表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/37

判断

続けて書きましたよ!読んでくれてありがとうございます♪嬉しいです。

また後でね!

宜しくお願い致します♪


 太った男は部屋に戻ると咳払いをして濡れた手で受話器を取った。


 「はい」と愛想のない声で太った男は言った。


 「逃げきれるか?」と男の低い声が聞こえてきた。


 「沢木怜音(レイン)?」


 「……」


 「沢木怜音なのか?」


 「お前の命は俺の手の中にあるということを絶対に忘れるな」と何者かが言って電話は切れた。


 太った男は動揺しつつ、受話器を外してテーブルの上に置いた。


 いつの間にか風呂場のお湯が止まっていた。太った男は戻って浴槽の蛇口を確認した。蛇口の水滴が迷うことなく小刻みに破片に落ちていた。


 太った男は腹立たしくなり蛇口を捻るとお湯が勢いよく流れた。

 『この部屋にいるのも危険だ。やつの動きが読みにくい。結局、滞在時間は30分もなかったな。ホテルから出るしかない。金はある』と太った男は考えを張り巡らせた。


 フロントに行き「ちょっと買い物に出る」と伝えてワンデイズ・ホテルの入り口に行った。


 太った男はタクシー乗り場まで歩いて行こうとしたら、通りの向こう側に黒いシャツを着た男が壁に寄り掛かってワンデイズ・ホテルを見上げているのに気づいた。

 太った男は顔を伏せた。すぐに沢木怜音と分かったので、回転ドアを一周してホテルの中に戻ると裏口にある出入り口までゆっくりと歩いた。


 チップを渡したベルボーイが太った男に気付いたので笑顔で頷いた。


 太った男も一瞥して頷くと裏口まで落ち着いた足取りで向かった。


 太った男は辺りを確認してから裏口の回転ドアを開けた。

 通りの向こう側に目をやると、沢木怜音がワンデイズ・ホテルを見上げて立ち尽くしていた。


 太った男は怒りで顔を歪めて舌打ちを繰り返すと、トイレまで駆け足で向かった。

 トイレの窓は小さかったが、急いで鍵を開けて逃げようとした。出れない。太っているために腹が引っ掛かって出れなかった。

 太った男は焦り始めた。

 太った男は電話で女を呼ぶことにした。


 「はい」


 「麻美か、悪いが、今からワンデイズ・ホテルまで来てくれ。部屋の番号は、1508だ」


 「今は無理」


 「良いから早く来い」


 「無理だって言っているでしょう?」


 「10万出す」


 「……分かったわよ」


 『簡単な女だ』と太った男は鼻で笑いながらスマホをポケットに仕舞った。


 太った男は部屋に戻り、窓に行くとカーテンを少し開けて下を見た。

 沢木怜音の姿は無かったが、強い不安から胸が重苦しい感じがしていた。鼓動が早すぎる。動悸が止まらない。


 『あばずれ、早く来い』と太った男は思いながら時計を見つめ続けていた。


 いくら待っても麻美は来なかった。来る気配が無かった。時刻は午前11時50分を過ぎた頃だった。

 部屋の電話に目をやると受話器がテーブルに置いたままだった。太った男は一旦、受話器を戻してからフロントに電話を掛けた。


 「悪いが来客が来ることになっているんだ。すぐに俺の部屋に通してくれ。女だ」


 「先ほど、それらしい女性の方がフロントにいらっしゃいました。お客様のお名前と部屋番号を言っておられましたが、個人情報を教える事は出来ない決まり事になっておりますので、お引き取り願いました。大丈夫でしたでしょうか?」


 「余計な事をしてくれたが、構わないよ」と太った男は大声で言うと受話器を叩きつけた。




――――――――――――



 レインは紫のシャツの男と赤毛の男を地中から出すと赤毛の男から太った男の行き先や組織のボスのフルネームを聞き出した。

2人の記憶を消してから、厳密に言うと植物人間にしてからF駅の構内に行けと魔法をかけた。


 太った男のずる賢さから逃亡を図るために駅に行くに違いないと推理をたてたレインは、太った男の脳内にダイブをして意識に潜り込んだ。これで太った男の行動が読める。後は追跡するだけだ。



 『無益な時間を潰す時間ほど憎いものはない』とレインは思いながらワンデイズ・ホテルの15階を見上げていた。

 レインは先ほど太った男の側にまで迫っても捕まえる事はしなかった。

 警告と恐怖を与えることが目的だった。

 その後で『誰かが』トイレ来ることも、レインは予知をしていたので、迂闊な事はしたくなかった。


 太った男が出ていったあと、レインはトイレで顔を洗っていた。小学生の男の子が入ってきた。低学年だろうとレインは思いながら男の子を見ていた。


 「やあ、いらっしゃい」とレインは少年に優しく話し掛けてみた。


 男の子はレインの血まみれの白い長袖のシャツを見て驚くと「おにいちゃん、けがをしているね。だいじょうぶなんですか?」と心配そうな顔をして話し掛けてくれた。


 レインは顔が綻んだ。笑顔で頷くと「君にお願いがあるんだよ。そこのコンビニに行ってシャツを買ってきて貰えないだろうか?このシャツじゃ皆が心配するからさ」とレインは優しい声で少年に言った。

