燃える
「それじゃあ、この国の案内をするよ」
そう言った男性に、手を引かれて歩く。
何故だろう……子ども扱いされて嫌なはずなのに、安心する。
雪は静かに沈み込み、私の足をとって転ばそうとするけれど……。
少しも、怖くないや。
「ここが街だよ」
雪の降り注ぐ、ちいさなバザール……商店街。
雪のせいか、ひどく静かだ。
小さな宝石の中に灯った光が、街を照らして、あか、あお、きいろ。
「――人がいない?」
男性が後ろを振り返る。
人気が無いのは、雪のせい、だけじゃないのかなぁ?
「普段だったら、僕の周りに人が集まってくるというのに……」
優しい光は、世界を温めない。
少なくとも、気温は高めない。
ひうひうと、凍った風が吹き付ける。
「寒い……」
ふと、言葉が漏れた。
男性は、私の手を引っ張り、軒下へと連れていく。
そして、犬に「ここを掘れ、わん」と命令する。
犬――わん? は楽しそうにざかざかと掘り進んでいく。
そうしてできた、穴。
男性はそこにどこかから拾ってきた――
奪ってきた?木を組み入れる。
そうしてこれも拾ってきたのか奪ってきたのかわからない、
二つの石を打ちならす。
そうして、何十回目かで散った火花を、布きれに移して、
木の所に投げ入れた。
「これであったかくなるはずだよ」
男性は微笑む。
私はゆっくり当たりに行った。
なるほど、確かにあたたか――っ!?
急に燃え広がる炎が、私を舐めようとする。
「危ないっ!」
男性は叫んで私をかばう。
炎は男性に燃え移る――これじゃあ、共倒れになるかもしれない。
どうしよう、そう思ったところで世界は白に染まった。
4話目担当水鳴 倫紅
4話目サブタイトル担当 楓