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 天狼族が住むのは岩と風が支配する高山地帯の一角だ。

集落に行くには強烈な砂嵐を越えていかねばならず、普通の生き物は地上はおろか空中からだって近づくことはできない。なぜならその砂嵐こそ白龍の守護だからだ。白龍様の属性って風だったっけ?という質問は受け付けないそうだけど(本来風属性は黄龍様だ、白龍様は回復や浄化などの癒やしを担当している)。


 砂嵐を越えた白龍の領域――――天狼族の集落は緑あふれる楽園だった。岩どこ行ったー!


『岩と風だけなんて天狼族が死んじゃうでしょう?』


 緑の楽園はどうやらこの緑龍様の仕業らしい。これならぼくらや天狼族の庇護を主張するわけだ。

ちちちっと小鳥のさえずりやうさぎなんかの小型の動物もいた。環境は地上の僕等がいた森とそう変わらないかもしれない。


「お待ちしておりました、緑龍様。わたしは天狼族の長を務めておりますハウと申します」


 灰色、いや、銀色の毛並みを持つ体格の良い狼が僕らを出迎えた。……その後ろでは子狼がさっき見たうさぎを襲っているけど気にしたら負けだろうか、どうやら彼らは肉食らしい。


「そして……そなたが最後の天狐か……ずいぶんと小さい……まだ幼子ではないか」

「初めまして。僕はウルイ……天狐の長だったミネズオウとアサザの子です」

「ミネズオウ殿か、彼はまさしく長にふさわしい器であった。彼が存命であれば此度の悲劇も防げたであろうに」

「父は歪みを正すため、全ての生き物を守るため身を投じました。誇りに思ってます」

「生き残ったのがかの天狐の息子とは運命を感じるな……」


 ちょっとしんみりした空気が流れたがそれをぶち壊す光景が目の前で繰り広げられていた。

だって、緑龍様が子狼たちを植物で釣り上げて遊んでる。小狼もめっちゃ喜んでるし。


『ヤダァ、やっぱり子供って可愛いわぁ』

「……」

「……あー、積もる話は後にしよう、まずは集落に案内する」

「よろしくお願いします」


 緑龍様、ちょっとだけ空気読んで欲しかったよ。




――――天狼族集落、臨時対策会議場――――


 会議場というか普通に広場なわけだが。中央に僕、正面に天狼族の長老さんたちやハウさんがちょこんと座り、周囲をぐるりとドラゴンの巨体が取り囲む。軽く恐怖だよね?


 ドラゴンは天狼族の後ろに白龍様、僕の後ろに(眠ったままの)黒龍様。その間に緑龍様、赤龍様、青龍さま、黄龍様が並ぶ。黒龍様の頭に瘤ができまくっているのは見なかったことにしておこうと思う。


『集まってもらったのは他でもない、天狐が全滅という知らせが緑龍から入り、その対さ『ウルイちゃんはわたしが引き取るからねって話よ!』えー、緑龍から以上の主張が入っている、なにか意見のあるもの~』


 僕や天狼族がずっこけたのは言うまでもない。


『んー、天狐くんはぁ、適正は僕のほうが上みたいだけどぉ、僕は子育てとか無理だからぁ。緑龍でいいんじゃなぁいぃ?』

『青龍、しっかり喋りなさい。実際私達の領域では森に住む生物が生きていけるはずもないですから森の主である緑龍が育てるならば何も文句はありません』

『本来の庇護役は寝ておるしな』

『黒竜はそれが役目だしぃ、仕方ないんじゃなぁい?』

『だからはっきり話しなさい。とにかく、緑龍が自ら望むなら問題ないでしょう。黄龍も反論はありませんね?』

『…………』

『問題ないようですし次の議題にいきましょう』


 ノリかっるぅ!?ていうか黄龍様何話したの?喋ってるの?なんにも聞こえないんですけどぉぉ!?


「神竜様方はとても…………あー、個性的なんですね」

「神竜様のイメージがァァ」

「ワシは悪い夢を見てるんじゃぁ、これは何かの間違いなんじゃぁぁぁ」


 天狼族も阿鼻叫喚です。


「これ以上(精神的)ダメージは避けたい、ウルイ君、我々は我々でやるべきことをしてしまおう」

「あ、はい」


 とっても真剣な顔で(神竜様からものすごい勢いで視線を逸らした)ハウさんに提案された。確かにやるべきことはさっさと終わらせたい。ものすごく大事なことだしね。


「当たり前ですが一族が全滅したので長の証は僕のもとに来ました。今からこれをハウさんに同調させます」

「ああ、『天狼の長の証よ、天狐がおさの証よりその記憶の引き継ぎを行いたまえ』」

「……『天狐が長の証よ、その記憶を天狼の長の証に明け渡したまえ』」

「「『今分かたれた記憶を一つとし、真なる継承の儀を賜らん』」」


 …………一応成功したのだろうか?


「ふーむ?これは……ああ、こっちがこうなってあっちはああなるわけか、しかしこれは……」


 只今ハウさんによる記憶の確認作業中、作業中、作業中…………おわり。

ハウさんはとってもいい笑顔でおっしゃいました。


「うん、記憶が穴だらけだな、属性が増えたらまた来なさい」


 うわぁぁぁ、やっぱりですか。

まだまだガキンチョで一属性しか持たない僕と天狼族の長を務められる実力者のハウさんが完全に同調できるわけがなかったんだ。


「まあ基本的なところは網羅できてるし、我々の知識て補完できる部分もたくさんあるからしばらくならお勤めもごまかせるさ」


 だから早く実力つけて完全版を渡せってことですね?わかります。


『あら?じゃあ定期的に天狼の子どもたちと遊べるわね!』


 なんだか嬉しそうな緑龍様の声が虚しく辺りに響いていた。

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