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メイド ナーシャの日常  作者: うぃん
第一章 黒い髪のメイド
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メイドと魔女と、夜を駆ける者たち(2)

「バカ猫。ほら、おきなさいよ、なに寝てるのよ」


 ……ああ、せっかく気持ちよく寝てたのに。

ナーシャの横で丸くなって、あったかい毛布のぬくもりに包まれてたのに……。


 キンキン声が耳をつんざいた。

この声を聞くだけで、背筋がゾワッとする。


 黒の魔女――あいつが出てきた。


「あなた寝る必要なんてないでしょ、ちゃんと起きて二十四時間ナーシャを護衛してなさい」


 ……いや、寝るよ? 魔物だって休むんだよ?


 僕は猫じゃない。パンサーデビルっていう、れっきとした魔獣なんだ。


 ナーシャが“クロ”って名前をくれたから、僕は彼女のしもべとして、ずっとそばにいる。

でもこの魔女は、いまだに“バカ猫”呼ばわりだ。ひどい。


 最近、ようやくわかってきた。

ナーシャと黒の魔女は、同じ身体を使ってるけど、まったくの別人だ。


 ナーシャは優しくて、あったかくて、いつも笑顔で、僕のことを撫でてくれる。

一緒にいるだけで、心が穏やかになる。


 彼女のそばにいる時間は、僕にとって宝物だ。

でも、黒の魔女は違う。冷たい笑みを浮かべて、僕のことを道具みたいに扱う。


 黒いローブに小さな杖、そして全身から溢れる魔力と黒いオーラ。あれを見ただけで、僕の毛は逆立つ。本能が「逃げろ」って叫ぶんだ。


 夜になると、魔女は空に飛んでいく。


 飛行魔術なんて、竜種くらいしか使えないはずなのに、あいつは平然と使う。

あんな小さな身体に、どうやってあれだけのマナを蓄えてるんだろう?


 そして、夜明け前には戻ってくる。

魔術で服を着替えて、何事もなかったかのようにベッドに潜り込む。


 朝になると、そこにはいつものナーシャがいる。

彼女は何も覚えてないみたいで、いつも通りメイドとして働いてる。


 これはきっと、黒の魔女が悪い魔術でナーシャに取り憑いてるんだ。


 なんて不憫なナーシャ……。僕がもっと強ければ、あんな魔女、けちょんけちょんにして、彼女を自由にしてあげられるのに。


「バカ猫……、変なことかんがえてなかった、いま」


 うわ、読まれてる。主従契約のせいで、思考まで筒抜けなんだよな……。


「かんがえていないです。僕はあなた様の忠実なるしもべです。偉大な魔女様……」


 とりあえず、へりくだっておく。命は惜しい。


「あなたと私は主従の印で結ばれてるんだから、へんなこと考えても無駄よ」


「あとぜったい私以外としゃべっちゃだめ、ナーシャにもね。もししゃべったら竜の巣に叩き込んでやるから」


 はい、しゃべりません。絶対に。


 この世界では、魔物がしゃべると魔族扱いされて、すぐに討伐対象になる。


 魔族ってのは、マナの濃い土地を奪おうとして人族を襲う連中で、昔から何度も戦争を起こしてる。でも、集落が大きくなるとマナの意思に操られてスタンピートが起きて、結局全滅する。


 そんな歴史を、何度も繰り返してるんだ。


「でもなんであんなにナーシャはもてるの? 私、声をかけられたこともないんだけど……」


 ……そりゃそうでしょ。


 出会っていきなり僕を焼いたよね?

そんな危険なオーラまとってる魔女に、誰が声かけるのさ。


「……まあいいわ、ちょっといまから害虫駆除にいくから、つきあいなさい」


 うわぁ……。まただ。

この「ちょっと」って言葉が、まったくちょっとじゃないんだよな。


 僕は全身に倦怠感を感じながら、窓から飛び出す魔女の後を追った。


 夜のエルクの街。

 

 静まり返った空を、僕たちは音もなく駆けていった。



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