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今回の物語の中で今のところ一番のはっちゃけキャラが登場です。

 ぴちょんと水滴が顔にかかる感覚で目が覚めた。

「……雨?」

声を出したが喉がカラカラで掠れてる、水が飲みたい。


 なんだかぼんやりとしたままの頭でムクリと起き上がる、なんでこんなにのどが渇いてるんだろう?

と言うかいつの間に僕は寝たんだっけ――?


『気が付きましたか?』


 知らない声が後ろから聞こえて振り返る、でも見えたのは緑の苔むす壁だけだ。


「?」

『顔を上に向けていただかないと見えませんよ?』


 そう言われて顔を上に向けてみた……ものすごい後悔した。

そこにいたのは全身が植物で出来たドラゴン――神竜の一角と称される緑龍様だった。

やべぇよ全ての森の主様だよ、僕その神竜様に寄りかかって寝てたよ。……これ普通に殺されるんじゃね?


『助けた命を消すなどしませんよ』

「助けた?……!?」


 最初は何を言ってるんだと思ったが一気に記憶がフラッシュバックした。


「……あ、ああ、…………ああああぁぁぁぁ!?」

『落ち着きなさい、そなたが狂えば全てが終わりです!』

「ぅあ、あ……ぁはっ、はっ」


 緑龍様の声とともに威圧がかかり別の意味で硬直する、そして鼻をくすぐる緑の香り?


『ゆっくりと息を吸ってこの香りをかぐのです、精神安定効果のある香りですから……そう、ゆっくり』

「うっ、はっ、はっ、はぁはぁ、はぁぁ」


 香りをかぐことに意識を集中させてゆっくりと深呼吸を繰り返す、それでも悲しみと憎しみの記憶を消すことは出来ない……シオデ……コゴミ……。


 僕の目の前で二匹は無残に殺された。

ほかの子もだ。……まだ赤ちゃんだった子まで!!


大狐おとなが……お勤めのために大樹に行ってて……村にはまだ小さな子と年老いて動けなくなったおババ様達しかいなくて……」

『その大狐も死に絶えました』

「――――!?なんでっ」

『勤めはとても繊細で危険な作業です。動揺の中、無事でいられるほどあの空間は易しくはありません……村で平和に暮らすはずの自身の子が次々と失われていく感覚に耐えきれるものはいませんでした』

「そんな……っ母さまは!?僕は生きてます!母さまはどうして!?」

『あなたの母は大狐の中でも一番若い……周りの大狐が死んでいく様に動揺せずにいることは不可能でした。……ごめんなさい、わたしには大樹を通じて見ていることしか出来なかった』

「……あそこに行けるのは神にそう造られた天狐族か、対となる天狼族だけです」

『しかしあなた達をもっと早くに助けに行けたら』

「それこそ自然界の掟、弱肉強食は当たり前です。僕らは勤めのために他の種族から見逃されていただけで、勤めなど関係ないと思う人間やつらにはいい獲物だっただけでしょう。許す事はできませんが、割り切るしかありません」


 人間を許すことは出来ない、彼らを助けようなどとは絶対に思うことはないだろう。でも、他の種族まで道連れにするわけにはいかないんだ。僕は神に大樹を任された誇り高き天狐なのだから。


「ともかく緑龍様のお話が真実ならば僕ら天狐族はこれでおしまいです。僕は雄で子孫を残すことが出来ませんから。雌なら妖狐との間に子供も作れたのですが……」

『雄と妖狐の雌ではダメなのですか?』

「子を育てる間も勤めを果たすために生殖能力は雌に、勤めの能力は雄に大半が振り分けられているんです。天狐同士なら問題ないんですが雄に他種族と子をなせるほど生殖能力がないんですよ」

『急ぎ対策を立てる必要がありますね、神と連絡が取れればいいのですが……あの方は我らを生み出してからはずっと眠りについたままですから』


 わ、さすが神竜様。実際に神様を知ってるとか不死なだけあるなぁ。


「一番重要なのは天狼族です。僕らが滅んでも彼らさえ無事なら勤めは引き継げますから。でも天狼族まで滅べばそれこそすべてが終わります」

『彼らは白龍の庇護下にいますから基本的には大丈夫でしょう。あなた達も本来なら黒龍の庇護下にいるべきでした』

「黒龍様は幻想界ゆめの住人です。現実を生きる僕らがその庇護に入るわけには行きませんよ」

『だからこそ口惜しいのですよ。せめてわたしが庇護できていたら』

「森の主が一種族だけを贔屓することなど出来ないでしょう?」

『しかし現実問題としてもはやあなたを失うわけにはいきません。黒竜が庇護できないならばあなたはわたしの息子としてわたしが保護します。種族ではなくあくまでもわたしの私的な関係です。文句など出させません!』


 あれ、おかしいなぁ?天狼族を保護しろって話をしていたはずなのになんで僕が緑龍様の養子になるって話になっているんだろう?


『さあ行きますよ!まずは神竜すべてを集めてあなたを養子として迎える宣言をした後は対策会議です!ああ、天狼族も会議中は我らの監視下に置く必要がありますね。彼らまで失うわけにはいきませんから、すぐに白龍に連絡を取りましょう。そうなると会議場所は白龍のもとがいいかしら?いっそ天狼族の村でもいいわね。あそこはかなり広い空間だったはずですし……』


 神竜揃い踏みで居座られるって……天狼族さん本当にマジごめんなさい。


『不死である我らは子供が作れないけど一度子育てってしてみたかったのよね。そもそも適正がそうだからってなんで黒竜や白竜だけ天狐や天狼を庇護下に置くわけ?住み場所はわたしの領域なんだからわたしが庇護して何が悪いっていうのよ?何も悪く無いわよね?だいたい…………』


 対策会議ってことで神竜が集まるわけだけど、僕は僕で最後の天狐族として天狼の長にきちんと挨拶しなきゃダメだよね、勤めに関しての知識共有もしなきゃいけないし。僕まだ一つしか属性持ってないから定期的に共有しなきゃダメかなぁ?まあどうせ僕一匹になったんだし、天狼の集落近くで生活しても問題ないか。美味しい果実があると嬉しいかなぁ。


『…………というわけで行きましょうか!』

「あ、はい」


 やべぇ、全ッ然聞いてなかったわ。


ウルイくんの年齢はこれでも1歳です。狐の年齢ってなど難しい話はなしの方向でお願いします。ファンタジーなんで。


女性っぽいですが緑龍様の性別は……(目をそらす

うそです。ちゃんと女性ですよ。ええ。

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