ジャン・ジェイラヴ
物語はどうなっていくのか?慎重に書いていかなければならないジャンルです。
「ちょっと15分くらいそこまで行くから店を見ててくれるかい?」と流は2人組の女性客に言った。
女性客はあっけらかんとして「いいですよ〜。気を付けてくださぁ〜い」と笑いながら言った。
慎二と流は一緒に問題の謎の占い師がいる場所へと向かった。
ワン・デイから歩いて5分くらいの所に、占い師の爺さんが小さなテーブルの前に瞑想のように目を閉じて背筋を伸ばし落ち着いて座っていた。
テーブルの上には水晶の玉が怪しく光り輝いていた。占いに関する本であろうか、国語辞典並みの厚さの本が2冊重ねて置いてあった。
赤いタロットカードがテーブルの上で無造作に散らばっている。
開かれたノートには見慣れない文字が細かくページに書き込まれていた。
占い師は目をゆっくりと開けると、二人の姿に気付き鋭い一瞥を慎二に向けた。
食い入るように睨み付けるように、眉間に皺を寄せて慎二を見ていた。
「爺さん、慎二を連れてきましたよ」流はテーブルの前にある椅子に座りながら言った。慎二も椅子に腰を下ろした。
「君が慎二だね。慎二、これから私が会って話したがった理由を説明したいのだが、その前に言わなければならない事がある。私の質問には、正直に答えて欲しいんだ」占い師は低い声で言った。
流は面食らった顔をして話を聞いていた。
「昨日の声と違う気がする。おい、爺さん、一体どういうことなんだ?」と流は声を大きくして言った。
「私は爺さんではない」占い師は足元に置いてある黒いバッグから緑色のフードコートを取り出した。
占い師は着ていた黒いジャケットを脱ぐと、フードコートに着替えて頭にフードを被った。
占い師は辺りを静かに見回すと2人に手招きをして「顔を近づけろ」と言った。
占い師の深い皺の顔を見つめていると、突然、顔がグレー色に変わり始めた。
みるみるうちに占い師の顔が若返っていく。シミが1つも無くなり、シワが消えて肌の艶も善くなっていき、血色の良いハンサムで凛々しい顔をした青年が現れたのだ。
慎二と流は驚きのあまり言葉が出せないでいた。
流は目を剥き出して驚愕していた。占い師の見た目は30歳くらいの青年に見えた。
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◇◇◇◇◇◇◇
「あなたは一体、何者なんですか?」と僕は声を抑えて尋ねた。
「私の名前はジャン・ジェイラヴ。信じて欲しいのだ。魔法を使える。ある使命を持って、この世界にやって来た。慎二よ、時間がない。話の核心言う。君の力が必要なんだ。
君は魔法とは違い、ある特殊な能力を持っているんだ。まだ、その能力が目覚めていない仮眠状態だが。慎二の未知なる偉大な能力を育て磨いていけば、新しい戦術を切り開ける大きな原動力になると期待をしているんだ」
僕は『納得できない。これは担がれているんだ』と思い始めていた。
「僕は俳優です。ひょっとしたらですが、映画かドラマか、それとも舞台の依頼ですか? 新しい仕事をくれるんですか?
