お片付け
目の前には、一面の花畑。
黄色、紫、それからピンク、青、それからそれから……。
僕は花に詳しくないけれど、綺麗なのは分かる。
「平和なステージだなぁ!」
「もー、分かんないって。どんな罠が仕掛けてあるか……」
そうやって話しながら、花の間をかき分けていく。
「……ん?」
「これは……」
足元に何かが触れた気がして、僕は下を向いた。
それは雪の繊維でできた冷たくてふわふわな編みぐるみだった。
「メモ書きが書いてある」
メモ書きには、こう書いてあった。
「私達をおもちゃ箱に戻してね、地図はこれよ。
大丈夫、ココは春のステージ!
私達は襲わないしあったかくてふわふわよ。
あっ、包丁は使わないで。
せっかくのお花が台無しになるからね!」
そして同封してある地図。
現在地が茶色で示されており、
三体の編みぐるみと箱の位置も丁寧に書いてあった。
「どうする? 手分けして片付ける?」
地図は一応二部用意してあった。
多分その方が効率的ではあるが、離れた隙に編みぐるみや他の奴に幼女が襲われるかもしれない。
でも、幼女の判断を奪い取ることなんて僕にはできない。
手分けしたら、守れなくなるのは分かっているけれど……。
「いっしょにいたい」
彼女は何とかそれだけ言った。
そう言ってくれて良かった、これで守れる。
幼女の空いた手に、そっと手を差し出す。
彼女は僕と手を繋いでくれた。
「ぅー」
何処となく眠そう、つまらなそうな様子だ。
――いままで驚くべきことが多かったのに、いきなり刺激が減ったからだと思う。
この世界に来てからもこの世界に来る前も、彼女には事件が多すぎた。
たぶんそんなに遠くなかったんだと思う。
あっさり、編みぐるみは箱の中に納まった。
そして同じ場所に、二体目の編みぐるみ。
「どうする? この子は僕が持とうか?」
幼女は凄く眠たそうだ。うとうとして編みぐるみを落としてしまったら、その場所は地図に書かれていない。
その言葉を聞くと、幼女はイライラしてしまったようだ。
「つまんない! つまんないよ!!
包丁も使えないし、こんなのステージでも冒険でもない!」
どうすべきか、刺激を用意することは出来ない。
だけど僕は幼女がこんな平和な場所にいるだけで嬉しい。
「そっか、つまんないね。
……ごめん、でも僕はこうやって君と歩いてるだけで幸せなんだ」
ぽんぽん、と頭を撫でてみる。
うん、目線の下に大切な人がいるっていうのも良いものだ。
そうしたら、幼女の目に涙がにじんだ。
――どうしよう、いじめてしまった?
「ごめんなさい!」
幼女は涙を浮かべながらも、僕と手を繋いでくれた。
泣かしてしまったのは悔しいけれど、その手は暖かかった。
その後は順調に、編みぐるみの片づけは進んだのだった。




