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ふて寝と言いつつごろごろしている程度のつもりだったがいつの間にか寝てしまっていたらしい。
気が付くとあたりが薄暗く……って虚の中だから暗くてあたりまえだよ。
時間が立っているのは確実だから気配に注意しつつ虚から出る。緑龍様の許可を持たない奴がここにこれるとは思わないが、イセカイジンはこっちのニンゲンと理が違うということだし、用心するに越したことはないだろう。
案の定、ゆっくりとすすむとイツキとエルフ以外に数人の気配。しかもなにか言い合いをしている声が聞こえてきた。緑龍様の気配は……周囲一帯にある。実体化しないで様子見といったところか?でもそれならなんでイツキが対応している?
距離が少し離れた茂みの中に隠れて様子をうかがうことにした。
『あらウルイちゃん?起きたのね』
「あ、おはようございます緑龍様。この茂み、緑龍様だったんですね、おじゃましてます」
僕が潜り込んだ茂みは緑龍様を形成している植物の一部だったようだ、ちょっと慌てて敬語になってしまう。
『お義母さんって呼んでって言ってるのに。とっさの時に呼ばないってことはまだ慣れないのね』
慣れることはないと思います。
「だから天狐に会いたいって言ってるんです!」
「無理だって言ってるだろうが!」
「同じ召喚者なのに……先生は私達の味方じゃないんですか!」
「……あ゛?」
『あらん?』
あ、いたい、ちょっ、イタイッス緑龍様!茨ギリギリしないで!
「お前ら自分が何したのかわかっててそのセリフ吐くのか?」
「あなたは教師で俺たちは生徒です、あなたには俺たちを保護する義務があるでしょう。だいたいそのくらいしか役に立たないんですからちゃんと働いてくださいよ」
メガネとか言うやつつけたインテリ?っぽい男がイツキになんか言ってるー。
あははは、茂みがざわざわしてて緑龍様の怒り具合がおそろしいよー。
『くすくすくす』
「「「!?」」」
「えっと、……アリー……?」
僕の隠れている茂みを残して周囲の植物がイツキの背後に集まり始め、人の形を取り始めた。しかもクスクスと笑い声付き。軽くホラーですと後にイツキは語りました。
『やだもう、なんなのかしらねこの子たち面白すぎるわぁ?』
(イツキ曰く)絶世の美女の姿になった緑龍様は本当におかしそうに蔑みの視線を侵入者たちに送った。
ただし侵入者たちはその視線に気づいていないようだ。オス共は鼻の下伸ばしてるしメス共も若干顔が赤い。
「あ、あなたは?」
『イツキのパートナーよ?この森で誰の守護もなしに彼が生きていられるはずないでしょう?』
そんなことも分からないの?と言わんばかりと言うか実際いっちゃってるね緑龍様。
とにかく嫌味全開いかにも不機嫌ですって言った態度だ。イツキは……ダメだいつもと雰囲気が違いすぎる緑龍様に完全にビビってる。普段僕らの訓練風景(=僕瀕死)を間近で見ていることが仇になってるのか。
『それで?自分たちが殺したニンゲンになんのよう?』
「ころっ、生きてるじゃないですかっ!」
『生きてるわよ?私が拾ったからね。でも私が拾わなければ確実に死んでた。実際彼は天狐に殺される寸前だったわ。だから本来は死んでる、あなた達が殺している』
モノは言いようですね。
でも僕は殺そうとしてないよ、あれは不可抗力だもん。緑龍様が欲しいって言った獲物を横取りするなんて怖い真似しません。
『もう一度聞くわよ?自分たちが殺したニンゲンに何を期待しているの?』
「……っ、私達はそんな役立たずに用なんてないわよ!私達が探しているのはっ」
「風見、落ち着け。俺達は喧嘩をしに来たんじゃない、交渉しに来たんだ。あとは俺に任せてくれないか?」
「光輝……そうね、ごめん。あとは任せる」
なんだろう?あの茶番は?え?まさかこの状態から交渉できるとか思っちゃってんの?馬鹿なの?死ぬの?言っとくけど緑龍様、マジギレしてるからね?あれで結構イツキのこと本気みたいだし。
「さてと……仲間が失礼した。思わぬ相手にあったせいで動揺してしまってね。改めて自己紹介させてもらいたい。俺……いや、私の名前は東海林 光輝。クレプスキュル皇国に召喚された勇者だ。わけがあって世界樹へ行きたいんだ、協力してくれないか?」
ぅわぁ、これあれだよ、イツキが前に説明してくれたやつだ。えーとなんだっけ?ほら、あれだよ。
『空気読めよこのKY野郎』
「」
それだー!!あー、すっきりしたー。
そうそう、空気よめない奴の略称だっけ、そもそも空気って何?って聞いた覚えがあるわ。
『なんで仕切り直せば協力してくれるとか思ってんの?馬鹿なの?』
「だ、だからすまないと……」
『謝って済むなら警察はいらねぇんだよ』
…………緑龍様、ここぞとばかりに覚えた単語使ってるでしょ?実は楽しんでるでしょ?
「アリー、おまえ……」
あ、イツキも気づいた。緑龍様もイツキが気づいたことに気づいたね。あ、イツキが余計なこと言う前に追い払う気だ。
『私の大切なパートナーと子供を殺そうとした奴らなんかに誰が協力するかってんだ、おとといきやがれ!』
緑龍様の言葉を最後にいっせいに植物が自称勇者たちに襲いかかり、あっという間に森の外に転移させた。素晴らしい早業だ。でも一言言わ……なくていいやなんか嫌な予感するし。
「アリー……、教えた俺が言うのもなんだが……ネタが古ぐべしゃ」
うーん、雉も鳴かずば撃たれまい。
ちょろっと人物紹介
ウルイ:世界背負っちゃってる天狐。いつのまにか3歳です。主属性は現在水と風。
豊穣の女神:緑龍様。名前は契約時にイツキがつけた。しかし長いのでもっぱらアリー呼び。主属性は植物。
榊原 樹:異世界召喚された30代半ばの苦労人。(元)教師。属性、スキルともに植物のみ。
東海林 光輝:クレプスキュル皇国所属の勇者。イツキの元生徒。属性は光、水、風、植物。しかしマナの根源(緑龍)に嫌われたため今後植物は使えない。
風見 遥:クレプスキュル皇国所属の異世界人。イツキの元生徒。属性は風。スキル『鷹の目』を持つ。
奥本 正紀:インテリメガネ。クレプスキュル皇国所属の異世界人。イツキの元生徒。属性はないが『言語マスター』のスキル持ち。光輝達の頭脳担当。




