そう思ってくれるのが私の原動力だ。
サキュバーナとの一戦から数時間が経過した。
結局あの後ターニャが呼んだ宇宙警察なる組織にサキュバーナは連行されてこれから取調べを受けるそうだ。
因みに破損した道路や塀なども宇宙警察が『何でも修復デキール』と言う謎の道具で瞬時に直していた。
宇宙の力ってすげーー!
そんな事はさて置き、俺とターニャは今帰宅し、晩御飯の支度をしている。
勿論今日は俺が作る、ターニャは作りたがっていたが彼女も相当疲れているだろうし、休ませる事にした。
「うし、これでいいかな。おーいターニャ出来たぞー。」
鍋の火を止め完成、今日は俺特製カレーライスだ。
別に作り方通りに作った普通のカレーだけどな。
「ああ、すまない。盛り付け手伝うから少し待っていてくれ。」
「いや、盛り付けも俺がやるよ。つかお前なにやってる……ってお前っ!」
ターニャは上着を脱ぎ丁度ブラジャーのホックに手をかけているところだった。
「なにやってんだよ、服を着ろ服を。」
「いや、もうご飯を食べる時は脱がないと落ち着かなくてな。恐ろしいな日本の文化は……っ!」
「何いってんだこの痴女は……。つか裸エプロンは日本の文化じゃねーからな!」
はぁー、あんな激しい戦闘があったのにターニャは本当何時も通りだな。
しかし何時も裸を見せられると耐性がついてくるというか見慣れたというか。
もうおなじみと言ってもいいだろうターニャの白い素肌に目をやる。
透き通る様な艶やかな肌。
ただそれだけではなく。
「……っ!」
俺はある一点で目が留まった。
いや、実際には複数だと言うべきか。
白い肌には似合わない、不気味な青黒いあざの数々。
サキュバーナとの一戦で受けた傷が生々しくターニャの身体に刻まれているのだ。
こんなにボロボロになって何故彼女は戦うのだろう。
ターニャくらいの美人なら貰い手も沢山いるだろうし、彼女がその気になれば争いのない平和な暮らしが送れる筈なのに。
俺なんか守らなければこんなに傷つかなくて済んだのに。
「む?どうした希伊人、私の事ジロジロ見つめて。」
「な、別になんでもねーよ。」
しまった、考え事をしていてついつい見てしまった。
「あ、さては私の裸に興味が……しょ、しょうがないな希伊人もお年頃だしな。は、恥ずかしいが興味を持って見られると言うのも悪くはないな。さぁ思う存分堪能してくれ。」
「…………はよ服着ろ。」
一段落着いたところでカレーを盛り付けテーブルに並べる。
「おお!これが希伊人の手料理か……!どれ一口。」
何時も通りの裸エプロン姿でスプーンにカレーライスを一口すくい、そして口に運ぶ。
「んん!美味しい!美味しいぞ希伊人!」
ニカっとカレーを頬張りながら笑うターニャ。
口に合ったならよかった。
俺はカレーを美味しそうに食べるターニャを見つめてから、気になっていた事を聞いてみることにした。
「なぁ、ターニャ。友子ってどうなったんだ?」
そう友子、サキュバーナが化けている間本物はどうしていたんだろうか。
「ああ、友子なら私がトイレに行ったら個室で倒れているのを見かけてな。それで起こしてから希伊人の後を追いかけたんだ。別に外傷はなかったぞ。」
「そうか、それならいいんだけど。」
外傷は無しか。
ふと先程のターニャのあざの事を思い出す。
やっぱり言わなきゃな。
「な、なぁ。」
「む?どうした?」
緊張で声が上擦る。
それでも。言わなくちゃな。
しっかり言葉として彼女に伝えなきゃな。
「あの、さ。今日も守ってくれて……そのありがとな。」
言った、言えた。
さて、ターニャの反応は。
「…………。」
驚いたのか、困惑しているのか、鳩が豆鉄砲を食らった様な表情をしている。
やっぱお礼を言うなんて俺らしくもない事しない方が良かったか?
軽く恥ずかしい気持ちと後悔が俺の内側から溢れ出してきて顔を赤く染める。
ああ、もう死にてぇ……。
「ふふっはははははっ!!」
すると何が面白いんだか、急にターニャが笑い出す。
そして。
「そう言って貰うのが、そう思ってくれるのが私の原動力だ。こちらこそありがとうな希伊人っ!」
飛び切りの笑顔でこちらに笑いかけてくれるターニャ。
俺はここで先程からの疑問に答えがでた。
何で彼女が戦っているのか、俺なんかを守ろうとしてくれているのか。
それは彼女がおっちょこちょいだけど優しくて誠実だから。
だから彼女は誰かを守るために戦えるのだろう。
「……ほら、カレー食えよ、冷めるぞ。」
「フフッさては希伊人、照れているのか?可愛い奴めっ!」
「うるせぇ!寄るな早くカレー食えっ!」
近寄ってきたターニャを文字通り一蹴する。
ったくこのエイリアンバスターときたら。