 あれだけ殴られて、腫れ上がり、血が溢れていたレインの顔には傷が1つもなかった。


 「うん、わかったよ」と少年は言うと走ってトイレから出ようとした。


 「待ってくれ、お金がなければ買えないんだよ。お兄ちゃんが2千円を預けるから、これで宜しく頼む」とレインは少年を呼び寄せて頭を撫でながら言った。少年はあどけない顔をして目を輝かせながら頷いた。

 レインはシャツを脱ぐとトイレにある銀色のゴミ箱に捨てた。

 レインは鏡を覗き込むと「ザスグギャリン」と呪文を唱えた。左目のアザが消えていった。


 少年が戻ってきた。お釣りとビニール袋をレインに手渡した。袋の中には黒い長袖のシャツがあった。

 レインは笑顔を浮かべて少年から黒いシャツを受け取ると、少年にお釣りの700円を渡した。


 「えーっ、いいの? すごい、おかねだ。おかあさんからも、こんなに、もらったことがないよ。まいしゅう木ようびにおこづかい100えんだもん」と少年は700円を一枚ずつ数えながら言った。


 「君は何年生なんだ?」とレインは素早く黒いシャツに着替えながら言った。

 「しょうがく、いちねんせいです」と少年は人差し指をレインに自慢気に見せて言った。


 「すごいな、小学1年生で立派に買い物が出来るなんて大したもんだぞ」とレインは少年のほっぺたを擦りながら言った。


 「へへへへ」と少年は喜んで後ろにターンをして、お尻を振った後、前にターンをしてピースをした。


 「おにいちゃん、あの、いまから、ぼくね、うんこしたいんだよ。うんこしていい?」と少年は体をくねらせて、ターンを繰り返すと自分のお腹を叩きながら 「うんこ、うんこ、うんこだよ〜。うんこたれのうんこだよ」と歌いながらトイレに駆け込んだ。


 「ありがとう」とレインが扉に向かって大声で言うと、トイレから「おかねをどうもありがとう」と返事が返ってきた。


 「お母さんには秘密だ」


 「うん、わかったよ」と少年は踏ん張った声を出して言った。



 レインはトイレから出ると、向かいのベンチに座っている、母親らしい女性がスマホとトイレを交互に見ているのに気付いた。


 レインは足早にF駅を出ようとした時、数名の駅員と警察官とすれ違った。



 レインは深呼吸をしてからF駅の側にある人気のない公衆便所に向かった。


 レインは便所に入ると、壁に書かれた卑猥な落書きを見ながら、目の色を青から黒へ、長髪は茶色から黒へと変えた。少しイメージを変えることで先入観が消えることを知っていた。 

 太った男の居場所に辿り着くのは高度な魔法を使えば簡単な話だった。


 ここ最近の2ヶ月間、レインは妙な胸騒ぎや異変を感じ取っていた。


 『今、魔法を無駄に使うのは危険が大きすぎる』と察知したレインは、沈黙を貫き日々を過ごしていた。


 レインは、ありあまる魔法の能力を使って犯罪を撲滅する活動をしていた。


 警察関係との付き合いも長くて、この1年間は、妹の樹里愛(ジュリア)の腰の手術費用のために必死になって稼ぐ毎日だった。


 レインは他にも樹里愛の大学の学費を支払っていたし、樹里愛が「やりたい」と言っていた演劇の公演や諸々掛かる費用も援助してお金を出していた。


 レインにとって妹の樹里愛は生き甲斐だった。両親を早くに亡くしていた事もあり、妹のためだけに生きていると言っても過言ではなかった。


 樹里愛にも魔法を使える能力があるのだが、普通の生活に馴染むためにも、友達を作るためにも、一般的な暮らし自ら選んで生活をしていた。


 樹里愛は1年前、仲間と舞台の上で準備をしていた時に、友人が運ぶ大きな荷物が崩れ落ちて、樹里愛の腰にぶつかってしまった。


 それからというもの、樹里愛は腰の具合や調子が悪くなり、早く病院に行けばいいものを、学業に専念する立場でもあるし、バイトや演劇に時間を取られてしまい、病院で腰を見てもらうのを伸ばし伸ばしにしてここまできた。


 ようやく、時間が取れるようになったのは、ここ1ヶ月くらいになってからの話だった。

 1週間前の先月の末に、病院で丁寧に見てもらったところ、腰の手術が必要と先生に言われたのだった。


 樹里愛が手術を心配しているの見ていて、不安を消すためにジョークやユーモアを交えて毎日を乗り切るようにしていた。


 手術の決心や気持ちが固まった樹里愛には、落ち着きや笑顔と余裕が生まれていた。


 レインはそんな強い樹里愛を見れて嬉しかった。何としても無事に手術が成功して欲しいと願う矢先に起こった盗難事件だった。

 レインは捜査を終えて、徹夜明けに公園で寝転んでいた所に、とんだ災難に遭遇してしまった。


 最初に心に浮かんだのは樹里愛の笑顔と犯人に対する膨大な怒りだけだった。 逃げたデブには鉄拳制裁が必要であるとレインは判断した。仲間を見捨てて自分だけ逃げるようなクズには同情の余地はない。


 ましてや手術費用を使い込んでいたとなれば怒りは倍増する。汗と涙と血の結晶である大事な大事な妹のためのお金だ。許さない。




つづく


読んでくれてどうもありがとうございました♪

この小説はもう少し続いていきますので、今後もぜひ宜しくお願い致します!

では、またね!

ありがとう♪


(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