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不定期にゆっくり更新で行きます

 大地を駆ける生き物たちが生まれるずっと昔、神様は混沌から世界を作った。

 大地と海と空――でもいくら浮かべても空は地上に堕ちてしまった。

 そこで神様は残った混沌を使って空の支えを作った。

 支えの名は世界樹――世界樹が枯れた時世界は滅ぶ――




――ケントロン大陸南西部・森緑の海――


 日差しが暖かい春、起き難くて木のうろを改造したベッドでぬくぬくと気持ちよく寝ていたら幼なじみたちが突撃してきた。


「ウルイ~、大樹に遊びに行こうぜぇ」

「ウルイちゃん、おババ様がお昼までなら行ってももいいって!」


 朝っぱらこら大声を出すなと言いたい。びっくりして尻尾がボワってなったじゃないか。

膨らんだ尻尾を毛づくろいしながら迷惑な幼なじみたちを横目で見る。僕としては大樹に行くより昼まで寝ていたいのだが諦めてくれないだろうか。


「俺ら子供だぜ?外で遊ばなきゃ健康に悪いって」

「シオデちゃん言ってることがジジくさいよ……」

「爺ちゃん子だからこれでいいんだよ!とにかく、寝てねぇででかけるぞ!」


 僕よりちょっとだけ早く生まれたからかシオデは僕より一回り大きい、何が言いたいかというと僕はシオデに引きずられて出かける羽目になったということだ。

 シオデの隣ではコゴミが楽しそうにスキップしている。コゴミは僕よりちょっとだけ大きいくらいでほとんど変わらない。村の動ける子供は僕らが一番小さくて、後は本当に赤ん坊か恋の季節に浮かれるマセた兄ちゃんや姉ちゃんばかりだ。必然的に僕らは三匹でまとまって行動することが多い。


「この前アザミ姉ちゃんが大樹で大きなきのこを見つけたって!」

「ミズ兄ちゃんは大樹の実を食べたって言ってたぞ!」


 ふむ、目的は遊びじゃなくて食い物か。朝ごはんにはたしかにちょうどいいかもしれない。


「そういえばヒジク兄ちゃんがクコにやれる熟した大樹の実が欲しいって言ってたな……」

「なら今日は大樹のみ探しで決定だな!」

「日当たりがいいところだと……ちょっとかかるね、急ご!」


 コゴミが駆け足で道を進み始める、僕を引きずっていたシオデは慌てて追いかけようとするけど僕を引きずったまま走れるわけがないんだ。


「さっさと放せって、もう自分で歩いてついていくよ」

「よし、すぐ追っかけてこいよ?コゴミー!!一匹で行くなって!」


 先を行くコゴミの足はとても軽やかだ。コゴミは僕ら天狐の中でもかなりの器量よしで将来が期待されている。真っ白な毛が太陽の光を受けてキラキラ輝いているし、毛並みも柔らかくていい匂いがする。


 実はシオデもコゴミに気があるらしいというのは行動を見ていれば一目瞭然だ。コゴミはまだそういうことに興味が無いみたいだけど嫌がる素振りもないからそのうちくっつくんじゃないだろうか。


 大樹についた後はひたすらグルグルと登っていく、30分ほど登ったけどまだまだてっぺんには辿り着かない。眼下には深緑の森が日差しを浴びてキラキラと緑に輝いて見えていた。ところどころに見える赤や青の光はなにか生き物が動いているんだろう。緑の中に光る別の色はまるで大樹とそこになる実のようだ。


「すごーい!きれー!」

「今日は雲もないし遠くまで見えるな……森の向こうの青はなんだろう?空とは違う青さだ」

「おババ様が言ってた『海』じゃないか?森を抜けるとあるって聞いたことがある」

「『海』かぁ。いつか行ってみたいな」

「おとなになる前なら大丈夫じゃない?その時はまだ大樹のお世話の役目はないだろ?」

「いつか皆で行こうね!」


 他愛無い、でも大切な約束をしてその場を離れる。

 大樹をあっちこっち行き来してきのこを食べたり果実を採ったり、珍しい虫を見つけて皆で追っかけたりして許された時間まで遊びながらお腹いっぱい食べる。


「そろそろ時間だから帰らなきゃな」

「まだ遊びたーい」

「ダメだって。午後はおババ様からお話し聞かなきゃいけないだろ?大樹のお世話をするために大切なことばかりなんだから」

「むぅ。また来ようね?」

「許可が降りたら何度でも!」


 コゴミに甘えられてシオデがデレデレだ。はっきりいって気持ち悪い。そのうちくっつくとか思っていたがこのままでこいつ大丈夫だろうか……?


「ウルイもだからね?」

「はいはい」

「……」


 いやいや、そんなに睨まないでくれたまえ、シオデくん。単なる社交辞令だって。


 じゃれ合いながら大樹をおりて村に向かう。熟した果実もたくさんとったからチビ達も大喜びだろう。

僕らは自分たちの成果に上機嫌だった。




――深緑の森・アローペークス村――


 それ・・は突然起こった。

 僕らは理由もわからず逃げ惑い、そして次々に殺されていった。

 僕自身も背中を切りつけられてその場に倒れる。まだ死んでいないが重症だ。


 横ではぱちぱちと音を立てて炎が木を燃やしていく。木は僕らの家だったものだ。


「これで全部か?」

「はい、集落中のキツネどもは全て集めました!」

「予想より少ないが……ダリア姫様のマントを作る分はあるか」

「14になられたお祝いでしたね。伝説の天狐のマントなどこの世に二つとない贈り物となるでしょう!」


 姫?贈り物? 僕らはそんな理由で……


「ふん、たかが獣が伝説などと……確かに毛皮は白く美しいがな。ダリア姫さまを美しく輝かせるために今まで存在を許されていただけだ。役目を果たす今、もはやこいつらの伝説など必要ない」

「はははっ、確かに。たかが獣のキツネが伝説の筆頭である世界樹の世話をするなど、年寄りの話すお伽噺は面白いですよね」


 大樹の世話は僕らの役目、お伽噺でもなんでもない。お前たちは……


「大体、世界…………支えて…………という……与太…………!?避けろっ!!!」


 突然大きな叫び声が聞こえたと思ったら上がものすごく暑くなった。どうやら横で燃えていた家がこちらに向かって崩れ落ちたようだ。このまま皆焼け死ぬのだろうか?でもこいつらに連れて行かれるくらいならこのまま……。



 ――――そのまま僕は意識を失った





はじめはまじめにシリアスで行こうじゃないか!

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