いいのだろうか、私がこんな幸せな気持ちになっても……。
「おい、どうしたんだ一体?」
俺は慌ててターニャに駆け寄る。
普段の凛々しい彼女とは違い子供のようにわんわん泣き叫ぶターニャ。
「だって私がっ!私が希伊人を慰めようと思ったのにっ!ひぐっぐすっ。」
「ターニャ……。」
「私が今朝二人に嫉妬しなければ、あんな事しなければ二人には怖い思いをさせずにすんだのにっ!私は……私はエイリアンバスター失格だっ!」
どうやら今回の事で相当思いつめていたらしい。
「ターニャ……。」
俺はかける言葉を失っていた。
それはニーナも同じで、ただ不安そうにターニャを見つめる。
俺はどうすればいい?
悲しみの渦に捕らわれている彼女を救うにはどうしたらいい?なんと声をかければいい?
考えても答えは浮かばず、ただ時間が過ぎていくのみ。
ちくしょう、俺がイケメンリア充だったら気さくな言葉でもなんでも出来たのに。
自分のコミュニケーション不足を恨みたい。
何か、何かないのか。
例えば俺がされて嬉しかった事とか。
思い出せ、嬉しかった事。
思い出すんだ。
「……希伊人が悲しい顔をしているからな。どうだ、これで少しは安心したか?」
一つ、思い出した。
あれはターニャが俺の家に来たとき、両親がいない寂しさを紛らわす為にやってくれた事。
そしてもう一つ。
……私じゃ嫌だった?
ニーナが不安で押しつぶされそうになっていた俺の為に一緒にベットで寝てくれたこと、手を握ってくれた事。
それだけの事で俺はどんなに救われたことか。
ならば、それならば俺がターニャに出来ることは。
「ターニャっ!」
ぎゅっ。
俺は泣き崩れるターニャを抱きしめた。
「なっ!?き、希伊人?」
突然の事で驚くターニャ。
「ど、どうしたのだ急に?」
「うるせぇよ……ちょっと黙ってろ。」
彼女の震えた身体と体温がゆっくり伝わってくる。
俺はそれを取りのぞくように抱きしめた。
「お前のお陰なんだ。毎日くそみたいな生活が楽しくなったのも、嫌いだった学校も好きになったのも。」
もう一度強く抱きしめる。
「その生活を守ってくれる、俺を守ってくれるターニャにはいつも感謝してるんだ。エイリアンバスター失格だなんて言うな。」
「希伊人……。」
「もし、悲しくなったら、怖くなったらこうやってお前を抱きしめてやる。お前が俺を守ってくれるなら俺はなんでもする。」
だから。
「……だからもう泣くな。」
ギュッとターニャが俺のことを抱きしめ返し、顔を疼くめる。
俺の寝巻きが暖かい涙で湿るのを感じた。
「いいのだろうか、私がこんな幸せな気持ちになっても……。」
「いいっていってんだろ。ったくこの馬鹿はっ。」
ターニャが顔をあげる。
涙で潤んだ瞳が俺の視線とぶつかり、思わず頬が赤くなる。
彼女も頬を赤く染め上げてから。
「希伊人……。」
目を閉じてそっと艶やかな唇をこちらに差し出していた。
「……本当にお前は馬鹿な奴だ。」
俺は彼女の美しい銀髪を撫でる。
そして、俺達は唇を重ねた。




