私は海賊だ。欲しければ奪う。何でもだ。
は……?
訳がわからないのでもう一度言おう。
は……?
「あの……それってどういう事ですかね? 」
一応確認のため聞いてみる。
「だから、君を好きになってしまったんだ。……何度も言わせるな恥ずかしい。」
頬を赤く染めながらそう言う宇宙海賊団のボス。
「なんで俺なんかを? 接点もないのに。」
「たまたま地球に行った時にな。街中で君を見かけてんだよ。一目見て胸がキュンとした。」
尚も彼女の語りは続く。
「その腐った魚の様な目に、曲がりきった根性を表しているそうな猫背がたまらなく愛おしい。すぐ好きになってしまった。」
成る程、つまりマダンナな……。
「極度のダメ男好きなのか……。」
ズーンと肩が一気に重くなるのを感じた。
まさか俺の日ごろからのダメ男っぷりが狙われた理由だとは。
「でもこんな大掛かりな事しなくていいんじゃないんですか? 」
「何をいっている。私は海賊だぞ。欲しいものは力づくでも奪う。これが海賊の流儀だろう。」
それにと彼女はつけ加えてから。
「ターニャが護衛についたんだ。それくらい本気でやるさ。」
「ターニャを知っているんですか? 」
「ああ、知っているとも。……私は彼女と同期でエイリアンバスターをやっていたんだ。」
何だってっ!?
「エイリアンバスターっ!?」
彼女が口にしたありえない言葉に思わず自分の耳を疑った。
「ああ、そうだ。私とターニャはコンビを組んで数々の星を守ってきた。……だがな。いまいち性に合わなくてな。私は何者にも縛られず自由に生きている方があっているのだ。だから今まで捕まえてきた悪者達を束ねてこうして海賊になった訳だ。……パイクもその一人さ。」
彼女か淡々と語る中で俺は戦慄にも似た恐怖を覚えた。
パイクは戦闘狂だ、あいつを手ごまにするなんて相当の実力がないと無理な芸当だ。
それほどマダンナは強いという事。
おそらくターニャと同等か……それ以上か。
俺が熟考しているとマダンナはニコリと笑い、牢屋の鍵を開けた。
そして。
「君はターニャと随分中が良かったみたいだな。どこまで進んだんだ? 」
「ど、どこまでって言われても……俺は答えないぞっ! 」
いくらマダンナとはいえ初めてあった奴にキスまで済ませたとは言えない。
睨み付けるようにそう言い放つとマダンナはフッと息を零して。
「まぁいいさ。もう関係のないことだからな。」
マダンナが段々と俺との距離を縮めてくる。
遂には俺を押し倒して身体と身体が直接触れ合った。
マダンナの豊満な胸と鍛え上げられた肉体が俺の身体と重なり合う。
敵とはいえ、女の子とこうなるのは心臓が破裂しそうなくれい緊張する。
そして。
チュッ。
ついに俺とマダンナの唇が重なり合った。
「言っただろ? 私は海賊だ。欲しければ奪う。何でもだ。」




