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相身互い

ジョン・ラファロ。 500年間も生きてきたヴァンパイア。28歳の頃に何かが起こってしまい今に至っている。彼は慎二たちを助ける事になるのだろうか?ジョーカー的な存在になるのか?または、切り札として慎二たちの背後にいる最後の砦と成り立つのだろうか?



登場人物



慎二



レイン



銀次



絵莉



ジャン・ジェイラヴ



ジュリア



ジョン・ラファロ

 慎二と銀次はパワーを発揮させるためにエネルギーを準備万端にしていた。


 今までに感じた事の無いタイプの気配を持つ者の飛来を待ち構えていた。


 慎二と銀次が身を隠す木には、大きめの3匹のミヤマクワガタと、2匹のヒラタクワガタが一定の距離を保って同じ木に引っ付いていた。


 ヒラタクワガタ、ミヤマクワガタは貴重な種類のクワガタだ。

 慎二は目と鼻の先、至近距離にいる身動きしないミヤマクワガタを黙って見つめていた。


 触れたい気持ちを堪えている銀次は「あー、これは本物のミヤマだわ。マジでこれはヒラタだわ。以外に高いんだよね。ヒラタやミヤマは以外にね。以外に高いんだ」銀次は、虫籠と網があれば直ぐにでも捕まえたかったであろう、悔しそうに繰返し呟いていた。

 

 「慎二、静か過ぎやしないか?」銀次は後ろを振り返り森の奥を見ていた。


 「都会の騒音や喧騒から離れたら、音に対しての感覚が元の状態に戻って鋭敏になるんだ。無音に近い森の世界に踏み込めば、誰しも違和感を覚えるのは仕方がない事なのさ。今が正常な状態なんだよ」慎二は空を見上げたまま銀次の質問に答えていた。


 「この静けさは、耐えられないし、慣れないものがあるな」銀次は1日も早く自分の仕事や元の世界に戻るためには、今後、何が必要なのかを、頭の中で徹底的に考える事で、言い知れぬ不安と戦っていた。


 銀次は、たった数時間で自分の人生が大きく狂い出し、変わってしまった事の恐怖に震え、気分が悪くなり始めていた。


 今までは『いつかはこの世で、自分の超能力を活かしてみたいな』と単純な気持ちを持っていたのだが、いざそうなってみると、自分の超能力には限界が無いと気付いて怯え始めているし、『面倒な展開になってきたけども、結構、好奇心が強い気持ちにもなるな』というアンビバレンスな状態になっていた。


 銀次は慎二の辛い気持ちが痛いほど伝わっていた。口には出していないが、お互いに、それなりに歩いてきた人生の道が、突然、途切れてしまい、闇に消えゆく未来を黙って見つめる事しか出来ない悔しさや、焦りの中で佇んでいるのを知っていた。


 『今は困難に立ち向かう事が必要だ。逃げるような馬鹿な真似はしたくない。艶夢の街は壊滅状態で住民の多くが被災している。


 朝4時の臨時ニュースによると、亡くなった方は、1200人近くにも上るという。俺は部屋にある物を壁にぶつけまくり怒りをぶちまけた。無念で消えた命のためにも、被災者のためにもだ、やられたらやり返すの気持ちを持たなければ割りに合わない。


 魔法国の反乱が及ぼす影響が現世にも現れている。踏み込んではいけない一定の距離を先に破ったのは、奴等の方だ。魔法使いは優れた存在だ? チッ、クソ野郎。だからなんだよ? ふざけんな。人間を甘くみるな。人間の力を舐めると痛い目に合うぞ。


 俺には超能力がある。今まで押さえていたこの能力を解放させて、奴等に必ず恐ろしいものを見せ付けてやる。ロックンロールを侮るなよ。俺の店の請求書は奴等に送り付けてやる』と銀次は心の中で何度も怒鳴り散らしていた。


