どうした?私の顔になにかついてるか?
パイクとの一戦から数日が経過した。
また俺達には平和な訪れ、日々を過ごしている。
あらから俺とターニャはというと。
「ん?どうした?私の顔になにかついてるか?」
「いや、なんでもねぇ。」
前と変わらず何時もの距離感で接している。
ターニャも何時ものように落ち着いた感じだ。
「んで、ターニャ。放課後学校に残らせて、一体なにするんだよ。」
俺達は今自分の教室にいる。
なんでもとても重要な事があるらしく待機しているのだが。
「……今日は上司から召集があったの。」
隣の席でニーナがふわぁっと欠伸をしながら。
「召集?こんな場所でか?」
わざわざ教室に残って召集される意味がわからないのだが。
「ふふっまぁ楽しみにしていろ。」
意味ありげな笑みを浮かべるターニャ。
いや、楽しみにしてろって言われてもなぁ。
なんか嫌な予感しかしないんだよなぁ。
ガララッ!
その時、教室のドアが開いた。
「やぁ、待たせたな諸君。」
「げっ先生?」
俺は思わず目を丸くした。
嫁坂 寿子先生は俺とターニャのクラスの担任だ。
担当科目は体育、だからか何時も着古した紺色のジャージを着ている。
黒髪のショートヘアーで顔は……美人な方だと思う。
俺が美人だと断定できないのは先生の性格の為である。
授業は何時も適当、色気のない服装など色々あいまって美人が台無しなのである。
なので三十路近いのに彼氏いないんじゃないか。
「おい安藤、お前失礼なこと考えてるだろ。」
「い、いえ何でも……。」
クワっと俺を睨む先生。
なんで俺の心が読めるんだよ、エスパーかよ。
「エスパーだが、何か問題はあるか?」
「ひゃっ!問題ないです。」
本当に心読めるのかよ、思わず可愛い声だしちゃったじゃねーか。
「お待ちしていました、ボス。」
「ボス遅ーい。」
ターニャとニーナが先生に挨拶する……。
「ってボス?どゆこと?」
「なんだ、安藤。ターニャから聞いてなかったのか?」
一体どういうことだ?さっぱりわからんのだが。
俺は答えを求めるようにターニャに視線を移した。
「ああ、そういえば言ってなかったな。嫁坂さんは私達が所属するエイリアンバスター団体のトップだよ。だからこうやって簡単に転校も出来た訳だ。」
「どええええっ!?初耳なんですけどっ?先生がボスぅ!?」
「ははーんどうだ、私は偉いんだぞ。」
「ぜ、全然見えねぇ。休日パチンコとか行きそうな先生がボスだなんて。全く女らしくない先生がボスだなんて信じらんね」
ゴチンっ。
思い切りグーで頭を殴られた。
「……さて、こんな馬鹿は放っておいて本題を話そう。今日お前らに集まってもらったには二つの理由がある。」
すると先生はターニャやニーナが持っている物と同じ腕時計をかざして。
「一つは先日襲ってきたドラゴ型エイリアンの詳細だ。」
腕時計の画面をタッチすると立体的な映像が映し出される。
そこには細かに文章が記載されていた。
「ドラゴ型エイリアンパイク、彼は元々傭兵として様々な星を転々とし、戦場を暴れまわっていたらしい。」
記載されていた写真には荒々しく戦場を駆けるパイクの姿が映っている。
戦闘こそが生きがい、そう言っていた通り傭兵は彼にとって理想的な仕事だと思う。
「パイク……。」
ニーナがポツリと呟いた。
この前の一戦でボコボコにされただけではなく、ターニャから貰った大切なヘアピンまで壊された相手だ。
相当憎んでいるだろう。
俺はニーナを心配そうに見つめる。
彼女もその視線に気がついたのか一瞬視線がぶつかるが不機嫌そうな顔でプイッと逸らされてしまった。
「奴は数々の星で戦果を挙げた後、突如姿を眩ませたらしい。……詳細はわからないが噂では宇宙海賊団の仲間に加わったとか。」
「宇宙海賊団?」
「……宇宙海賊団は強奪、麻薬の密売、殺し。金のためなら何でもやる悪党集団だ。」
ターニャがそう説明してくれる。
彼女の拳が力が入っているのかフルフルと震える。
何かあったのだろうか。
嫁坂先生がすらりと伸びた足を組み直してから。
「パイクが安藤を襲ったその背景に奴らが絡んでるのだとしたら……。話は繋がってこないか?」
「つまり宇宙海賊団がなんらかの理由で希伊人を狙っているという事ですか。」
うむと先生が頷く。
宇宙海賊団、そんな輩が俺を何で狙っているんだろう。
俺は自分でもなんだが平凡で何も取り得のない人間だ。
そんな奴を何故宇宙規模の悪党共が……。
「ますます任務の難易度があがった……。」
「ううむ、流石に私達二人では厳しいな。」
「そういうと思ってここからが二つ目だ。」
先生が不敵な笑みを浮かべて指を二本立てる。
辺りに緊張が走る。
二つ目は恐らくこの状況を打破するとっておきの作戦に違いない。
その作戦とは……。
「……お前ら三人にはこれから部活に入ってもらう。」
…………は?




