駐しており、敷地の一角には犬や猫を飼うスペースもあるため、動物を飼うことは比較的許されやすい環境だったようです。


 こうして、クロは私の素敵な彼氏として、一緒に暮らすことになったのです。


 ご飯代もいらないなんて、なんて飼い主孝行なのでしょう。


 クロ、私の愛情をご飯代わりにしてくださいね。

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