 銀次は持ち前のロックンロール魂で自らを勇気付けて鼓舞し続けていた。


 慎二の口元には微かに笑みが(こぼ)れていた。


 「あれか!?」慎二は100メートル程先の雲間に、黒い人影が浮かんでいるのが目に入った。


 「奴は来ないのか?」銀次も地上から20メートル程の高さに浮いたまま、辺りの様子を警戒して窺っている人影の姿を確認した。


 「一先ず姿を消す事にしよう。銀次は姿を消す事は出来るのか?」


 「ああ、御安い御用だ」銀次は両手を組んでから目を閉じると、足元から透明になって消えていった。銀次は僅か1秒で消えた。


 「やるな」慎二は感嘆の声を漏らした。


 姿を消せるというのは超能力者として一流の証であった。軍事関係者がこの能力を知れば喉から手が出るほど欲しがるだろう。


 銀次は幼い頃から、隠れんぼや鬼ごっこ等の遊びの中で、透明になる技術を自然に身に付けて使っていたようだ。


 慎二は落ち着いて口からを息を吐ききると、同じ様に一瞬で透明になった。


 「銀次、少しだけ体を浮かそう。音を立てずに森の奥の方に移動する」慎二は今の場所から、後方5メートル先の小さな岩が並んだ後ろにあるスペースに身を潜める事にした。


 慎二と銀次は並んだ小さな岩に着くと、幸運にも窪みがあって、地面に葉っぱが敷き詰められていた。

 銀次は地面に手を翳すと枯れ葉は土に溶けるようにして沈んで消えていった。


 「慎二、奴は目まぐるしく気が変動しているな。強くなったと思ったら、わざと弱くなってみたりしている。敵か味方か? どっちだと思う?」銀次は気が変動する意味が分からないでいた。


 「カモフラージュをしているようだ。僕達に波長を合わせて探っているのかもしれない」慎二は空中で静止したままでいる人影に違和感を抱き始めていた。


 「この奥にある洞窟までの距離は?」銀次は最初に薄暗い森の奥を一気に突破して洞窟に乗り込んだ方が早いと考えていたが、突然の邪魔者が現れた事で、一旦、冷静になって戦略的な考え方をしなければならないと改めていた。


 「だいたい50メートル位だと思う」慎二は以前、囁きの森のマップを見ていた事があった。


 囁きの森は、慎二たちがいる場所から3キロメートル程、逆の方角にキャンプ場が出来る場所があって、キャンピングカーを止められる駐車場、キャンプファイアやテントを張って寝泊まり出来る開けた場所があるのも知っていた。


 万が一のために、キャンプ場にグループで参加している者や、親子連れがいた場合などを考慮して、絶対に人的被害だけは及ぼさないように、気を付けなければならない。


 慎二たちがいる所は、熊も出かねないほど、緑豊かで鬱蒼と繁った草木がある深い場所だった。


 「銀次、こっち来るぞ」人影は勢いよく慎二たちの方に向かってきた。


 「透明な俺たちに気付くのかな? 見つけられたら大したもんだよな」銀次は一種の賭けのような心境になっていた。


 「さあ、それはどうだろうかな?」慎二は悠然と構えて未確認的な人影の真意を試すように様子を見守っていた。


 人影は素早い動きで飛行すると、慎二たちから10メートル程近くまで来た所で、ゆっくりと地上に降り立った。


 男は、まさに異様な佇まいだった。

 肩まで掛かる金髪、黒いロングコート、ヨレヨレのワイシャツをズボンの中には入れないで、Tシャツのように出しっぱなしにして1930年頃に活躍したシカゴブルースのギタリストが着た味わい深い背広を着ていた。