残念な事に2週間後に映画の撮影が始まるのです。契約上の問題もあるため、今回のお話は辞退します。有り難い事なんですが……。すみません」と僕は言い、気まずくて恐れ多い気持ちになっていた。
『せっかくのチャンスだったかもしれないのに、もったいないかな。タイミングが悪かったんだ』とすぐに後悔の念が芽生えてしまったが仕方がない。
流さんは訝しげに男を見つめていた。僕らはまだ話の意味が分からずにいて全く状況が飲み込めないでいた。
「慎二、君は救世主になる力がある。今はまだ無理だが私の国に行って、魔法の修行を積むことでレベルが上がり、更に進化するようになる。
助けて欲しいんだ。私の国、バルドギュラズ国が滅ぼされようとしているんだ。私が老人に化けているのは、敵国のジルアズバ国の殺し屋が私の命を狙っているからなんだ」
「本当の話とは到底信じられない」僕は呟くように言ってはみたが、ジャン・ジェイラヴと名乗る男の必死な顔には嘘の色が見えなかった。
僕はジャン・ジェイラヴは真実を話しているように思えてならなかった。
「慎二、すまないが俺は店に戻らなきゃならない。ここで席を外すよ。大丈夫か?」流さんは言った。
僕は黙って頷いた。流さんは駆け足で店に戻っていった。
「ジャンさん、ならば魔法の証明をしてください」僕はジャンに突っ掛かるように言った。面倒な話には関わりたくない。
ジャン・ジェイラヴは御安い御用と言うかのように頷く。通行人を指差した。僕は振り向いた。
30代くらいで髪の毛が乏しいサラリーマンが歩いていた。ジャン・ジェイラヴは何かを呟き始めた。
ジャン・ジェイラヴの瞳が青色に変わった。
「ラギラミン」と呪文のような言葉を唱えると、サラリーマンが歩いているのに1歩も前に進んでいかなかったのだ。
サラリーマンは驚いて足元を見ていた。
行き交う人は誰も気付いていないみたいだ。
「ラギラミン」と再び占い師は言うと、サラリーマンのズボンが下ろされて赤いパンツが丸見えの状態になった。
サラリーマンは慌ててズボンを履くが、ジャン・ジェイラヴは止めようとはしなかった。
繰り返しサラリーマンのズボンを下げてパンツまで脱がしていく。
サラリーマンは憤怒しながらも必死にパンツを上げて抵抗をするがズボンとパンツを一気に上げたら、今度は眼鏡が消えて無くなった。
「うわっ!!」サラリーマンの叫び声に周りの人達が一斉に振り返った。
ジャン・ジェイラヴは静かに微笑していた。
サラリーマンは走ろうとするのだが走れない。サラリーマンの顔には諦めと、ただならぬ悲壮感が漂い始めていた。
ジャン・ジェイラヴは、手のひらを地面に向けるのと同時に「ドルディファイ」と唱えた。
サラリーマンのスーツが勢いよく破れて全裸になってしまった。
「キャ〜〜!! ここに変態がいるぅ〜!」とアイスを食べている女子高生3人組が叫んだ。
サラリーマンは顔を赤くして慌てふためいた。
運悪く通りの向こうから警察官が笛を吹きながら自転車に乗ってやって来た。
「あんた、なにやっているの? 公衆の面前でさ、全裸はイカれているよ。ちょっとこれから署まで来てもらう」と警察官がサラリーマンの腕を掴んで言った。
「歩けないんですよ。眼鏡が消えたりするし。何がなんだか……」サラリーマンが言った直後だった。
ジャン・ジェイラヴがサラリーマンに向かって指を弾き乾いた音を鳴らした。
サラリーマンの破れたスーツが新品同様の元の形に戻り再び着せられたのだ。
眼鏡もかけていた。サラリーマンは完全に怯えきっていた。野次馬たちが一斉に拍手喝采を送っていた。
警察官が笛をくわえたままで唖然としていた。
ジャン・ジェイラヴはサラリーマンに向かって人差し指を向けて「ギャムワルズ」と唱えると、サラリーマンは跡形もなく忽然と消え去ってしまったのだ。
警察官が無線で連絡をし出した。
「ええーっ!! 変態が消えたぁ〜!! 何コレ!? マジで超すんごぉいんだけどぉっ!!」女子高生3人組が叫んで拍手をし出した。
通行人は落ち着きなく騒ぎ始めていた。
僕はジャン・ジェイラヴを黙って見つめていた。
「これでどうだ?」と云わんばかりにジャン・ジェイラヴは澄んだ眼差しで僕を見ていた。
僕は冷静になっていた。
「サラリーマンを一体何処へ?」と聞いた。
ジャン・ジェイラヴは肩を回していた。
「ちょっと遠くへ移動してもらったよ。ここから5キロ先にあるデパートの7階の個室トイレの中にね」と穏やかな声で言った。
僕は自分の中で何かが起ころうとしているのを強く感じていた。
ジャン・ジェイラヴに、【引けをとらない偉大な力が自分にはある】と感じていた。
身体中に自信に似た力が溢れてみなぎっていた。
つづく
ありがとうございました!




