花嫁修業とやらもき、興味あるし……。
「なんで唐突に料理部なんだよ。」
「家庭科室を借りれば道具は無料で使えるだろ? まぁその分食材費が掛かるのだが。それにターニャとニーナも女の子だ。花嫁修業は早いうちにしなきゃな。」
「……料理、めんどくさい。」
ニーナがポツリと呟く。
「ははっそういうな。案外楽しいものだぞ。」
「先生は毎日コンビに弁当食ってそうだけどな。」
ゴツンっ。
また殴られた。
「ふむ、料理部か……最近新しい料理のレパートリーが欲しかったし、いいかもしれん。」
ニーナとは違い、ターニャは興味を示している様子。
「そうだろそうだろ。それに料理部をするのにはもう一つ理由があってだな。」
先生はまた腕時計の画面をスワイプする。
立体画面に映し出されたのは軽快なポップで書かれた文字。
それは。
「宇宙料理バトルロアイヤル……? 」
「そう、今度宇宙で開催される料理大会だっ!これにうちの会社の代表として君達に参加してもらうことにした。」
「会社って俺も入ってるんすか? 」
「勿論当然だ。」
そうですよねーわかってました。
「大会か……ふふっおもしろそうじゃないか。」
ターニャが隣で不敵な笑みを見せた。
「いいでしょう、料理部、そして宇宙料理バトルロアイヤルの件、私たちが引き受けました。」
「ちょっとお前なぁ。」
「まぁいいじゃないか。私の料理の腕がどれだけのものか知りたかったんだ。」
それに……とターニャが付け加えてから。
「……花嫁修業とやらもき、興味あるし……。」
顔を赤らめ指同士をつんつんしながら恥ずかしそうにそう言った。
はいはい、そうですか。
「んで、ニーナはいいのかよ。」
ニーナなら断りそうだし俺もそれ便乗してやんわり断ろう。
「……お姉ちゃんがやるなら私もやる。」
意外にやる気なのかよ。
「よし、皆参加するということでいいな? 大会は二週間後だ。それまで悔いのないように技を磨くといい。」
ではなと言い残し先生は家庭科室の鍵を渡して教室を後にした。
「では私たちも早速家庭科室に向かおう、ふふっ腕が鳴るな。」
楽しそうに鼻を鳴らしながら鍵を持って教室を出るターニャ。
それに続くようにニーナも教室を後にした。
ポツンと一人残された俺。
「はぁーっ。」
背もたれに大きく腰掛けながら天井を見上げ、ため息をついた。
……まためんどくさいことに巻き込まれたなぁ。
しかし巻き込まれた以上断れないのが俺の性格である。
いい人なのか断れない臆病なのかは定かではないが。
「……取り合えず行くか。」
俺は誰も居ない教室に別れを告げて家庭科室へと向かった。




