うにゅ……。
夕食のハンバーグを食べ終え、皿などを片付けた後で。
「それでニーナは何故地球に?」
ターニャが横で眠たげな目をしているニーナに訪ねる。
エイリアンバスターならターニャがいるし、何故彼女はここへ来たのでろうか。
「…………これ見て。」
ニーナが気だるげにターニャと同じモデルの腕時計の液晶をタッチする。
そして浮かび上がってきた立体型の映像、そこには長々と文章が書き連なっていた。
「これは?」
「……この前捕まえたインマール星人の取調べ文章。」
そう言うと時計の画面をスワイプして。
「ここ。」
指で拡大された文章、そこに記載されていたのは。
「…………安藤 希伊人はショッピングモールで偶然見かけただけ……?」
「そう、インマール星人は偶然希伊人をターゲットにしただけ。」
「と、いう事は……。」
思わず生唾を飲み込む。
サキュバーナはつまり突発的に俺を襲っただけだったって事だ。
そして。
「元々希伊人を狙っている輩とは別人という事か。」
「そういう事。」
なんてこった、これで俺は平穏な生活が出来ると思ったのにまだ狙われ続けてるのか。
身体が思わず身震いし、悪寒が走る。
「大丈夫か希伊人?顔色が悪いぞ。」
ターニャが心配そうに俺を見つめる。
「いや、大丈夫って言われてもなぁ。」
正直不安で押し潰されそうだ。
ターニャが俺を守ってくれるとはいっても彼女も無敵ではない。
それはサキュバーナ戦でもそうだったようにだ。
それにターニャが俺の為に傷つく姿を見たくはないし。
不安な空気が食卓を囲む。
これから先本当に俺は大丈夫なのか。
「大丈夫、その為に私が来た。」
そんな空気の中、口を開いたのはニーナだった。
「これからはお姉ちゃんと一緒に希伊人を守る。だから安心して?」
そう言って先ほどからの眠たそうな雰囲気とは違いやる気と優しさに満ちた瞳のニーナ。
「そうだぞ希伊人、これからは私達二人がお前を守るからな。」
俺の不安を取り除くかのように二カっと笑ってターニャが。
「そ、そうか。二人ともすまんな。」
……今後どうなるかは俺には判らないが二人に頼る他ないのは間違いない。
ほんとこれからどうなるんだか。
「はぁー。」
その後風呂を済ませ俺はベットに潜った。
今日も今日とて色々あったが一旦リセットして寝ようと思ったのだ。
今後の事もどうなるか判らないが取り合えず身体を休めるのは大事だろう。
そういえばニーナの寝床を考えていなかったが大丈夫だろうか。
まぁターニャと一緒に寝るだろう、姉妹だし仲よさそうだったし問題はないだろう。
よし、寝よう。
そう思って瞼を閉じた時。
ガチャリ。
ドアが開く音が聞こえた。
なんだまたターニャがきたのか?
「おいなんだよターニャ、お前の部屋は」
明かりをつけないままターニャに文句を言っている。
しかしそこにいたのはターニャではなく。
「うにゅ……。」
「に、ニーナ?」
ニーナがキャミソール姿で随分と眠たげな表情で立っていた。
「あの、ニーナさん。ここは俺の部屋なので寝るならターニャの部屋に。」
「うん、わかった。」
そう言うといそいそと俺のベットに潜り込んで。
「それじゃお休み。」
すやぁっとそれは穏やかに眠り始めるニーナ。
ちょっと俺のベットなんですけどっ!?
つか俺ベットにいんじゃん?何で入ってくるんだよ!
「……お姉ちゃんうるさい。」
……どうやら俺をターニャと勘違いしているようだ。
年増もいかない女の子と暗い寝室で二人っきり。
しかも添い寝つきとなんと羨ましがられる案件だろう。
「おい、ニーナ起きろよ。」
身体を揺すっても彼女は起きない。
これなら多少ナニがあっても問題なさそうだ。
これはあれだからな、ニーナが悪いんだぞ。
こんな無防備な姿で男子高校生のベットに潜り込んでくるこいつが悪いんだからな。
だから俺がニーナにこれから色々しても問題はない。
全く問題はないのだ。
ふぅーっと高鳴る鼓動を抑える。
もう一度試しに彼女の頬をツンツンしてみるが起きる気配はない。
よし、これなら。
俺はもう一度深呼吸をした。
そして。
次に日の朝。
「ふぁ~あ、ん?希伊人お早う。なんで床で寝てるの?」
「…………気にすんな。」
結局何も出来ずに朝が来てしまった。
自分の臆病さを恨みたい。
ちくしょう腰が痛てぇ。