 血色のない顔と、お腹を空かせたような落ち窪んだ眼差しに痩せた頬、赤い瞳が怪しく燃えるように光っていた。


 ジョン・ラファロは自ら警戒心を解くような顔をして微笑んでいた。


 「怖がらなくていい。私は味方だよ」ジョンは腕を広げて迷うことなく慎二たちの方に歩み寄ってきた。

 「銀次、行くぞ」慎二は躊躇いもせずにジョン・ラファロの前に姿を現した。

 「おい、慎二、大丈夫なのかよー?」銀次は先手の攻撃による不意討ちを恐れて姿を現した。


 「何者だ?」慎二は体を守るように前に腕を組んでジョン・ラファロを見据えていた。


 「ジョン・ラファロだ」ジョンは握手を求めて慎二に差し出したのだが、慎二はそれを無視してジョンの話の続きを待っていた。


 「驚かせてしまったようだね。君たちは誰かは知らないが、とてつもないパワーを感じているんだよ」ジョン・ラファロは美声で、よく通る声で話しをした。


 「どうやって、僕達の事を探り当てたんだ?」慎二はジョンの穏やかに話す姿を警戒していた。


 「詳しく話せば長くなるよ。聞きたいのなら話しても良いが」ジョンは首を傾げて挑むような視線を向けていた。


 「簡潔に話して貰えたら助かる」慎二は首を左右に振りながらジョンに要求をしてみた。


 「レイン、ジャン・ジェイラヴは無事なのか?」ジョン・ラファロの、その言葉に飛び退いた銀次は慎二の顔を見つめていた。


 「これは一体…」銀次は手汗が出てきたので、ジーンズのポケットから薄紫の色のハンカチを取り出して拭いた。


 「訳を教えて欲しいね。どうして知りたいんだ?」慎二は質問を交わすようにしてジョンの瞳の奥を探っていた。


 「私を怪しまないで欲しいんだ。ただ、君達の力になりたいんだけなんだよ」


 「それは話による。超能力者としてなのか? 魔法使いとしてなのか?」慎二はジョンを訝しげに見ることで相手の誠意を見たいと考えていた。


 「さあね、その2つに関しては、答えることが出来ないと思うよ。どちらとも私には当てはまらない立場だからね」ジョン・ラファロは優しい眼差しを浮かべて、木漏れ日を受けながら静かに笑っていた。


 「ふざけた事を言っているんならさ、あんた、ここから帰ることが出来なくなるんだよ」銀次は苛立ちを込めた笑いを浮かべてジョンを眺めていた。


 「怖いことを言わないでくれよ」ジョン・ラファロは銀次に愛想笑いを返して肩に手を置こうとした。

 銀次はジョンの背後に素早く移動をするとジョンの肩に手を置いた。


 「なるほどね」ジョンは銀次の手を払い除けると、銀次の背後に回って肩を強く掴んだ。

 銀次はその手を押さえたままジョンの顔を殴ろうとしたが、ジョンは銀次の前に既に戻っていた。


 「じゃあ、止めようか」銀次はジョンの胸元に指を差すと、超能力で身動きをできなくした。

 ジョンは固まったままで動作が取れないでいる。


 銀次は力任せにジョンの肩を強く揉み出した。

 「かなり肩が凝っているね。ストレスが溜まっているみたいだ。仕事のし過ぎか、昼過ぎまで寝過ぎているのかな?」銀次は身動きができないでいるジョンを突き飛ばした。


 ジョンは仰向けに倒れると、そのままの状態で銀次を睨んでいた。


 「この場から消えるなら解いてやっても良いよ」


 「自分で解いた場合は、話の続きを聞いてもらえるのかな?」ジョンは息を吐くと同時に右手の握り拳を上に上げると、少しずつ手のひらを開けていった。


 「コ、コ、コイツは!? 一体何者なんだ?…」銀次驚愕していた。今まで軽めであったとしても、1度も超能力を解かれたことなどは無かった。

 ジョンは横に大きく腕を広げ、夜更けの深い時間に目覚めた時のように、ゆっくりと棺から体を起こす姿を思わせた後、間も入れずに銀次の頬を殴り付けようとしたが、銀次は左手でジョンの右手の拳を強く握り締めて押さえた。


 「そうきたか」ジョンは声を低くして銀次に畏敬の念を込めていた。


 自由になったジョンは銀次の回りをメリーゴーランドの如く回り続けていく。

 「クソッ」苛立ちを押さえられなくなった銀次は目を閉じて回り続けるジョンの顔を無心な状態でパンチを繰り出した。


 2、3発のパンチはジョンの胸元に当たったようだが、ジョンの動きを止める事はできなかった。


 ジョンは、高速で回り続けながら、時折、パンチを繰り出して銀次の上半身を的確に捕らえていった。


 「この野郎…」銀次の怒りが沸点すると、上空に飛び上がって、ジョンに目掛けてファムに似た波動砲を出そうとした。


 『銀次! 待て!!』慎二が銀次の動きを制するために急いでテレパシーを送り込んだ。


 『慎二、なぜた?』


 『大きな音は危険大だ。ザグリフたちに気付かれる恐れがある』


 『……。分かったよ』

銀次はゆっくりと地上に舞い降りると、慎二の傍に歩み寄った。


 「君たちを傷つけるつもりはなかったのに、すまないことをしたね」ジョンは頭を少し下げて素直に詫びた。


 「頼むから握手をしてくれないか?」ジョンは前のめりになって慎二と銀次に握手を求めてきた。


 「できない」慎二は握手を拒否した。慎二とジョンは静寂な中で睨み合っていた。

 「まだ足りないか?」ジョンは迷っていた。慎二に隙がなく上手く懐に入り込めないでいた。





つづく


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