私のような奴に絡みつくのが展開的にあっているだろっ!?
家庭科室についた。
ここは校舎の西側、その隅に位置しており授業で使う以外にまず使わない教室だ。
ガラガラっとドアを開けてみる。
綺麗に掃除が行き届いた部屋の中に夕日が差し込む。
何とも青春らしいヒトコマだ。
リア充達が好みそうな風景の中、先に行ったターニャ達を探していると。
「おお、遅いじゃないか。こっちはもう準備が出来ているぞ。」
「準備っていうか裸エプロンじゃねーかっ! 何学校に持ってきてるんだよっ! 」
ターニャは何時も通り陶器のような白い肌に裸エプロン装備で立っていた。
「いいか希伊人、エイリアンバスターは何時いかなる時でも万全の装備を整えなくてはいけない。それが例え料理をする時でもだ。」
腕をその巨乳を支えるように組んで力説するターニャ。
さっきのいかにも青春くさい雰囲気がこれでぶち壊しだ。
と、言うか。
「その格好色々まずいだろ。ここ学校だぞっ!?」
誰も通らないとはいえ学校で裸エプロンはまずいだろ。
もし誰かが目撃したら大変なことになるぞ。
主に俺が放課後誰も使わない教室で女の子を裸エプロン姿にさせる変体野郎という汚名をつけられそうだ。
「ねぇ……早くやろうよぉ。」
ひょこっとターニャの影から現れたニーナ。
「お前も裸エプロンかよ。」
「うん、お姉ちゃんがやってるから。」
か細い身体付きで裸エプロンを装着しているニーナ。
夕日を光でそのシルエットが浮かんできて逆にエロい。
まずい、二人ともこの格好はまずい。
「おい、早く着替えろよ。」
俺が急かすと。
「ははっいいじゃないか。何時もこの格好なんだし。……それに学校で裸エプロンというのはなんかこう、開放感があっていいな。」
あ、もう手遅れだ。
完全に変態の域に達しているらしい。
「さぁ料理を始めようじゃないか。先生が食料を冷蔵庫に入れてくれたみたいだしな。」
机の上に手書きで『冷蔵庫に食料を入れてある。楽しみにしておくといい。』との手紙がボールペンで書き殴られていた。
楽しみにしておくといい、この言葉が何か引っかかる。
先生の事だから普通の食材じゃないんだろうなぁ。
そう思うと冷蔵庫が嫌なオーラを放っているように見えてくる。
そんな事は知らずにターニャが楽しそうに鼻歌を歌いながら冷蔵庫と扉に手をかけた。
そして。
「キシャアアアアっ!!!」
ドンッ!
「うわっなんだっ!? 」
冷蔵庫から何かが悲鳴にも近い声をあげて飛び出してくる。
それはタコにも似たフォルムをしており、緑色の身体に黒い縞模様、足は十本生えている。
「これは宇宙真オクトパスっ! 希伊人やったなっ! 高級食材だぞっ! 」
「見た目からして美味そうじゃないんですけどっ!? 」
「宇宙オクトパス……タコタコ生のジャングルの奥地にしか生息しないという希少な陸上歩行型タコの一種で一度噛んだらヤミつきになる歯ごたえと食材本来の美味しさから王邸料理などにも使われており……。」
普段喋らないニーナがよだれを垂らしながら目を輝かせて長々とタコについて語っている。
そ、そんなに美味いのかこれ。
思わず生唾を飲み込んだ。
するとその音に反応したのか宇宙オクトパスはこちらの方を向いてから。
「キシャアアアアっ!!!」
俺の方に飛び掛ってきた。
そして。
ペトッ。
「うげっ!? 」
俺の顔に引っ付く。
引き剥がそうとしても触手と吸盤が俺の後頭部に思い切り絡み吸い付き、剥がせない。
「ぐるしい……。」
「希伊人っ! 大丈夫かっ!? 」
ターニャが駆けつけ引き剥がそうとするが剥がれない。
「ええいっこの触手めっ! こういうのは普通私のような奴に絡みつくのが展開的にあっているだろっ!? 」
「いや、メタい発言すんじゃねーよっ! 」
「さぁ早く離れるんだっ。そして私に纏わりついてその触手で私を滅茶苦茶にしてくれっ! 」
はぁはぁっと荒い息を出しながら力を込めて引っ張るターニャ。
するとタコはビヨーンとゴムのように伸びる。
そして。
ズルッ。
「あ。」
ヌメヌメしている粘膜で思わず手を滑らすターニャ。
ゴムのように引っ張られた分勢い良く飛んでくるタコ。
バチーンっ!
「ごわぱっ! 」
家庭科室には俺の間抜けな声と快音が響いた。




