プロローグ① 創世神話
夢の時代と詠われる遥かな昔――。
世界には何も無く、空虚だけが広がる世界の中で、神々は眠りについていた。
夢の中で、神々は大地と空と冥府を作った。
異世界バニイップでの誕生であった。
時は流れ、一柱の神が欠伸を漏らした。
欠伸は宇宙となった。
欠伸とともに流した涙は星々となった。
それをきっかけに、神々は目覚めたが、いまだまどろみの中にあった。
まどろみの時代である。
まどろみの中、神々はそれぞれが住む場所を定めた。
空に住む神々、大地に住む神々、冥府に住む神々、そして、宇宙に住む神々。
それからさらに時は流れ、神々は完全に目覚めた。
目覚めの時代である。
ふとある時、大地に住む神々が、自分たちの世話をさせるために空気と水からエルフを作った。
それが最初の命となった。
エルフはたいそう賢く、気が利き、思いやりがあった。
それを見た冥府の神々は、自分たちもエルフを真似て、土と水から新しい命を作った。
人間の誕生である。
だが、人間はエルフと比べるのもおこがましいほどに愚かで、気が利かず、乱暴者であった。
そこで冥府の神々と大地の神々は相談し、エルフに人間の教育をさせることに決めた。
エルフはそれを喜んで受け入れたが、人間の余りの愚かさに落胆した。それでも根気良く教えること数百年。
人間はどうにか知恵を得た。
だが、元々出来の悪かった人間である。知恵を付ければ悪知恵を働かせるようになった。
一人の人間がエルフに聞いた。
――賢きエルフよ、神々が神々たる所以はなんだ。
――愚かな人間よ、神々が神々たる所以は魔法にある。
――賢しきエルフよ、その魔法はどこにある。
――浅ましき人間よ、それは神々が住まう場所にある。空に、大地に、冥府に、宇宙に燃ゆる炎がそれよ。
――なるほど、流石は賢きエルフだ。ではその炎があれば、俺たちも魔法が使えるのか。
――無論だとも、愚昧な人間よ。
魔法のありかを聞いた人間は、エルフを唆し、炎を盗むことに協力させた。
二人のエルフと二人の人間が、それぞれ一人ずつ、空、大地、冥府、宇宙へと旅立った。
その手には粗末な木の枝が握られていた。これで炎を盗もうというのだ。
かくして数年後。
炎を盗んだエルフと人間が、空から大地から冥府から帰ってきた。が、待てど暮らせど宇宙へ行ったエルフは帰ってこなかった。
しかたなく帰ってこないエルフを諦め、炎を盗み出したエルフと人間の三人は、それぞれ持ち帰った炎を一つにした。
炎には色々な魔法が詰まっていた。
人とエルフは遂に魔法を手に入れたのだ。
三人は喜び、手に入れた魔法を使っては笑い転げ、また、他のエルフや人間にも魔法を教えて周った。
そんなことをしていれば、当然神々の目に付く。
怒った神々だったが、魔法を取り上げるようなことはしなかった。その代わりに、盗んだ張本人たる三人に罰を与えた。
三人は昏い洞窟の中に住むこととなった。
長いこと住んでいる内に、人間の二人はどんどん背が縮んでいき、ドワーフとなった。
一方エルフはというと、肌が黒ずんでいき、ダークエルフとなった。
洞窟で暮らしていたせいか、ドワーフは鉱物に詳しくなり、性格は岩のように頑固となった。
ダークエルフのほうは、洞窟に漂う冷気のように冷たい性格となり、ドワーフに皮肉ばかりを言うようになった。
当然、両者の仲は悪くなった。
それからさらに数百年。
神々から罰を解かれたドワーフとダークエルフは外に出られるようになった。
その頃には、世界には様々な生物で溢れかえり、その数だけ文明が芽生えていた。
これを機に、神々は空、大地、冥府、宇宙の奥へと移り住み、そこから世界を見守ることにした。
世界は人やエルフを初めとした様々な亜人種たちに委ねられたのだ。
人と亜人種は時に協力し、時に争い、時に滅ぼしあった。
それが現代にまで続く人代の時代――
剣と魔法の時代の幕開けである。




