あなたを選ぶ
諸事情により少し投稿遅れてすみません
ヘタレを選ぶ 【仮面を選ぶ】
「やっぱり俺様を選んだんだな」
こうなることが確定してた、かのように仮面は不敵に微笑む。
男性は這いつくばったまま、切なそうな目でこちらを見る。
「ふん、犬のようだな。こいつは置いて、行くぞ」
仮面は、何のためらいもなく男性を亀裂へと突き落す。
落ちて言った彼の、子犬のような目が脳裏に焼き付く。
何だかちょっぴり切なくなりかけたような気がしたが、きっと気のせいだ。
気をそらそうと、私は壁をよく見つめる。
遠目から見るとのっぺりした平面に見えていたが、
かなりしっかりと凹凸が付いている。
「ほら、俺はお前が登りきるまで下で待ってる。
何があったって受け止めるから、行け」
うぅ、怖いよぉ……。
一個一個のパーツをつかむたびに、声が漏れそうになるのをこらえる。
どうしてだろう、これは私の敏感な部分を触っているような……。
ととととと、急激に攻められた気がした。
気づくと、私の横に仮面が。
「ここまで来れるなら、落ちることはないだろう。
……横にいた方が、お前が安心できる気がして」
そして、口元だけで微笑む。
――きっと仮面が居れば、大丈夫だ。
私は、天井の隙間を超えた。
――――***―――***―――***―――***―――***――――
私と仮面が、天井の隙間を超えたとたん、隙間は閉じられてしまった。
周りを見渡すと、下に炎がある綱渡りのようなステージ。
「これはお前を歩かせられないな」
ひょいっと、抱えられる。
何でだろう、恥ずかしいより嫌悪感が強い。
それは「支配」されたような、「束縛」されたかのような違和感。
彼は綱の上を、バランスをとって、でも体重をかけすぎないように走っていく。
飛んでくる火の玉も、私に当てないように器用にかわす。
だけど――つまらないんだ。
「大丈夫?」の一言もない。
思えばさっきからそうだった。
仮面は、私の事なんてほとんど気にしていないのではないか?
怖かったのに、それは分かっていたはずなのに「先に行け」って言って。
「受け止めてやる」って言ってたのに、勝手に隣に来て。
身勝手なんだ、それに束縛された感じ――。
それは確かどこかで感じた――キモチノワルサ。
男性の包み込むような感じとは、違う。
「私、やっぱり最初に会った男性と一緒に旅したい!」
勢いで言ってしまい、私は後悔することになる。
6話目担当水鳴倫紅
6話目サブタイトル楓