ええいっ! もう見てられんっ!
ターニャがおもむろに取り出してきたそれはたこ焼き器だった。
「まさかニーナが練っているのって。」
「うん、小麦粉。」
ねちょお……。
ニーナが練った小麦粉を泡だて器ですくいながら見せてくる。
「凄い、白くてねばねばしてる……。」
「おい、意味深な発言はやめろ。」
勘違いされるだろ色々。
「さぁ、宇宙たこ焼きを作るぞ。」
たこ焼き器の中に小麦粉を流す。
そして温めていき、先程切った宇宙オクトパスを一つずついれていく。
ジューっと生地が焼けるいい音が聞こえてきたらひっくり返しどきだ。
ターニャが慣れた手つきでせっせとたこ焼きをひっくり返していく。
そして待つこと数分。
「よし、出来たぞ。」
大きなお皿に並べられたたこ焼きたち。
鰹節がちりちりと踊り、濃厚なソースとマヨネーズの匂いでお腹が減る。
「希伊人っ。はい、あーんっ。」
ターニャがたこ焼きの一つを爪楊枝でさして俺に向けて差し出してくる。
「いや、いいよ自分で食べるから。」
「そんな固いことを言うな。ほら、冷めない内に。」
「わ、わかったよ。……あーんっ。」
大人しく降参してされるがままにあーんっされる俺。
口の中に熱々のたこ焼きが入ってくる。
俺はやけどに注意しながらたこ焼きを噛む。
外側がカリカリに焼けていてサクッと軽快な音が鳴った。
そこからトロリととろとろな中身があふれ出てくる。
宇宙オクトパスも高級品だけあって噛めば噛むほど味が出てくる。
「……美味いな。」
「そ、そうかそれは良かった。」
頬を赤く染めながらニコリと笑うターニャ。
「ほら、おかわりもあるぞ。たんと食べてくれ……ってあれ? 」
ターニャが次のたこ焼きを運んでこようと皿に目をやるが、皿はもうすっからかんだった。
「たくさん作ったのにもうない……。」
ターニャと俺は一度顔を合わせてから、ある方向を向いた。
「……もぐもぐ。」
ニーナが頬にソースを付けながらまるでハムスターのように膨らませて幸せそうに食べている。
「ニーナ、俺達の分は? 」
「もぐもぐ……もう食べちゃった。」
ふぅっと息をつきながら満足そうな表情を浮かべるニーナ。
「こらっ! 独り占めしては駄目ではないか。」
「ごめんなさい、お姉ちゃん。」
ターニャがニーナを叱り付けるとニーナはしょんぼりと顔を落とした。
そして。
「最後の一個ならまだある。」
ニーナが掲げた最後の一個が夕日に照らされてキラリと光る。
「希伊人……食べたいの? 」
うるうると瞳に涙を溜めて上目遣いで聞いてくる。
「いや、俺は……そんな顔してる奴に聞かれちゃあ何も言えねぇよ。」
「んにゅう……。」
ニーナがたこ焼きを見つめつつ葛藤している様子。
「……いいよ。あげる。」
「……ほんとにいいのか? 」
「うん、お姉ちゃんに言われたから。けど私も食べたい。」
そういうとたこ焼きを半分口に咥えて。
「……これで半分個ふぇきるでしょ? 」
「流石にそれはまずいんじゃあ……。」
俺の忠告を聞かないでじりじりと顔を近づけてくるニーナ。
たこ焼きの湯気が彼女の吐息のようにゆらゆらとあがり、ソースとは別の甘い香りが漂ってくる。
「く、くぅ。」
「……早く食べて。」
渋る俺に対してどんどん顔を近づけてくるニーナ。
まずい、これはまずいぞ。
ちらっと助けを求めるようにターニャに視線を送る。
すると。
「ええいっ! もう見てられんっ! 」
ズキュゥゥゥゥゥンっ!!!
「んんっ! 」
ターニャがニーナの顔を掴んでそのままキスをした。
「ん……ぷはっどうだ。これで満足したか? 」
「お姉ちゃん……もっとしてっ! 」
「なっ!? 」
何かおかしなスイッチが入ったのかそのままターニャを押し倒して。
「はぁ……お姉ちゃんっ! 」
「ちょっ! 待て。落ち着くんだニーナっ! 」
「ううん、もうだめ……。」
ちゅっ。
「んん~~っ!! 」
指を絡ませて、唇を重ねあう裸エプロンの姉妹。
もう俺帰っていいかな。




