プロローグ
異世界への扉は、何処にあるのか分からない…….
世界中のどこにでも存在する。
ただ言えるのは、どの入り口も素晴らしい冒険を用意しているだろう。
「たすけて、おねがいだれかたすけて……」
「だぁれ? 何処にいるの?」
「……、おおきな、たきのちかく……たす、けて……」
今からおよそ三十分前。頭に突然、幼女の声がした。
何か慌てているようで、必死さが伝わってくる声だった。
始めは、自分の具合が悪くなったのかと思った。なので、しばらく声を無視し、今日家から持って本に没頭する。
森の中を歩いていて、見つけたテントは年季が経っていて埃が積もっていた。掃除をすると過ごしやすく秘密基地のようで、度々訪れるようになったのだ。今では、周辺の生き物たちとも仲良くなっている。
(あぁ、もう! うるさーい!)
だんだん、消えていってくれれば良いのに……。
しかしその声はただ消えていくのではなく、だんだん弱弱しくなり、必死さが増していった。
(あれ? この子大丈夫かな?)なにが、あったのだろうか。
非常に気になる。
このまま声がなくなっては、気持ちがモヤモヤして、夜眠れないだろう。そこで、声の主を探すことにした。読んでいた本はお預けだ。戻ってきて時間があったら読もう。
タッタ、タッタ。
走りながら周りを見回す。
誰もいない……。物音もしない。あるのは自分が走る音と、頭に響いてくるこの声だけ。
「たす、けて……たすけ……」
タッタ、タッタ。
何か、いつもの森と違う。動物たちの動く音がしない。風が木々を揺らす音もしない。あるのは、張り詰めた空気のみ。
タッタ、タッタ。
大きく枝がたわみ、蔦が絡まっている、倒れかけている大木の下を潜り抜ける。その木の幹を見ると列を成して歩いている、蟻たちが目に付いた。いや、止まっている?
また、走る。
そしてついに水の流れ落ちている音が聞こえた。この近くでもっとも大きい滝についたのだ。
「どこ?」
辺りを見回す。
「ちか、くの、いわの、あ、な……」
少し近くを歩いてみる。特に何も無い。穴らしきものも無い。
どうしよう? 声に尋ねてみたが、返事は無い。
ハァ~ァ。思わずため息をつく。
何だか、身体が疲れてきた。さっき走っているときは、平気だったのに。眠くなってきた。それに反して、ここで寝たらダメだと身体に逆らい頭が叫んでいた。冷たい空気を頭に取り込まなければ寝てしまいそうだ。
スゥー、ハァー。
もう一度深呼吸。
スゥー、ハァー。
あれ、なにか良い匂いがする。何の匂いだろう?
とりあえず、匂いが漂ってくる場所に行ってみる。目の前に光が広がった。開けた場所に出たのだ。
「どこ? ここ……」
先ほどは、こんな場所があるなんて気がつかなかった。
日光が届かぬ薄暗い中、一筋の光が差し込んでいる場所だった。さらに、足を影の境界線に踏み入れる。
少しずつ、足を進めていく。この場所もまた、鳥のさえずりすらしない。明るいのに、重々しい空気に満ち溢れている。
そして、奥には一つの洞窟らしき穴があった。
フワフワしている草を踏みしめていく。踏むたびに甘い香りが鼻腔にひろがった。どうやら、あの良いにおいはこの草らしい。
「……っ!」
そばに行ってみると、洞穴ではないということが分かった。洞穴なら外の光である程度中が見えるはずだ。しかし、この穴は中が全く見えない。そしてひんやりした、空気が流れてきた。何か投げるものは無いだろうか。
見回してみると、足元に木の枝が落ちていた。掌くらいで投げやすそうだ。とりあえず、この枝を投げてみよう。
「とりゃッッ!」
あっけなく、枝は闇に呑み込まれ消えてしまった。地面に到達した音も聞こえてこなかった。不思議だ。いくら遠くに飛んだとしても音は響いてくるはずである。見えないところは音が吸収される、砂かなにかだろうか?
不思議な空間。中がどうなってるのか気になる。それに、いつまたここが見つかるか分からない。少女の冒険心が燃え上がった。
明日は妹の誕生日だ。準備があるから暗くなる前に帰ってこよう。心の中で決意する。妹は怒ると怖い。たぶん、母より怖い。喧嘩をすると私は必ず負けてしまう。しかしただ一人の妹だ。大切にしなければ。
時計の準備は万端だ。これで、時間を忘れることは無いだろう。
入り口に足を踏み入れる。空気が動く。景色が回っている。そうか、目が回っているんだ。意識がついてこない。そして、身体が中に引っ張られる。
「あっ」
足が引っ張られ、身体が後ろに大きく仰け反った。身体が浮く感覚がして、意識が切れた。
その出来事を知るものは、地球上にいない。
初めまして、風鳥紀乃です。
文章がへたで、読みにくかったと思います。すみません。
少しずつ、読みやすくなるよう頑張るのでよろしくお願いします。
次は、本編に入ります。
※魔法が出てくるのは、まだまだ先になると思います。